夢の跡
しろくま:作

■ 春の夜の悪夢1

私の名前は岩瀬琴美、今親友の美香と共に学校の屋上に来ています。
・・・これから彼女と一緒に、ここから飛び降りて自らの命を絶とうと思っています。
犯罪って、意外と自分の身近に存在しているモノの様です。ニュース等でよく耳にする事件、まさかそんな事件に自分達が巻き込まれるのだなんて、今まで思ってもいませんでした。
現実って、本当に厳しいんですね・・・
・・・数日前、私は夢を見ました。とても嫌な夢、最低の悪夢でした。でも所詮夢は夢、目覚めさえすれば必ず元通りの現実が訪れる。少なくとも私はそう思い込んでいました。
今思えば、私の人生はあの夢を見た時点で狂ってしまったのでしょう。
嫌な夢を見せられたからといって自暴自棄にならず、あの夢が何を意味していたのかもっと深刻に受け止めるべきでした。
何故私達なの?・・・そう何度も悩みました。あんな夢さえ見なければ私は・・・
いいえ、全てを夢の責任にしても仕方がありませんね。きっと、これが私の運命だったのでしょう。あの夢を見たことも含めて、全て・・・
しかしもう手遅れですね。・・・もう、これ以上我慢することは出来ません。
ママ、パパ、そして美香、ごめんなさい。・・・さようなら。
その後2人は飛び降りて自殺した・・・

数日前・・・
琴美「え?・・・うんうん、そうねぇ。」
彼女の名前は岩瀬琴美、12歳。
琴美「大丈夫よぉ、私と一緒じゃない。それに他の人達も結構まともそうだし・・・うん。そうだねぇ。じゃ、明日の朝8時15分にあたしん家まで来てね?・・・うん、それじゃぁまた明日ね? ええ、おやすみなさ〜い!」
明日からは中学校の授業が始まる。不安も多かったが親友の美香も同じクラスだったため、多少は落ち着いているらしい。
琴美「えっと、数、国、英、社、体、と・・・よしOKぇ!」
明日の準備を整え電気を消した。
琴美(もう、美香は心配性なんだから。さ、私も寝なきゃ・・・)
そして琴美は眠布団に入った。
・・・しかし妙に寝苦しい。  
琴美(何だろ・・・まぁ、いっか・・・)
しかしその時は気にもせず眠りについた。これから永い夜が続くとも知らずに・・・



琴美「・・・ぅん・・・あぁ! もうこんな時間!?」
何故か夜が奇妙な程に短く感じた。
彼女が目を覚ました時、時計は既に8時を示している。一刻も早く出発しなければ遅刻してしまう。
琴美「ちょっとママぁ! 何で起こしてくれなかったの!? これじゃ初日っから・・・遅刻しちゃうじゃない!」
母親の責任ではないのだがついつい当たってしまう。しかしこれはいつも通りの軽いノリ、母親も冗談混じりで答えるのが日課となっている。
琴美の母「・・・ん? あぁ、あなたももう中学生なんだから、学校に行ってちゃんと大人になってきなさい。きちんと先生に指導して貰うのよ?」
琴美「???・・・何ぃ、それ。急に真面目になっちゃってさぁ。はいはい、しっかりとお勉強してきますよぉ〜だ。・・・おっと、急がなきゃ!」
そして琴美は慌てて朝食を済ませ、急いで支度を整えて学校に向かった。
琴美の母「そう・・・しっかりと、ね・・・」

琴美「美香、おはよ〜!・・・ふぅ、ヤバかったぁ、今日は目が覚めたの8時よ? 8時。ホント、危ないったらありゃしないわ。私ったら、そんなに熟睡してたのかしら?」
初日からの遅刻はなんとか免れたようだ。しかし琴美が到着した時にはもうクラスの殆どの生徒が席に着いていた。
皆緊張しているのであろう、話しをしている者は多くない。
因みにこの学校では同じクラスに友人を持つ人間は少ない。何故ならここは進学校、それも私立で一流の名門校である。県外から来ている生徒も多い。
美香「もう! 独りで心細かったんだから。琴美ちゃん、休むかと思っちゃったじゃない。今日は大切な日なのよ? ほらぁ、私も琴美ちゃんも、初めてなんだからさっ・・・」
何の冗談であろうか、確かに中学校の授業は初めてではあるのだが・・・
琴美「・・・はい? 何が?・・・あ、先生来ちゃった。ほらほら、前向いて?」
琴美の席は美香のすぐ後、いつも最初はこの席順である。小学生の頃からクラスもずっと一緒。初めのこの席順もあって、小学校で最初の友達は彼女だった。彼女とはもう6年以上の付き合いになる。
琴美(・・・何か、違う!? 美香、少し・・・変だなぁ。う〜ん・・・)
普通の友達なら気付かない程度の違和感。不可思議な発言は兎も角、気にしければ気にならないけれど、多少雰囲気が違うように感じた。
・・・そう言えば母親も少し変だったような。焦っていたためその時は感じなかったが・・・

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