走狗
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■ 第5章 走狗19

 そうして約束の7日間は、あっと言う間に過ぎていった。
 今日は、朝から由木が来る予定に成っている。
 リビングで待つ俺達は、皆一様に緊張に包まれている。
 晃が、約束の時間の少し前に、時計を見詰め
「まだかしら…」
 小声で呟いた時。
 リビングの扉が静かに開き、音もなく由木が現れた。
「お早うございます、叶様…。本日は、約束の日と成りました。査定を行っても宜しゅう御座いましょうか…」
 由木が丁寧にお辞儀をし、リビングに入ってくる。
 俺は、由木に向かって、掠れた声で呟いた。
「ああ、頼む…。奴隷の引き渡しは、3人だったな…」
 俺の言葉に、由木がまたお辞儀をし
「左様で御座います…。では、どなたから査定いたしましょう…」
 そう言って、一歩前に踏み出し、奴隷達を見渡す。
 こうして査定は、進み次々とランクを決められて行った。

 決まったランクは、正一、正二、泰介の3人は、ランク外の素体。
 正輔、絵美、響子がランクCの奴隷と査定される。
 ここ迄で、一旦査定を中止して、由木が俺に話して掛けてくる。
「叶様…。このまま査定を、続けて宜しいでしょうか…?ランクが確定しますと、毎年組織に納める、会費に大きく差が生じますが…。如何致しましょう…?」
 俺は、由木の言葉は、寝耳に水だった。
「か、会費?何だそれは…。そんな事聞いてないぞ…」
 俺がそう言うと
「はい、恐らく初耳だと思います。美加園様もフリーのテクニカルVIPですので、ご存じ無いはずです…。説明いたしますと、マテリアル内の序列は、ポイント制に成っております。そして、そのポイントは、奴隷の質と数で、手に入れる事が可能なのです」
 由木は、そう言って、俺を見詰めながら、奴隷達を掌で示す。
「例えば、Sランクの奴隷をお作りに成られた時点で40P。お売りになれば更に40Pと成ります。また、Sランクをお売りに成らないで保持すると、年間400万円の会費が発生します。そしてその会費に対して、4Pが与えられます…」
 由木の説明に、俺は納得が行った。
「つまり…、良い奴隷を作れば、多くポイントが貯まるが、それを維持して行くためには、金が必要だという事だな?そして、ランクの指定を受けなければ、いつまで経っても、序列は上がらない…。そう言う事だな…」
 俺の言葉に、由木は頷き
「誠に持ってその通りで御座います…。後は、組織内の地位や権力に応じたポイントが御座いまして、それもポイントアップの手段に成っております…」
 俺の質問に、補足説明まで加えた。
「ふっ…、そうか…。その地位や権力を遣り取りするのが、ゲームという訳か…」
 俺の言葉に、由木は補足する。
「奴隷も、取引の材料の一つで御座います…」
 俺は、この組織の、たちの悪さに本気で気分が悪く成って来た。

 俺は、晃に相談をすると
「良ちゃん…。取り敢えず、ポイントは絶対に必要よ…。それが無いと、確かスタッフも使えない筈だから…」
 晃は、俺に耳打ちをした。
 俺が悩んで居ると、志緒理と美登里が前に進み出し
「ご主人様…。私達2人は、覚悟が出来ております…。どうぞ、お手放し下さい…」
 深々と頭を下げる。
 俺は、2人の査定と引き取りを依頼した。
 査定の結果、美登里と志緒理は、2人ともAクラスだった。
 俺の前から5人の奴隷と3人の素体が消えて、その成果が6250万円と62Pの数字だった。

 俺は、行き場のない怒りが込み上げてきたが、自分でどうしようもなかった。
 すると、一度消えた由木が、再び現れて俺に頭を下げると
「叶様。今日は、わたくしどもの主から、贈り物をお持ちいたしました…。どうぞ、玄関ホールに置いておきますので、必ず地下で開封し、奴隷の方達は見ないようにして下さいませ…。必ずお守り下さい…必ずです…」
 由木は、俺に念入りに、約束を押しつけ、リビングを出て行った。
 俺は、消えていった、由木をジッと見詰める。
(どう言う意味だ…?一体何が有るんだ…)
 俺は、訝しみながら、ユックリと玄関に向かう。

 玄関ホールには、巨大な木の箱が置かれていた。
 訝しみながら、高さ1.7m幅0.9m奥行き0.6mの箱に近付くと、箱には[マテリアル事業窓口]と書かれた紙と小さな付箋紙、それに領収書が貼って有る。
 全てを剥ぎ取ると、俺はそれに目を通す。
 領収書には、[戸籍偽造×8、−40P]と書かれ、[マテリアル事業窓口]には、電話番号が一つ、付箋紙には[開封後、日時を知らせろ]と走り書きがしてあった。
 俺は、全く意味が解らず、更に首を捻りながら、言われた通り、木箱を啓介と地下に運び、奴隷達を1階に上げた。
 地下では、俺と晃で木箱を開封した。
 そして、中から出て来たモノを見て、俺は驚いた。

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