走狗
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■ 第5章 走狗13

 リビングに着いた俺は、晃を座らせ話を始める。
「俺は、お前に聞きたい事は山のように有る…。だが、お前にも事情が有るのを理解もしている…。だから、話せる範囲で良い…。教えてくれ」
 俺が晃にそう言って口火を切ると
「良ちゃん…。どうして、そんな風に話してくれるの…。私…一杯隠し事してたのに…」
 晃が俺に向かって、問い掛ける。
「人には、それぞれ事情が有る…。俺は、それを越えて、全てを話せとは言わない…。知らない方が、幸せなんて、この世には、星の数ほど有る…」
 俺が笑いながら晃に答えると、晃はウルウルと瞳を濡らせ始める。
「良ちゃんの馬鹿…。そんな事言われたら…、私…」
 晃が結論を言う前に
「俺は、お前が何を隠していようと、俺の判断を信じる…。それで、俺が窮地に立ったら、それは俺のせいだ…。俺の判断では、お前は良い奴だ…」
 言葉を被せる。
 晃は、俺の言葉に、崩れ落ちて泣いている。
(ここは本当なら、優しく肩を抱いてやるんだがな…。今の感じじゃ。…罠だな…)
 俺は、晃の挙動を、逐一分析していた。

 すると、晃はガバリと身体を起こし
「ちょっと良ちゃん…。ここは擦り寄って、肩ぐらい抱いてよ!もう…デリカシーの欠片もないんだから…」
 俺の読み通り、晃は俺に対して駆け引きを行っていた。
「それぐらい見破れなくて、どうする?まあ、1週間程だが、お前と過ごして、かなり把握したよ…。お前の事は…」
 俺は、笑いながら、晃に言った。
 晃もクスクスと笑い出し、一頻り笑い合った後、姿勢を正して話を始める。
「今は、彼女達の行き先と処遇を話すわね…。それが、現状で話せる事よ」
 晃は、俺に真剣な眼差しを向け、語り出した。
「先ず。ランク外の素材に成ったら、通称[病院]と言う所に送られる。ここでは、いろんな技術が研究されているの…。洗脳や、薬品や、器具何かのね…。そこに送られて、モルモットとして扱われ、死んだら内蔵を売り払われるの…」
 晃は、さらりと、とんでも無い事を言った。
「次にランクが付けられた素材は、通称[学校]って言う所に送られる。ここでは、洗脳され、性技をたたき込まれ、奴隷に加工されるの…」
 ここまで話して、晃は一つ溜め息を付く。
「問題は、その後…。ランクCやBで取引された子は、消耗品扱いされるの…。平均寿命は2年ぐらい…、その間に大体、人間の形は、無く成ってるわ…」
 俺は、晃の言葉で、自分がどれだけ状況を理解して居ないかを知った。
「ランクがAの子は、[ショップ]と呼ばれる所で飼われて、構成員の福利厚生に使われる…。いわゆる、慰安奴隷ね…。ここの子達は、5〜6年寿命があるし、殆どが原型を留める。それに、構成員に払い下げされる事も有って、寿命を全うする事もあるの。扱い的には雲泥の差よ」
 晃は、そう言って、膝の上に頬杖を付く。
「ランクSは、オークションに掛けられて、世界中の幹部に売り払われるの。これはハッキリ言って飼われた先で、どんな風に扱われるかは、解らない…。でも、高い買い物に成るから、大体は壊さないわ」
 晃の説明に、俺は言葉を失っていた。
 と言うか、ハッキリ言って呆れ果てていた。
「ランクSSに成ると、大幹部専用のオークションで、取引されるわ…。これは、下手な幹部達より力を持つ事があるし、扱いも別格よ。ただし、引取先によっては、これも何とも言えないの…」
 晃の説明は、そこで終わった。

