走狗
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■ 第5章 走狗17

 その後、俺は優葉を指で4回イカせ、乙葉は10回絶頂を迎える。
 そして約束通り、乙葉を仲間に入れ、優葉の身体の反応を隅々まで調べ上げる。
(こいつも、乙葉と同じように、洗脳するかな…。まぁ…普通に使ってても、成るだろうけど…)
 俺は、いつの間にか、サディストの心理状態に戻っていた。
 これは、もう俺の心の一部に成ってしまったのだろう、それはそれで俺は受け入れた。
 優葉と乙葉は、俺の横でグッタリと横たわり、俺はベッドの天井を見詰め、今日の新藤家での出来事を思い出す。
(しかし、あれは、本当の事なんだろうか…)
 俺は、新藤栄吾に教えられた事について、考える。

 新藤の家は、成城の静かな住宅街に有った。
 その家の規模は、警察官が警察官の職務を全うするだけでは、とても建てられるレベルでは無い事が、一目で判断できた。
 俺は、家の周囲を見渡し、配置と外観からのセキュリティーを調べる。
 しかし、そこには驚く程セキュリティーが、付いていない。
(どう言う事だ…?館のセキュリティーと自宅に対してのセキュリティーに、差が有り過ぎる…)
 俺は、訝しんで居ると、後方に気配を感じた。
 一連の動作の中に警戒を含ませ、自然に振り返る。
 俺の目の前には、黒い人型の闇が、立っているようだった。

 その闇は、俺に対して、頭を一つ下げると
「叶様ですね…こちらへお越し下さい…」
 静かな、抑揚のない声で、俺を誘導する。
(こいつが…、セキュリティーか…。物騒な雰囲気だな…。見つかったからには、従うしか、無さそうだな…。その前に…)
 俺は、腹を決め、従うように動きながら、間合いに入って行く。
「叶様…。ここでは…」
 闇は、俺が間合いに入る寸前、動きを制した。
 こいつも、由木並みの達人だ。
 一体この組織には、何人こんな化け物が居るんだ。
 俺は、身体の緊張を有る程度解き、闇に向かって頷いた。
 闇は、頷くと踵を返し、新藤家の裏口に俺を案内し、中に招き入れた。

 リビングに通され、30分程経った時、入り口に気配が現れ、新藤が入って来た。
 俺の姿を見ると、状況を判断したのか直ぐに、後ろを振り返り
「客が来た…。この後の予定は30分繰り上げろ…」
 入り口に向かって、声を掛ける。
 そして、俺の正面に座ると、俺の顔を見詰め、ニヤリと笑う。
「良くここが解ったな…。村沢が消えたのも、君の仕業かな?まぁ、どうでも良い…。君がここに現れた時点で、勝負は私の勝ちだ…」
 そう言って闇に向かい、顎をしゃくり
「霧崎…。処分しろ」
 短く命ずる。
 しかし、霧崎と呼ばれた男は、一向に動かず
「新藤様…。あなたの、組織における全ての権利は、只今を持って消失しました…」
 新藤に対して、静かに抑揚のない声で告げる。

 新藤は、驚いた顔を霧崎に向け、震える口を開く
「どう言う事だ…。ロストだと…?まさか…、このゲームをオールにしたのか…あいつは…」
 新藤が呟くと、霧崎が黙って頷く。
 途端に、新藤の身体から、力が抜け項垂れた。
 俺には、何が何だか、皆目見当が付かない。
 項垂れていた、新藤は小さく笑い出した。
 その笑いは、徐々に大きく成り、最後には声を張り上げ笑った。

 その笑いをピタリと止め、俺の顔を真正面から見詰める。
「叶君…。全てを知りたいかね?」
 新藤は、俺に真顔で問い掛けてくる。
 俺は、その言葉に、大きく頷いた。
「霧崎…。最後の譲渡権をこの男に使う…。構わないな…?」
 新藤は、俺の目を見詰め、霧崎に伝える。
「承りました…」
 霧崎が承諾の返事を呟いた。
 そして、今回の事件についての真相を、新藤が語り始める。
 それは、俺の予想を遙かに超えていた、俺はその話を聞いて愕然とした。

 事の始まりは、村沢の話した事件で、俺のアメリカ行きも新藤の工作だった。
 新藤は、俺を国外で殉職させるためにNY市警や、FBIに俺を押し込んだのだ。
 そして、涼子と香織は、俺の関係者として、生け贄にされ殺された。
 2年間の間が開いたのは、組織の指示で、全てのゲームの中止が命じられ、この間その禁が解かれたらしい。
 そして禁が解かれると同時に、新藤の相手方のターンに変わって、由木が現れて復讐劇が始まり、今こうして俺は、新藤にチェックメイトを掛けたらしい。
 その結果、新藤は破れ、相手が新藤の持つ全ての権利を勝ち取った。

 これが、この事件のあらましに成る。
「すると、何か…?お前達は、ゲームのために、涼子と香織を殺し。俺の人生を狂わせ、他の者まで巻き込んだのか…」
 俺の言葉に、新藤は薄く笑い
「そうだ…。他人の人生を掛けて遊ぶゲーム程、楽しい物は無い…。私達の力で、崩れ落ちて行く様は、何物にも代え難い快楽だ…」
 俺に言い切った。
「もう良い…。お前の娘は、どこだ…?俺は、そいつを殺してこの件にカタをつける…」
 俺は立ち上がり、新藤を睨み付けながら聞いた。
「私に娘など…家族など居ない…。妻と呼んでいたのは、単なる奴隷で、それも、この間飽きたんで、廃棄処分にしたし、佐織は組織の構成員だ…。私の専属のな…」
 新藤は、薄笑いを浮かべ、俺に自分の家族は偽物だと話す。
 俺は、この狂人共が、無性に頭に来だした。

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