優等生の秘密
アサト:作

■ 6

 聡子は脱ぎ捨てていた制服のポケットからティッシュを取り出すと、口の中に出された精液を吐き出した。瞳に涙を浮かべて数回咳き込む姿が、貢太にはいとおしく感じられた。その姿に、先刻までの妖艶さは微塵もなかった。
「聡子、大丈夫か?」
「……ええ。」
 京介が、聡子の肩を抱く。いつの間にか、制服をちゃんと着ている。仕草で聡子に服を着るように促すと、無言で聡子が頷いた。
 局部を露出したまま放心状態で座り込んでいる貢太の目前に、京介が携帯電話を差し出した。
「上手く、撮れているだろう?」
 貢太がぼんやりとした頭で、それが何であるか判別するのには少し時間が掛かった。それは紛れもなく、自分が聡子の頭を押さえつけて腰を振っている写真だった。見ようによっては、貢太が聡子に無理矢理フェラチオをさせているようにすら見える。
「な……っ!!!」
 さっきまでのまどろんだ空気が嘘のように凍りついた。貢太は慌てて京介の携帯電話を奪おうとしたが、軽くかわされてしまった。
「これを学校中に回されたくなかったら、俺達のいう事を聞いてもらう。いいな?」
「わ、わかった……」
 貢太に選択の余地はなかった。
 もし、この画像が学校中を巡れば、間違いなく退学だ。こんなことで退学になれば、あの母親が毎日のように怒鳴り続けるのは目に見えていた。

「じゃあ、ずっと私達の目の届く所にいてもらうわ。」
 着替え終わった聡子が、少し不機嫌そうに貢太を睨みつけていた。
「ま、待て……俺、成績がやばくて、来年から普通クラスなんだ……」
「だったら、成績を上げればいいだけの話だ。」
 京介がそう言って、にやりと笑った。
「丁度よかった、明日、ここで勉強会を開くのよ。」
「勉強会……土曜日にか?」
 貢太は着衣の乱れを直しながら立ち上がった。聡子は髪の毛を纏め上げながら、貢太をじっと見つめていた。その目線に、貢太の体温が僅かに上がる。
「来なかったらどうなるかぐらい、お前でも分かるだろう?」
「……あぁ。」
 不満、そういう感情を隠しもしない声色だった。だが、そんな事をかまっていられる余裕はなかった。自分に選択の余地はない、貢太は目の前で自分に見下しているかのような目線を投げかけている二人を交互に見つめた。
「じゃあ、また明日ね。仲原君。」
 聡子はそう言って、貢太の頬に軽くキスをした。その様子に、僅かに京介が顔をしかめたが、貢太はそれに気づいていなかった。

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