 余りの事に惚けている訳にも行かず、俺は現状を把握する為に
「じゃぁ、今居る中で査定をされたらどうなる…」
 晃に質問をする。
「今の状態だと、乙葉、優葉、夏恵は論外…。恐らく査定外にされるわ…。和美、千恵、美登里、千佳は、私が手を入れれば、SかAね…。千春と秋美は、大丈夫。今のままでもAは取れるから、私が手を入れてS確定よ…。問題は、志緒理と響子と絵美ね…。年がネックなのよね…」
 晃が奴隷達を、冷静に分析する。
「志緒理は、大丈夫だと思うけど…。響子と絵美はどう弄っても…、無理ね…。せめてBに成るようにするわ…」
 晃は、額を指で突きながら、自分の中の技術を総動員する、シミュレーションを立てている。
 俺は、さっきから出て来ない、男の名前が気になって聞いた。
「良ちゃん…。男はね…、基本的にランク外なの…。良い所行って、Bね…。だから…、無理…。諦めて…」
 晃の身も蓋もない意見に、俺は口を閉ざした。

 俺達は、全ての可能性を話し合って、結論を出した。
 そして、それを全ての奴隷達に話す。
 晃の説明が終わると、沈鬱な表情が全員に流れ出す。
 その中で、真っ先に口を開いたのは、正輔だった
「と、言う事は…、俺は死ぬんだね…。はぁーっ、まぁ息子のやらかした事だから、しゃーねーちゃー、しゃーねーが…。千佳は、何とかして下さい。死ぬには早すぎるし。まぁ、妹さんと同い年なんだが、考えてくれませんか…」
 すると、絵美が進み出て
「私も同じ考えです…。私達夫婦が、死ぬのは仕方ないにしても、千佳だけは、何とかして下さい…」
 必死に頭を下げる。
 俺は、現状では、頷くしかなかった。

 続いて忠雄が口を開く
「ご主人様…。あっしは、いつ死んでも構いません…。だけど、親分の死に際の言葉だけは、守りたいんです…。だから、姉さんとお嬢達は、許して貰えやせんか…」
 忠雄は、必死なのだろうか、俺に懇願する言葉が、渡世言葉に成って居る。
 俺が頭を抱えると、志緒理が一歩前に出て
「駄目よ…、浅田さん。そんな事を言ってしまっては…。ご主人様に負担を掛けてしまいます…。私は、何処に居ても、どんな目に有っても…、ご主人様の奴隷…。その気持ちが有るから、どこででも、過ごして行けます。他の方はどうかしら?」
 志緒理のこの言葉が、他の奴隷達の心に火を付けた。
 こぞって、自分を素体にして欲しいと、言い出したのだ。
 俺は、奴隷達に俺の考える振り分けを、話しだした。

 俺は、全員に向かって、状況と考えていた事を話す。
「正輔…。俺は、お前の言葉を聞いてやりたいが。以前に奴隷を3体作るように、言われている…。これは、晃の意見を聞いて判断したんだが。恐らくAかSのランクが無いと、奴隷として認めない…。それどころか、他の奴隷のランクを下げて、全員が素体にされる。だから、千佳には組織に行って貰う…。それと、美登里と志緒理もだ…。後の者は、俺の管理下に入るのか、組織の管理下に入るかを決めろ…」
 俺の意見に全員が答えを出す。
「私達夫婦と、響子は、多分一番下のランク外でしょうが…。組織に引き取られて行きます…。私には、安曇野さんのような事は、出来ないもんで…。[落とし前]って奴ですか…」
 正輔は、はにかんだように笑い、頭を下げ、その両横で絵美と響子が頭を下げる。
「ご主人様。私にランクが付いたら、組織に入って、誰かを抜けさせる訳には、行かないんでしょうか…」
 啓介が一歩前に進み、頭を下げながら質問する。
「解らない…。が、それについても、検討しよう…」
 俺は、啓介に答えた。
 啓介は、頭を下げて立ち上がると、後ろに下がった。
 俺はその後、全員に館を自由に動く事を許可した。
 勿論SEXも、全ての自由を含めての許可だ。

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