走狗
MIN:作

■ 第5章 走狗14

 俺は、奴隷達に解散を告げると、自室に入りパソコンの電源を入れる。
 インターネットに繋いで、検索サイトに繋げる。
 新藤栄吾の名前を打ち込み、検索する。
 20件程が、HITした。
 その内半分は、同名の他人だった。
 俺は、或る一つの、サイトが気になり、クリックする。
 何処かのホテルチェーンが主催する、検証論文の結果発表だ。
 そこに佳作で入選し、論文と共に顔写真が載っていた。

 俺は、その顔をジッと見詰め考える。
(俺は、全員への復讐を誓った…。だが、新藤家に到達した所で終了を告げられた…。これは、新藤が組織の一員で有る事を、示唆している。と、すると娘の香織も組織の一員か…。こいつの年も見た目では、判断できないみたいだから…。そう考えるのが、妥当だろ…)
 そこ迄考えた時、俺は或る事に気が付く
(待て…!終わったのか…?本当に…。今回、由木が現れたのは、只の情報開示…。組織の一部に触れた事で、隠す必要が無くなっただけ…。そうだ…。由木は、一言も終了を宣言していない…。まだ、復讐は続いている…。そう考えて、間違いないな…)
 俺は、状況を判断分析して、答えを落ち着けた。
 しかし、そうなると俺は、更に頭を抱える局面に、自分が居る事を理解する。
 ハッキリ言って、今の俺は途方に暮れている。
 何故なら、次のターゲットが、現職の警視監だからだ。

 ヤクザや、一般人レベルを相手にするのとは、訳が違う。
 警備のシステムも、それを守る者も、格段に違うのだ。
 しかも、相手は俺に監視を付けるぐらい、俺の事を意識している。
 これは、どう考えても、不可能に近い。
 そして、更に問題は、何処かに消えている。
 首謀者[佐織]の行方を聞き出さなくてはいけ無い。
 これは、拉致をして尋問しなければ、達成できない。
(現職の警視監を拉致して、尋問した後殺す…。これをしたら…間違いなく、国際指名手配だな…。まぁ、それは構わない…しかし方法がな…)
 基本的に、警察の上級職員の素性は、秘密に成っている。
 当然、家族の所在なんかも、同様だ。
 それを知るには、それなりの資格か、階級が要る。
 俺には今、どちらも無いし、その条件を満たす、知り合いも居ない。

 俺は、情報を整理して、大きく溜息を一つ吐いた。
 そこに、優葉がトレーに飲み物を載せて、運んできた。
「失礼しま〜す。御主人様、お飲み物をお持ち致しました〜」
 パソコンのモニターから、目を離さない俺の邪魔に成らないように、ソッとテーブルの端に、飲み物を置く。
「あ〜…。この人、警察の方だったんですね〜…」
 その時、優葉がモニターに映る、新藤の顔を見て呟いた。
 俺は思わず、優葉の顔を凝視する。

 優葉は、俺のそんな行動に驚き
「きゃっ。御主人様申し訳ございません。お考え中の所、お邪魔をしてしまいました」
 小さな悲鳴を上げて、平伏する。
 俺は、ワナワナと震える手で、優葉の腕を掴み
「どうして…何でこいつを知ってる…?」
 真正面から優葉を見詰める。
「は、はい…。この方は、私達が勤めていたSMクラブのオーナーのお知り合いで、良くホームパーティーで、お顔を見かけますから…」
 優葉は、俺の勢いに圧倒されて、恐る恐る話す。
(こんな所に…こんな所に手掛かりが有った…)
 俺は、神に感謝したい気持ちだった。
 俺は、そのまま、ダイレクトに優葉に聞いた。
「優葉!こいつの住所を調べる事が、出来るか?店長や店の人に聞かずにだ!」
 優葉は、コクンと頷くと、恐る恐る口を開き、俺に驚くべき事実を告げた。
「じ、じゃぁ…。お姉ちゃんに聞いた方が、早いと思います…。この方、お姉ちゃんがお気に入りだったから、2度程、家に行ってる筈です」
 この言葉で、由木に言伝を依頼してまで、乙葉達の調教に口を出してきた人物が解った。
 乙葉を狙ってたのは、新藤だった。
(それで、あんなに早い対応で、由木が現れたのか…)
 謎だった物の輪が、少しずつ縮まって来た。

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