許して悪魔様
非現実:作

■ 命を大事にね2

「ぇえ……アレ、姉貴はメール見てねぇの?」
「メール?」
「そ、そう、お袋からのメールで……」

慌てて私は携帯のメールチェックをする。
確かに母から新着メールが届いており、内容を見て力が抜けた。

「ちょっと急だけど、お母さんの友人が亡くなったのでお通夜に行ってきます。
ご飯はお姉ちゃんに任せるので頼みますよ」

その場にヘタリそうになるくらいに緊張の糸は解けてしまった。
(なによぉ〜〜もぉぉ〜〜〜必死に帰ってきたのが馬鹿みたぃ……)

「でよぉ〜姉貴さ、金貸してくんない?」
「ぇ、え……何でよ」
「姉貴もこんなに遅くなるとは思ってなかったし……俺もう腹限界なの」
「あっ、あ〜……それはゴメン」
「だから金貸してよ、コンビニで何か買ってくるから」
「…… …… ……」

ここで私は少し考えた。
今、この時点で健太に金を貸さなかったら、きっと親にバレるだろう……。
健太に貸すのも癪だが、ここは貸しておいたほう無難だ。

「解った、じゃあさ……時間遅かったのは内緒よ?」
「わぁってるって、わぁってるよ」

財布から千円を出すと、まるで引ったくりのような早業で健太は奪い、階段を駆け下りてしまった。

「ふぅ〜〜〜……何だか疲れたぁ……」

汗や何やらでネバネバする身体をさっさとシャワーで洗い流したい。
お父さんは大体11時過ぎにならないと帰ってこないし、親バレの心配はもう無い。
だったらと……私は下着と普段着を手に持って、このままシャワーに向かおうと決めた。
階段の前の健太の部屋に差し掛かって……。

「あっ、アイツまたっ!!」

部屋の電気おろか、PCのデスクトップが煌々と付きっ放しという酷い有様である。

「まったくもぅ〜電気はちゃんと消せって何度言ったら解るのよお」

基本的に節約家である私にはこういうのが本当に許せなないのだ。
乱暴に部屋に踏み込んだ。

「なぁによ……まぁたゲーム、はぁ〜」

弟こと健太は大ゲーム好きで、バイトの金の殆どはゲームに注ぎ込む。
部屋の本棚はゲーム関係の本が陳列され、ゲームオタクというよりは最早病気に近い。
ゲームを全くやらない私には、画面に写っているのが何だか全く解らない。

「しょうがないんだから……」

せめてデスクトップの電源だけ落とそうと、指を電源へと近づけた刹那。

「キャアアアアアアッァ!!?」

強烈な閃光に見舞われたのであった……。
   ・
   ・
   ・
   ・
   ・
(何だか頬が痛い……ナンダロウ……。
(それに何か腕とかも痛いんだけど……えぇと、
何が起こったのだっけ……?。)
何かをしようとして……ぁぁ、そうそう健太のPCを消そうと……。
(そうだ、電気を消さなきゃ)
思い出した瞬間、目が覚めた。

「?」

暗い。
真っ暗。

「ん?」

(あれ、私部屋の電気は消したんだ)
いや、何かがおかしい。
だって…… …… ……。
部屋の四隅には光が灯っているのだ。
(なん…健太っていつこんな趣味に?)
四隅の光は、高々と赤い揺らめきをしている。
(って、火じゃん……ぇ、ええっぇ、かっ火事になる…よ……ね)
イマイチ頭が働いてくれていないようだ。
(けっけ……消さないとっ!!)
私は身体を動か…… ……。

「ぇ?」
「お目覚めかね?」

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