新・売られた少女
横尾茂明:作

■ 性戯の章2

バスタオルで体を拭き、持ってきた下着を着けて全身を鏡に映す……。

(うわー素敵……私じゃないみたい!)
通販雑誌の下着頁に載ってる白人の美しい女性と今の自分が重なって見えた……。

(私って……こんなに素敵だったんだ……)

少女は少し自信を取り戻した……バスルームを出たときにはもう先ほどの陰鬱な想いは単純にも払拭されていた。

部屋に用意されていた新しい学生服は私立のものか可愛いブレザーの服だった……
(わー可愛いお洋服)

少女は急いで着て鏡に写し……自分にピッタリと合ったことを喜んだ。

階下に降りると目つきの悪い男が二人……椅子に座って新聞を読んでいる、二人は少女を見つけると立ち上がり精一杯の愛想顔で、「おはよう御座います」と頭を下げる……。

少女も慌てておはよう御座いますと応え、好奇の眼差しで少女を観察する彼らの横を怯えながらすり抜けキッチンに向かった。

好子が「さー早く食べないと学校に遅れますよ」と言いパンをオープンレンジに入れる……食卓にはサラダをはじめとするホテルの朝食メニュ以上のものが並んでいた……。

(うわー……こんな御馳走……見たことないヨー)

可愛いタオルに包まれた白い二つのポットからミルクと紅茶が同時にティーカップに注がれていく……
「お嬢様はコーヒーの方がよろしかったかしら?」
好子は先ほどのことは何もなかったような顔でにこやかに聞く……。

少女はドギマギしながら注がれたミルクティーを飲み、(あー美味しい)と感じ、「この方が好きです」と答える、正直缶コーヒーは飲んだことが有ったがミルクティーは初めての経験だった。

ベーコンのソテー具合はいいかとかパンはベーグルの方がよろしかったかしらと聞かれたが意味が分からず曖昧に答えて笑顔を作った。



車窓からは秋の風景が流れていく……寡黙な男がバックミラー越しに時折少女の顔を覗う、いま乗っている車種は分からないけど本皮の柔らかなシートといい外界の音が殆ど社内では感じられない事を考えるとすごい高級車なんだと感じた。
車に乗る前……男が、「今日からお嬢様の運転手を務めさせて頂きます浅田と申します」と自己紹介があった……、子供の学校の送り迎えに運転手付きの車だなんて……園長さんからすごいお金持ちとは聞いていたが……これほどのものとは思わなかった。

学校に着いたとき浅田は少女に携帯電話を渡し、「お嬢さんの携帯を用意しておきました、これからは学校が終わる1時間前にお電話を下さい、お迎えに上がりますから」と言い少女の鞄を持ち、先を歩いて校舎に入り理事長室に案内した、理事長室の前で暫く待つように言いわれ浅田だけが部屋に入る。

少女は渡された携帯を思い出し、取り出して見つめる、前から欲しくて欲しくてたまらなかった携帯電話……こんなに簡単に手に入るなんて……学園の時だったら飛び上がるほど嬉しかったはずなのに今は何の感慨も湧かなかった。



校門を出たところで浅田が待っていた、「意外と早かったんですね」といい車のドアをあけてくれた、時計はまだ3時を少し過ぎたところだった。

「お嬢様、どこか寄り道が御座いましたら案内いたしますがどうされます?」と聞いてきた。

少女は思案したが行きたいところは思いつかなかった、ただ学園に寄ってみたいと一瞬思ったが……園長に会うことが疎ましく感じられ、「いえ……お家に帰って下さい」と答え目を瞑った。



大きすぎる部屋……調度品は高級な物ばかりで妙に落ち着かない、お父さんは朝早くから横浜に行ったと好子から聞いた……多分今夜は遅くなりますよと言ってたが……少女は武雄の顔を思い出していた、昨夜の痴態……優しく胸に抱かれたとき涙が溢れたこと……あんな酷いことされたのに……今は逢いたいと思う……そんな矛盾する自分の心が理解出来ずイラだった。

10時頃風呂に入いった、部屋で全裸の上にバスローブを羽織って涼んでいたとき内線が鳴り、「旦那様のお帰りですよ」と好子の声、「今夜はもう帰ります、また明日も6時に来ますから」と言って電話が切れた。

少女の胸にポッと灯がともる……(お父さんだ……)

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