許して悪魔様
非現実:作

■ 私はママ6

「おいっ!!」

両肘を付いて頭を抱える私の頭上から、魔王ナンたらが苛立った声色で呼びかけていた。

「な、何ようっさいわねぇ、そんなに怒鳴らなくてもいいでしょっ!」
「……」

人とは全く違う姿形をした大男だが、不思議と私はコイツがそこまで怖いとは思っていなかった。
何と言うか、こんな摩訶不思議な現実に事に対して取り合えずは相談や対処が出来るのだという拠り所がそう思わせているのだろう。

「貴様、この魔王ヴァインを時々何だと思っているのだという発言しよるな……」
「うっさいっ、ヴァの発音が下手糞なのよっ、下唇を甘噛み程度にして言いなさいよっ!」
「…… ……」

それに時々垣間見せるチョットした天然なリアクションが滑稽だ。

「……むぅ」
「それより何よっ」
「む?」
「用があるから怒鳴ったんでしょっぉ?」
「怒鳴ったのは我が何度呼びかけても、お前が上の空だったからだ」
「ハイハイ悪かったわね、で……何よ?」
「我は毎日来いと言うたが、何故それが守れぬのだ?。
我は魔界の種も重要であるが母体であるお前も我の手中にある中では重要なのだ。」

トクン、と微かに心が揺さ振られた。
理由はどうあれ、この変態鬼畜魔王ナンたらは私を気遣ってくれている。
誰にも相談できないという苦しくて夜もうなされる私は……自然と口が開いた。

「それは、私だってこんな事が現実とは思わなくって、その……冗談だって心の中で。
サボると死んじゃうとか……そんなの現実味帯びてなくて……。」
「腰にある養分蟲や、宿した魔界の子種が蠢いていても信じられなかったと?」
「あ……ああた、当たり前じゃないっ、私達が住んでる世界では有り得ない事よっ!!」

捲くし立てた私を冷血な……いや、冷静な視線を浴びせながら魔王ナンたらが言った。

「……今はどうだ?」

これは屈辱な答弁だ。
有り得ない事が現実に帯びていて、ありえない世界のルールが私を縛り付けているのが解ったのだから……。

「い、今……今は……解った…… ……。
死にたいくらいの喉の渇きは……こ、こうじゃなきゃ潤せないん……だって……。」
「淫姫よ、毎日来れないのであれば我が特別な処置を施そうか?」

一瞬不安に陥る。
これ以上は身体を汚されるのは御免だった。
考える……それは長考にまで至った。

魔王ナンたらの言いなりになるのは凄く腹立たしい。
だけどここに入るのは簡単ではく、弟の寝ている隙にコッソリと入るしかない。
今回はたまたま上手く行った訳で、いつかはバレてしまいそうな位に危険なミッションである。
…… …… ……死にたく……いや違う、死んだらお父さんお母さんが悲しんでしまう。
ズンッと心が重くなった。
何事も無かったように、私はこの難題をクリアして以後笑っているのが最良だと思う……。
その結論に達して、私は言う。

「……どうしたらいいの?」
「お前が宿した魔界の種子は言うまでも無く魔界の精によって成長する」
「…… ……」

幾ら喉に水分を摂取しても幾ら人の精を受けても、この死にそうな位の乾きは理解した。
現実に帯びていない魔界産のものは魔界産でしか対処出来ないのだ。

「魔界の種子は我の精しか欲さぬ、それなれば我の精をその日の度に服用すればよい」
「は?」

言っている意味が解らない。

「淫姫希美子よ、クスリというのは知っておるか?

「知ってるわよ、馬鹿にしてるの?」
「なれば話は早い、我の精を込めたカプセルをしんぜよう。
朝昼夜の三食、錠剤に込めた我の精を飲めば取り合えずは養分になるであろう」
「それが……クスリ?」
「そうだ、あくまでも緊急用だが効果はある」

それなら話は早い。
……というか、なんでそんな簡単な事を先に言ってくれなかったのだだろう。
私は有無を言わずソレに飛びついた。

「それっ、ソレを下さい!!」
「…… ……良かろう」

魔王ナンたらは口元で何やら妖しげな言葉を詠唱し、そっと……左手をオ○ンチンを握ったのだ。
(ぇ、え、ええっぇ、何何何スンの!)
あまりの出来事に私は狼狽しながらも……その行く末を凝視していた。
そして……なんやら術を施しながら全裸の私を見ながら左手でオ○ンチンを激しく擦りだしたのだ。

「ちょっ、なななな何やってんのよアンタッ!!」

あまりの現状に私は目を反らす。
魔王ナンたらは私の罵声すら聞こえていないのか、更に激しくオ○ンチンを擦る。
鼻息が「フンンゥンフッゥ」と激しくなり……。

「んぉぉおんんんぅぬっぅあああああ!!」

突如の魔王ナンたらの雄叫びだった。
そして……掌に20の粒なる物が現れた。

「出来たぞ淫姫希美子よ、これが我の土産だ」
「……ぇ?」

形にして楕円の5cm程度の豆粒のカプセル。
予想に反して相当小さい。

「これ……は?」
「食事の際にこれを指で潰し、中身を垂らすが良い。
この中には我の精がたっぷりと入っておる。
これを食せば3〜4日は持つ……だがあくまでも3〜4日だ。」
「…… ……これを食べるの?」

これが何で出来ているかは理解している。
今までの状況で言うなら、この錠剤は魔王ナンたらの精の塊だ。
(まぢで、コレ三食度に飲まなければならないの?)
軽く目眩がする中、触るのもおぞましい錠剤だ。
……だけど背には変えられない……恐る恐る魔王ヴァインの精が詰まったカプセルを受け取ったのだった。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