走狗
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■ 第5章 走狗10

 村沢は、身体を起こして立ち上がると、工事現場に放置された、鶴橋を持っていた。
 その鶴橋の頭の部分を持って、持ち手を地面に叩き付け、金属部分を地面に落とし、柄だけを持って構える。
(今度は剣道か…節操がない…)
 俺は、呆れ顔で笑った。
 しかし、村沢は今度は軽々しく、打ち込んで来なかった。
 暫くにらみ合った後、俺は馬鹿らしく成って、構えを解いて村沢に向かって歩き出した。
 村沢は、俺の行動を理解できず、焦って打ち込んでくる。
 俺は、村沢の打ち込んでくる右手に、左手を添え、そのまま体を捌いて、右側に回り込み、右手で脇の下に貫手、脾臓に拳をめり込ませる。
 村沢は、自分の振り抜いた力を支えられず、そのまま、たたらを踏んで数歩進む。
 振り返った村沢は、自分の右手が動かない事と、身体を捻った時の激痛に驚愕する。

 俺は、村沢に向き直り、また同じように正面から歩いて行く。
 村沢は、左手で鶴橋の柄を構えるも、パニックになり振り回すだけだった。
 俺は、そんな村沢の身体に、タップリ稽古を付けてやった。
 地面に倒れ、踞った村沢は
「勘弁してくれ…。許してくれ…」
 ガチガチと震え、許しを請うた。
 俺は、村沢の目の前に、プリントアウトした凌辱写真を放り投げ
「これは、お前だな…」
 静かに問い質した。

 村沢は、目を大きく開き
「ち、違うんだ…。聞いてくれ…、これは」
 言い訳をしようとする。
 俺は、その村沢の口を、革靴で思い切り蹴り込んだ。
 村沢の前歯は、吹き飛んで、顎が外れる。
 そのまま返す足で、村沢の顎を下から蹴り上げ、顎をはめ直すと再度同じ質問をした。
 村沢は、顔を苦痛と恐怖に歪め、答える。
「お、俺だ…です。でも、聞いてくれ…。俺は命令されたんだ…。望んだ事じゃ、ぎゃひ!」
 そこまでを聞いて、俺は村沢の延髄に踵を落とした。
 村沢は、白目を剥いて、昏倒している。
 俺は、写真をポケットに収めると、昏倒した村沢をトランクに詰め、村沢のポケットから携帯を取り上げた。
 運転席に付くと、俺は携帯を操作するが、キーロックが掛かっていたので諦めてポケットに入れる。
 俺は、車を静かに発進させると、そのまま館に向けて走らせた。

 俺は、車を館の入り口に止めると、トランクを開けた。
 踞った村沢を見下ろし、そのまま村沢の喉もと目掛けて足刀を入れた。
 村沢は、白目を剥いて、手に隠し持ったスパナを転げ落とす。
(昏倒してるのか、狸寝入りなのか…。俺が本気で判断出来ないと、思ってたのか…?俺は、何をしてたんだ2年間も…)
 本気で俺は落ち込んだ、2年間こんな馬鹿に、欺かれ罵倒されて来たかと思うと、情けなさ過ぎた。
 俺は、村沢の襟首を掴んで、引きずり出すと館に運んだ。

 玄関ホールには、奴隷達が全員集まっていた。
 俺は、乙葉と忠雄に、千佳と千恵と和美を使って、調教を進めるように指示をする。
 乙葉は、俺がぶら下げている村沢を見て、不安げな表情を見せていたが、説明をする気にも成れず無視した。
 俺は、階段を操作し、地下に降りて行く。
 誰も調教部屋に、降りてくるなと念を押し、視線を2階に向けると、晃が立っていた。
 俺は、その表情を見逃さなかった。
 晃は、村沢を見詰め、侮蔑を送っていた。
 晃は、村沢と言う男を知っていたのだ。
 俺は、晃に感づかれる前に、視線を戻して地下に進んだ。

 地下の調教部屋に着くと、俺は村沢を壁際に放り投げる。
 そのままスタスタと、道具部屋に入り[或る物]を携え戻って来た。
 俺は手に持った物で、村沢を小突き、目を覚まさせる。
 村沢は、俺が手にした物を見ると、目を丸くして驚く。
 俺の手には長さ80p程の、無骨な金属の塊が握られていた。
「お前も、これが何だか、解るよな…。そう、ショックアンカーだ…」
 俺は、火薬の力で金属製の杭を打ち付け、コンクリートに様々な物を固定する為の機械を手にして、見せつける。
「俺が、これで何をするか、お前に解るか…?そう、お前でも想像出来る通りの事だ」
 そう言うと、俺は村沢を引き起こし、壁に押さえつけて、掌に杭の先端を押しつけ、体重を掛けて反発に備えると、引き金を引く。
 ボンと言う破裂音と、コンクリートを貫く破砕音、それに村沢の悲鳴が部屋に響く。
 俺は、反対の手も、掴み同じようにコンクリートに打ち付ける。
 村沢は、両手を壁に止められ、肩を揺さぶりながら暴れている。
 俺は、そのまま、3発目を肩に押し当て引き金を絞る。
 そして、両足の甲を鉄杭で打ち抜き、止める。

 村沢は、もう何処がどう痛いのかも解らない状態で、首を力無く振りながら、呻いている。
 俺は、村沢に向き直り、ニコニコ笑いながら、ポケットから村沢の携帯を出し
「キーロックの番号は?」
 問い掛けた。
 村沢は、引きつりながら、首を横に振る。
 俺は、火薬の爆発で高温に成った、部分を村沢の頬に押しつける。
 村沢の頬から煙が立ち上り、大きな悲鳴を上げ、のたうち回る。
 俺は、全く同じ質問を、村沢にする。
 村沢は、尚も拒否するが、俺が肩口に杭を当てると
「3817だ!止めてくれ…」
 怯えながら答える。
 俺は、一言[遅い]と言って、引き金を絞る。
 破裂音と村沢の悲鳴。
 ポケットから、携帯を出し数字を打ち込む、発信履歴を確認する。

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