新・売られた少女
横尾茂明:作

■ 陵辱の章1

少女は机に頬杖をつき昨夜の妄想に恥ずかしくも性器を濡らしていた。

昨夜は何度いったのか……お風呂で、舌で、そして玩具とお父さんの恥ずかしいもので……。

数日前には何も知らなかった少女……今は全て知ってしまった。男性との気の遠くなるほどの交合性感の歓び……恥ずかしい粘膜をえぐられる快感に悦涙することさえも……。

一週間前に生理は終わっていた……当分は妊娠の危険は無いと思う少女であったが……数えられない程の射精を子宮に受け、狂わんばかりの絶頂を幾度も味わった……こんな事……神様が許すはずがない……きっと罰が降るはず。

(でも……お父さんに避妊して……なんて絶対に言えないナ)


教室の扉が慌ただしく開いて教頭が飛び込んで来た……。

「柴田聡美さん!……あっ……柴田さん、ちょっと職員室まで来て下さい」

聡美は何事が起こったのか判らぬまま……ポカンとする女教師の前をすり抜け教頭の後に従う。

「柴田さん……今……運転手の浅田さんから電話が有りましてね、お父さんが怪我をされたらしく横浜の病院にお昼に入院されたとのことです……すぐ行ってあげなさい!」

(お父さんが怪我……)

少女は携帯電話を取り出し浅田に電話した。

「あっ……浅田さん、お父さんが怪我をしたって本当!」

「いま……お嬢さんをお迎えに向かっているところです、詳しい事は分かりませんが……重傷のようです、あと5分ぐらいで着きますから校門のところで待ってて下さい」

少女の胸は不安に揺れた……。

(お父さんが……重傷……)


病院の入り口には警察官が数人おり……報道の人達なのかカメラを抱えた人達で病院の玄関はごった返していた……。

少女と浅田は人混みをすり抜けるようにして病室に急いだ……。

病室の前には警官が二人おり……入る前に職務質問され、「娘です!」と言ってようやく中に入れた。

武雄はビニールの様な物に囲われたベットで酸素吸入をしながら寝ていた……看護婦が、いましがた手術が終わったが……手が付けられず危険な状態です、と言って部屋を出て行った。

少女はベットの横に設けられた椅子に呆然と座り……あまりにも突然な事件に頭が整理出来ずただオロオロしながら武雄を見つめた。

10分ほどして看護婦と白衣の先生が入ってきて怪我の状態を話し出した。

「お父さんは非常に危険な状態です……弾丸は肋骨から肝臓に入り……肝臓の殆どを破壊して脊髄で止まっています」
「非常に危険な部位のため摘出が出来ない状態です、まず……助からないしょう……あと数時間で息を引き取られると診断しますが……」

少女は呆然とした……この四日間の嵐の様な出来事はなに……人生観さえ変えてしまった男の淫らすぎる行為……その幕引きがこんなにも唐突に訪れるなんて……。

先生と看護婦は沈んだ面持ち少女を見……。
「これからは私たちで出来るだけのことをしてみます……少しのあいだ廊下に出て下さい」

少女は立ち上がって武雄の寝顔を見……部屋を出て行く。

廊下には浅田が立って待っていた。
「お嬢様……気をしっかり持って下さい!」

涙は出なかった、その時少女には不思議と武雄を愛おしいという感情は湧かなかった……ただこの先どうなってしまうの?……その不安の方が大きかった。



武雄の盛大な葬儀が終わり……火葬場からの帰路、浅田が不安な事を口にした……。

「武雄の兄貴と跡目争いしていた室田の兄貴が組の跡をとることが決まりました……だからあの家を出なければなりません……」

「どうして?……あのお家はお父さんのお家じゃなかったの?」

「はい……残念ながら組が所有する不動産なんです……」

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