悠里の孤独
横尾茂明:作

■ 少女の孤独8

話は逸れるが…。
人間は男女にかかわらず異性を獲得しようとする動機は、顔・肢体・仕草・匂いなどがまさに己の好みに合致したとき、これをどうにか獲得できないかと行動を起こす。これは他の動物も同様であろう。

だが動物学的に言えば「己の好み」と感じるのは「本能」が異性の外観美麗や匂いから内的な病気や奇形因子がないと判断しているのに過ぎない、それは正常・健康なる異性と交配し健全なる子孫を存続させようとする動物が本来持つ本能なのだ。

しかし近年の男性は腰つきが華奢で痩せた女を好むらしい、これは近代医学の発達で帝王切開術が容易になったせいもある、もし100年も前に今TVで人気の異常に細い女優が妊娠したなら、それは母子ともに非常に危険となろう。

つまり数万年の時を掛け骨盤の狭い雌は死に絶え、骨盤が大きく産道が広い雌のみが子々孫々遺伝繁殖してきたのだが、近年の医術は再び人間を有史以前に引き戻そうとしている、つまり自然分娩で子を産めなくなること事態が もはや人類歴史の中で異常事態なのだが…。

医院長は少女の尻や腰つきを見て美しいと魅惚れ「欲しい」と感じたのは「本能」がこの女に子種を植え付けよと命じているのであろう。
医院長は少女の傷のことなど忘れていた、尻中央の魅惑の狭間、それに続く太モモ…その見事なバランスについ見とれ溜息さえついていたのだ。

考えてみれば自分の担当である整形外科に来る患者に20代前半の女性は少ない、ましてや10代ともなれば希有と言えようか、それでもスポーツで腰や脚を痛めた女子高校生をこれまでに何度か診察したことがあったが、いずれも色黒で尻は吹き出物や肌荒れが酷く、「女」になる前の少女とはこのように醜いものであろうと勝手に思い込んでいた。

しかしこの少女は違った、自分はこれまでロリコンと思ったことなど無い、しかし気品有る幼顔に成人女性のグラマラスな肢体を持つ奇跡の少女、その肢体たるや透けるように白く、全身がウブ肌に輝いているのだ、そのアンバランスが医師にはたまらなかった。

自然、この少女を自分のものにしたいと身を搾られるほどの欲求に唾液が溢れた、それを無意識に嚥下したとき、喉が鳴らす音に驚き ようやく医師は理性を取り戻した。

「あ、あぁ…傷はたいしたことはない、少ししみるけど消毒するからね」そう言いガーゼに消毒液を染み込ませ左手で尻タブを軽く握るとカーゼをスリ傷に当て上下に擦った。

だが少女の尻タブに握った刹那、その感触に痺れた…それはまるで吸い付くような乳児の感触なのだ、このなめらかさは一体…。
手が震えそうになるのを堪え消毒を済ませると軟膏を指先で塗布し消毒ガーゼを当て絆創膏で止めた。

あぁこの深い狭間に思い切り顔をうずめたい…そして性器も見たい…。
これほどの尻を持つ少女であれば性器はどれほどのものか、オスであれば関心を抱かぬはずはない。

医院長は気付いたように「そういえば、自転車から飛び出しとき脚をハンドルにぶつけたはず、そこは痛くはないですか」と少女の背後に声を掛けた。

「そう言えば少し痛みます」

「そう…やっぱりね、ではこのまま上を向いて下さい」そう言って医院長は身震いした。
医院長はすでに己が医者であることを忘れたように少女が裏返るのを呆けた顔で待っている。

暫く躊躇のそぶりを見せた少女は観念したように体を反転させ上を向いて両手で顔を覆った。
その仕草は恥ずかしさの反射であろう、しかし医院長にしてみれば心置きなくじっくりみて下さいと言っているようにも感じられた。

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