悠里の孤独
横尾茂明:作

■ 少女の孤独5

30分後、X線撮影室の若い技師から「撮影データーは診察室に送りましたので今から医院長先生の診察を受けて下さい」そう言われ二階の203診察室に行って下さいと指示された。

(こんな大きな病院の医院長先生が直々に診てくれるなんて、骨以外にもっと重大な問題でも見つかったのかしら…)

悠里は不安げに歩き出した、しかし不安とは裏腹に先ほどまでの痛みは嘘のように消え階段も駆け足で上ることさえできた。
2階の廊下を進み203診察室前で立ち止まった、診察室前の待合椅子には誰もおらず受診番号電光板さえ消灯していた。

悠里はどうしたものかと診察室周辺を見渡す。
(直接診察室に入ればいいのかしら…)

悠里はためらいつつも203診察室の扉を少し開け中に声を掛けた。
「すみません、武井悠里と申しますが診察はここでよろしいでしょうか」

するとカーテンの奥から「どうぞ!中に入ってお待ち下さい」と声がかかった。
声は女性でなく男性の声だ(看護婦さんはもういないのかしら…)

悠里は診察室に入り長椅子に腰を掛けた、暫くしてカーテンが開き白衣を着た医師がモニターを見ながら「こちらの椅子に掛けて下さい」と事務的に言う。

悠里は言われるまま医師の前に置かれた椅子に座り、医師がモニターを見終わるのを待った。

暫くして医師は振り返りざまに「武井さんお待たせしました、頭部から腰部までの写真を何枚も見せて貰ったが何処にも異常は有りません」と微笑んだ。

「あっ、あなたはさきほどの運転手さん、この病院の医院長先生?」

「そうですが…あっそうか、僕が医者とはまだ言ってなかったね、フフッ僕も相当動転してたようだ、なにせ目の前で女の子が空中回転するのを見せられたからね、でも異常が無くてほっとしました、でっ まだお尻は痛みますか?」

「いえ、もうすっかり痛みは引きました、でも…少しヒリヒリします」

「そうだね、着地のとき1m近くも滑ったからスリ剥いたのかもしれない、じゃぁそこのベッドにうつぶせに寝ていただけますか、あっ…スカートとショーツは脱いで下さいね」

「えっ、ショーツも脱ぐのですか…」言いながら医師の眼差しを見た、その瞬間フヮっと性器が浮くような気持ちよさを感じた。

「脱いでいただかないと診られませんよ、薬を取ってきますから診られるようにして待ってて下さいね」
そう言うと医師は診察室の左奥へ消えた。

(知らないオジサンにお尻を見せるなんて…、でもお医者さんだから、んんでもどうしよう…)

悠里は暫くためらいをみせたが、椅子後方に置かれた診察ベッドを振り返りスカートのホックに指を掛けた。

恥ずかしげな手つきでホックを外すと一旦周囲をうかがう。
(いくらお医者さんでも…男の人と二人だけなんて、看護婦さんはいないのかなぁ)そう不安に感じるも先生が戻ってくるまでに脱いでおかねばとの焦りは募る。

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