許して悪魔様
非現実:作

■ 命を大事にね9

…… …… ……。
…… ……。
……。

「はっぁ!!」

ガバッと私は顔を上げた。
真っ暗……そして身体を預けている物はなんだか優しいフカフカした物。
段々と焦点が合ってきて、辺りを見回す。
……小さい頃はよく出入りしていた弟の部屋は真っ暗だった。
その中、デスクトップの明かりがやけに眩しかった。

「そか……夢見てたんだ、私」

うつ伏せのまま私は気を失っていたらしい。
(確か……デスクトップに触って……えぇと、感電でもしたのかな?)
それ以外は考えられない。
こんなにも瞬間に気絶するほど私は身体は弱くはない。
倒れた所が絨毯で良かった。
(……ふぅ)
酷く身体が疲れているのだが、このままジッとしている訳にはいかない。
まだ宿題も残っているのだ。
私はゆっくりと立ち上がり「うぁ!」っとうめき声を上げた。
身体中が汗でベト付いており、白い制服のブラウスが全身に張り付いたのだ。
これは……相当嫌な夢を見たのだろう……。
(ってアレ?)
夢というのは大半が覚えていないものである筈だ。
(ナントカ魔王に罪とか何とかされて……養分蟲だっけ?)
経緯は思い出したくないので思考を切り捨てはしているが、随分と鮮明な記憶がある。

「あはは、馬鹿らしい」

何を考えているのやら……首元を手でパタパタ仰ぎ涼を求める。
途端ブラウスの隙間から、女子高生失格レベルの臭気が鼻を突いた。

「ぅあ、ヤバ〜〜お風呂入ろ」

床に散らかってしまった下着や部屋着を掻き集めて私は脱衣場へと走ったのだった。
ガラガラと扉を閉めて鍵をロック。
私はせめての気分転換にと大好きな曲を口ずさみながら首元のリボンのボタンを外す。
そうでもしていないと……アノおぞましい夢を思い出してしまうのである。
今は何も考えないように勤め、サビの部分を歌いながらブラウスのボタンを外す。
パンツに合わせて清潔感あるフリルのブラのまま、いつも通り鏡に上半身を映して身体のチェック。
女子高生といえども毎日の身体のケアとチェックは忘れてはならないのだ。
今日も私は上半身下着のまま、鏡に映る私を見て…… …… ……卒倒した。

2度目の卒倒は随分と長かったようだ。
ドンドンドンと扉を叩くけたたましい音でようやく目が覚めた。

「ちょっと希美子ったら、あなた寝てるんじゃないでしょうね!!」
(ぁ……お、お母さん!)
「お風呂で寝たら風邪引いちゃうわよっ、ちょっと希美子!!」
「…あ……ああ大丈夫だからっ!」
「もぅ〜〜だからあれほど早く寝なさいって……」
「解ったから解ったから……」

お母さんは基本優しいけど、小言が始まると5分は止まらない。
色々と相談にも乗ってもらっているし、私を心配してくれるのは解るのだけど……。
再び身体を起こし、薄目で鏡に映る私を見た。
(…… …… ……。)
自慢でもあるスベスベの身体に……おへそ辺りにくっ付いている白い異物体。
信じられない事にそれが何であるか、その名前すら思い当たる節がある。
(夢……でしょ?)
恐る恐る指で突いてみる。

「ひっぃ!!」

指が異物体を通り抜ける事を願っていた私は、プニプニした感触に思わず手を引いた。
(それとも何、夢まだ終わってないの?)
……いや、それもそれで考えられない。
だって私は倒れた時に後頭部を打ったらしく、その痛みが現実だと証明しているのだから。
(じゃ……あ、これはどういう……?)
張り付いた白い蟲からは7本の赤い管が下半身へと伸びていた。
理解出来てしまう私がいた。
覚えがあるのだ。
何だか今が現実なのかどうなのかすら解らなくなってきた。
ドックンドックン……激しく心臓が鼓動している。
今の現状の私と、夢(である筈の)体験した事が全てリンクしていた。
震える指で腰元で数回折り返したスカートを脱いだ。
…… ……そして愕然とする。
この予感は外れていて欲しかった。
三度クラッと意識が遠のきかける身体を必死に両手で洗面台を掴んだ。
養分蟲から伸びる7本の管は、オ○ンコに突き刺さっていたのである。
(どうして!?)
イミガワカラナイ。
どうしてごく普通の何処でもいるような女子高生の私がコンナコトニ!?。
頭は混乱していた。
同時に、あのナントカ魔王の言葉が蘇ってくる。

「水に弱い」

…… …… ……。
信ずるのが何か解らなくなっていた。
思わず頭を抱え、その場にしゃがみ込む。

(これは夢の続きである……いやいや現に変な蟲が私に張り付いているし……。)
(でもそれも夢の作り物かもしれない……でも現に感触とか……それに今も動いてるし。)
(情緒不安定なのよ私……今日の相手はイマイチだけど、アソコに埋まってる感が今はあるし。)
「!?」

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