悠里の孤独
横尾茂明:作

■ 逡巡5

それから3日が過ぎた、今朝先生から 契約は終えたからもういつでもマンションに引っ越しできるけど、今度の土日僕の休みの日に引っ越しを手伝うよ、だからそれまで待っててと連絡が入った、だが引っ越すと言っても荷物は使い古した冷蔵庫と洗濯機、それとビニールのクローゼットくらいなものだ。

昨日先生が電化製品や調度品・ベッド・ソファーなど生活必需品の全てをマンションに揃えてくれた、また広いクローゼットも造り付けがあった、だから恥ずかしいはなし下着と普段着だけ持って行けば生活には困らない、先生にはその事を話し明日一人で引っ越し出来ますと伝え、また引っ越しのお祝いに食事を作って待ってますから遅くなっても是非来て下さいと伝えた。


 次の日、引っ越しは朝から始め引越センターの軽トラ1台で済んだ、また部屋を空けるべく不要となった電化製品や布団・本・雑貨などはマンションに持って行く量の2倍以上もあり大家さんの知り合い業者に頼み粗大ゴミとして処理してもらった。

マンションに荷物を入れ午前の内にその片付けも終わった、悠里は一息入れようとベランダに出て汗で濡れた頬を風にあて街を見下ろした、遠くに東京湾が望め右手に東京タワー左手には浦安の一部が見えていた。

ベランダに寛ぎ目を瞑った、すると父母が亡くなってからの貧しく辛い日々が脳裏をよぎり…姉の顔も脳裏に浮かんだ、姉が自分を捨て男に走ったことを一時は恨んだが 今は姉も弱い女だったんだと思え悠里はもう許していた、それより見知らぬ異国で男に優しく迎えられただろうか…向こうの生活に融け込むことが出来ただろうか、むしろ今はそんな心配の方が強かった。

ベランダから部屋に戻り全ての部屋を点検し納得してから汗を流しにバスルームに行く、初めバスの使い方が分からなかったが取説を読み全てが自動で出来ることを知りお湯を張ることが出来た、悠里はその場で着ているものを脱ぎバスに浸かった、身長170cmの悠里が足を伸ばし横に寝てもまだ余裕のあるバスタブの大きさに驚く、それは嬉しいというよりもお湯が勿体ないと思え己の貧乏性に苦笑がもれた。

バスタブから出ると体を丹念に洗った、今夜先生とは2度目のSEX…(キレイにしなくっちゃ)特に性器はクリ・膣前庭を指で丁寧に洗い膣と肛門にも指を挿入して洗った、洗ってる途中膣にヌメリを感じオナニーの誘惑にかられたが 今夜先生にSEXされるまで大事にとっておかなくちゃと我慢した。

バスルームを出ると古い下着は全て捨て 新しく揃えた大人びた下着を身につけた、髪を梳かし薄化粧をすると一昨日渋谷・原宿で買い揃えた最新ファッションの中からシックな春コーデで身を包んだ。

ウォークインクローゼット正面の姿見の前に行き全身を映してみる、我ながら何て美しいんだろうと暫しファッションモデルのようにポーズをとり見取れてしまう、少し化粧をするだけで自分じゃないような…鏡には21〜23才ぐらいの美しい女性が映っていた、だが実際はまだ16才の少女ではあるが。


 昼食を済ませ午後から以前姉が働いていたスーパーマーケットに向かった、マンションから歩いて五分と近く都内でも比較的大きなスーパーだ、店に入ると先生の好物は何だろうと考える、先生とは3度ほど外で食事したが寿司や鰻・ステーキと日常食すものではないため好物は判然としなかった、それでも思いつくものを手当たり次第カゴに入れレジに向かう、レジにはアパートによく来ていた姉の同僚が数人いたが悠里を見ても誰も悠里とは気付かず、並ぶ人々から一際浮いて見える美しい女性に驚き羨望の眼差しで悠理に見取れていた。

夕方、料理を造りながら先生を待つ、まるで新婚生活のよう…悠里は結婚ってこんな感じなのかと旦那様を待つような心境に胸が弾んだ、だが今日マーケットに行ったとき同年代の若者を街で見かけることはなく、やはりこの時間はみな学校に行ってるんだと心が沈んだ。

(先生に今夜相談してみよう、1級遅れても来年高校に行きたいと…優しい先生ならきっと許してくれるはず)

8時過ぎ「悠里、遅くなってゴメン、開けてくれる」と電話が入り、悠里はエントランスドアの開ボタンを押した、程なくして玄関からチャイムが部屋に流れ悠里は飛ぶように玄関へ走った、ドアモニターを見ると先生が笑顔で立っていた、そのとき何故か一瞬で涙が溢れモニターの像は滲んで流れた。

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