許して悪魔様
非現実:作

■ 命を大事にね10

最後の頼みを試す事を気付いた。
水に弱いとあの気味の悪い魔王は言っていた。
ならば……。
私は洗面台の水道を捻った。
これで変化が無ければこれは夢なのだ。
……いや、こんなの夢でなければおかしいのだ。
流れ続ける水道水にガクガクと震える指先を濡らして…… ……白い蟲に雫を落とした。


卒倒しかける。
もう何度目だろうか……。
いや……今回のは卒倒というよりは強烈な痛みで気を失いかけた。

指から2粒の雫が垂れて養分蟲に掛かった瞬間、下腹部に強烈な痛みが走った。
具体的に言うなればオ○ンコの中で何かが悲鳴を上げて暴れ回ったという感じ。
かの痛みは相当で……もう二度と試す事も躊躇う程だった。

「…… …… …… う……そ……」

そして私は絶望の淵。
あってはならない事である。
現実的にオカシな話がリアルで展開されている。
血の気が引いていた。
現実に起こっている事が理解出来ない。
咄嗟に思い立つ事、何処の病院?。
(外科とか、いぃや違う違う……精神科?。
何でも相談できたお母さんにだってこんな事……。)
誰にも相談なんか出来ない。
こんな事ありえない話だから……。

「…… ……もぅ……寝よう……」

寝て早く忘れたい。
一晩寝たら無くなっているかもしれない。
私はそのまま下着を洗濯機に放り込み、持ってきた下着に穿き替えて部屋着を着込む。
身体の汗や臭いは気になるが、ただただ眠りにつきたかった。
ガラガラっと扉を開けると、お母さんが食卓で軽い夕ご飯を作っていた。

「希美子〜ご飯は食べたの?」
「うん……」
「あ、そうそう健太のアリガトねぇ〜今お金返すから」
「後でいいよ……宿題あるからいくね」
「……あ、そぉ?」

家族にすら相談できない状況である。
私は会話を早々打ち切り、2階の自室へと足を運んだ。
途中、弟の部屋に差し掛かる。
扉は閉められており、全く音は聞えない。
どうせイヤホンでもしてゲームをしているのだろう。
…… ……。
何となく腸が煮えくり返ってくる。
(アンタのせいでお姉ちゃんは!!)
扉を開けて罵声してやりたい感情が沸々と湧き上がる。

「……」

でも出来ない。
家族の輪を自身で壊すのは怖い。
弟こと健太とはこの数年まともに話していないが、両親にさえそれを影響させるのはどうにも駄目だと思う。
……そう、一晩寝ればこれは全てなくなっているのだから……。



現実的な悩みである宿題は若干頭に過ぎったものの、私は明日のガッコをズル休みする予定でいた。
とてもこんな精神では授業など受けてられない。
真っ暗の自室で何度目かの寝返りをうつ。

「〜〜〜〜〜〜……〜〜〜 〜〜〜……」

駄目だ。
身体は本当に疲れているのに不安と恐怖で眠る事が出来ない。
無理矢理目を瞑っていても、ナントカ魔王の言葉や身体に受けた刺激が過ぎるのだ。
オ○ンコに張り付いた二枚貝の舌の感触が……。
オ○ンコから這い出る7本の管が……。
人ではない魔界の生き物である貝に産卵されたという…… ……そのシュチュエーションが。

「うっぅぅああ!」

ガバッと掛け布団を蹴り、私は上半身を起こして激しく呼吸を繰り返す。
どうにも頭からこびり付いて離れない。
(そもそもの原因は弟のゲーム……)
それが何であるか……最低限の情報は知っておくべきかもしれない。
私は私用のノートPCの電源を立ち上げる。
(ぇと……タイトルタイトル……なんだっけ)
自分の浅はかさに項垂れる。
(そういえばタイトルとか見てないわ…… ……)
弟がHゲームをやっている、その時点で引く。
(部分検索で、と)
キーワードに「養分蟲」「エロゲ」と入力して検索をしてみる。
すると……あれよあれよと只ならぬヒット数。

「有名……なんだ」

上から順に選んでゆくと…… ……解った事がある。
(はぁぁ、あははっはっはっはっは)
ようするにこのゲームは変態さんスキーなゲームだという事が解った。
概要はこう…… ……。

とある次元の違う姫様は淫乱で国民の目を欺きSEX三昧だったが、魔王に国を乗っ取られその恥部が判明される。
魔王は贖罪に悪魔の子を淫行数回分孕めば罪は許されるであろうと提示した。
かくして、ゲームの始まりなのだそうだ…。
(健太……アンタ)
という怒りと同時に不安が蘇る。
もしこれが本当の……だったとすると。
私は高校生になって……幾重なる罪を……。

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