走狗
MIN:作

■ 第6章 転章2

 18:55俺は乙葉と優葉を従え、朝田家のマンションの地下駐車場に入る。
 エレベーターで認証し、直で朝田のマンションフロアーに着くと、玄関のインターホンを押す。
 中から、千春の声が響き、扉が開くと玄関の土間に夏恵と秋美、それと啓介が、全裸に首輪で平伏し、リードを捧げ持っている。
 扉を開けた千春も、全裸に首輪で、扉を開けた後その場に平伏し、同じようにリードを捧げる。
 玄関の上がりがまちには、忠雄がスーツ姿、千佳がボンテージで平伏し
「ご主人様いらっしゃいませ…。お越しをお待ちしておりました」
 床に頭をすりつけて、挨拶する。
「おう…忠雄。1ヶ月ぶりか…?立ち上がって良いぞ…組の方は順調か…」
 俺の言葉に、忠雄は立ち上がると
「はい…。事の他順調に進んでおります…。周りの組を吸収した後処理も、組織の人間が、上手くまとめてくれました…」
「そうか…。だが、あいつらをあまり信用するな…。重要な事は、お前がやるんだ…あいつらはあくまで組織の人間だ…」
 俺は、忠雄に釘を刺しておく。
 忠雄もそこら辺は、理解しているようだった。

 俺が千春と千佳、乙葉が秋美と啓介、優葉が夏恵のリードを持ち、リビングに向かう。
 朝田家の女達も、今では従順な俺のオモチャで有る事を、十分に理解し従っている。
 俺が来ると言った日には、朝から股間を濡らして待っているそうだ。
 リビングに着くと、ソファーには俺と忠雄だけが座り、朝田家の女と啓介は床に正座し、乙葉と優葉と千佳は俺の後ろに立っている。
「夏恵…。お前まだ消してないのか…」
 夏恵は、館で描いた健太郎の入れ墨を、まだ消さずに体に残していた。
「はい…。旦那様にお願いして、まだ消さずにいます…。言ってみればこれは、健ちゃんの形見みたいな物ですから…」
 夏恵が俺に告げると
「こいつ、強情で…。なかなか首を縦に振らないんで、困ってます」
 忠雄が頭を掻きながら、愚痴をこぼす。
 忠雄は、安曇野3姉妹には、[主人]とは呼ばせず[旦那]と呼ばせている。
 主人はただ一人、俺だけという配慮からだった。
 そのため、奴隷達への接触も甘さが残る。
 だが、その甘さが3人の奴隷達に上手く働き、忠雄の奪い合いなどの軋轢を生まず、上手い具合に回っていた。

 07:10玄関のチャイムが鳴り、忠雄が立ち上がる。
 玄関がにぎやかになり、リビングに晃が現れる。
「良ちゃ〜ん!お久しぶり〜。会いたかったわ〜」
 晃は、両手を広げ、俺の胸に飛び込んでくるが、目の前に俺の足が現れ、動きを止める。
「もう!相も変わらずケチね…。抱きつくぐらい良いじゃない…」
 晃がブツブツと呟くと、晃の後ろから千恵と和美が現れた。
 その姿は、俺の知る千恵と和美では無く成っていた。
 乙葉や優葉並みのプロポーションに、元の顔をベースに微妙にバランスを整えた顔は、驚く程端正に変わっている。
 そして、物腰や仕草などが洗練され、大人の色気を醸し出していた。
「ご主人様…。お久しぶりでございます…この日を心の底から、待ち望んでおりました…」
「ご主人様…。のお声…お姿…それらが無い生活は、とても辛かったです…」
 千恵と和美が床に正座し、涙を浮かべながら、三つ指をついて頭を下げ挨拶をする。

 晃が二人を指さしながら、自慢げに話し出す。
「千恵ちゃんはね…、今や経済学のエキスパート。和美ちゃんは、法律関係。この半年間、専門の教師を付けて、みっちり詰め込んだわ。この2人はこれから、貴方の役に立つわよ…」
 そう言いながら俺の横にちゃっかり座り、しなだれ掛かって来た。
 俺は、晃の身体を躱して立ち上がり、二人の元に行って頭をなでて、口吻をし労をねぎらう。
 千恵と和美は泣きながら、寂しさを訴えて俺にすがりついた。
 俺が千恵と和美に首輪を付けてやると、二人はいそいそと全裸になる。
 これで全員が揃った。
 俺に従う奴隷達、組織での戦いの主戦力だ。
 俺達は、その夜、それぞれの成果を全身で語り合った。
 淫らな夜は、刻々と更けていった。

◆◆◆◆◆

 千恵と和美が帰って来た、数日後。
 仕事を終えた帰宅途中、俺は正面の人混みから感じる気配に、ある種の懐かしさを感じていた。
 俺は、自分の顔に笑みを浮かべると、その歩みをいつもの帰宅経路では無く、気配のする方向に向ける。
 気配は俺を誘導し、路地を曲がり繁華な通りを離れ、静かな住宅街に導く。
 すると目の前に、黒塗りのセダンが止まり、どこからともなく由木が現れ、後部座席の扉を開いた。
「お久しぶりです叶様。本日は、わたくしどもの主が、一度お会いしたいと仰られるモノで、お迎えに上がった次第で御座います」
 由木は、例のように丁寧な物腰と慇懃な喋り方で、俺を車に招き入れようとする。
 俺は、フッと笑うとそのまま、車に乗り込んでいった。
 反対の扉を開けて、由木が身体を滑り込ませてくると、車は静かに走り出した。
 俺達は、無言で車の進に任せている。
 運転席と後部座席の間に、マスクの貼ったボードが付いている上、横も後ろも濃いマスクに覆われ、全く見えないからだ。
 すると、由木が俺の横で、ぼそりと呟く
「今日は、何が有っても、我慢をして下さいませ」
 俺は、由木の呟きを耳に入れ、確かめようとした時、車が止まった。

 俺は、何処かのビルの地下駐車場から、エレベーターに乗り上階を目指す。
 エレベーターの表示が25階を示した時、扉が開いた。
 扉が開くとそこは、直ぐにリビングのような、大きなスペースが拡がっていた。
 その部屋は、灯りを付けて居らず、窓の外から差し込む光と、ソファーの前のテーブルにスタンドが点いているだけだった。
 そして、薄暗いそのリビングでは、一人の老人がホームバーでブランデーのボトルを傾け、二つのグラスに注いでいる。
「お、おお。来たか、来たか叶君。待ってたんだよ…。一度話をしてみたかったんだ。どうぞ、こっちに来て座ってくれ」
 その老人は、人なつっこい笑顔を浮かべ、俺にソファーを勧める。
 俺は、その老人を知っていた、写真や何かでは無く、これで確か3度目の対面だった。
「いやいや、私は君に感謝をして居るんだ…。本当にね…、君のお陰で、どれだけ助かったか…」
 涼子の勤めていた、人権派の大物弁護士・徳田義継が、俺に酒を勧めながら破顔する。

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