新・売られた少女
横尾茂明:作

■ 陵辱の章2

少女は疲れ切ってベットに倒れ込むように寝そべった、大きすぎる部屋……僅か一週間のお城だった……。

(私……どうなるの……もう学園にも帰れないし……)

少女はこの先を考えると目の前が暗くなった……武雄自身の預金通帳には百万も無かったのだ……。

浅田も武雄が相当貯め込んでいると検討をつけていたが……当座預金に残されていた莫大な金は全て組のものであったのを知った……。

浅田は絶句した……
(こんなはずはない! 兄貴の野郎……何処に隠したのか……)

次の朝……少女は家を後にした。お手伝いの好子が慇懃に、「短いお世話ですみませんでした……どうぞお元気で」と言い頭を下げ、ニヤっと笑ったのが頭を離れない……。

浅田が少女の荷物を持って後に続く……途中タクシーを拾い浅田が借りているマンションに向かった。

昨夜……浅田が、「当面は私のマンションに住み、これからの身の振り方を考えましょう」と言ってくれた。

その時は……何て優しい人なんだろうと思った少女であったが…………。


マンションは広尾の閑静な住宅街に有った。
ヤクザの運転手風情が住めるマンションではない……少女は瀟洒な調度品が並ぶリビングに通されたとき訝しんで浅田に聞いてみた。

「こんな素敵なマンション……高いんでしょ?」

「はい……兄貴から毎月戴いてたお金じゃとても足りませんや……実は株取引をやってましてね、それでなんとか凌いでいるんですよ」

「へー……株ってそんなに儲かるものなのですか……」

「お嬢さん、そんなことより私と一緒に明日警察に行って下さい」
「あの事件で兄貴の車と身の回りの品が警察に証拠品として押さえられてましてね……」
「親族でないと貰い下げが出来ないんですわ」

「分かりました……明日一緒に出かけましょう」

「親子の証に戸籍謄本が要りますから区役所に寄ってから行きましょうや」
「さてと……私は組に戻り兄貴の後始末を済ませなくっちゃ、明日の10時に迎えに上がりますから、今日はお疲れでしょう……ここでゆっくりお休み下さい」

浅田は笑顔を作って出て行った……。

一人見知らぬマンションに佇む……さすがに浅田のベットには上がれず……ソファーで微睡み朝を迎えた……。

「おはよう御座います!」
大きな声で浅田に起こされた……。
「お嬢さん! ソファーで寝るなんて……風邪をひいたらどうするんですか!」

「ご……ごめんなさい……疲れててつい寝てしまったの……」

「そーですか……じゃぁ起きてすぐで申し訳ございませんがもう10時過ぎです。さー出かけましょうか」

「あ……はい」

少女には顔を洗う時間も与えられずマンションを出る。
(浅田さん……何をそんなに急いでいるんだろう?)

浅田のタバコ臭い車に乗せられ途中ハンバーガーを車の中で食べた、区役所で謄本を貰ってから警察署に向かう。

警察署の前で少年のように幼顔の英次という浅田の舎弟分が待っており……米つきバッタのように浅田に頭を下げながら浅田の車に乗って帰っていった。

警察では捜査が終了していたのか意外とあっさり遺留品を返してくれた……。

地下の駐車場から武雄のベンツを乗り出し広尾のマンションに向かう……。

「兄貴が死ぬ前に、この車はお前にやると言ってくれましてね……」

ハンドルを握る浅田は上機嫌で、武雄との経緯……またこれまでの武勇伝を聞かされたが……全てが誇張されたようで嘘っぽかった。

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