優等生の秘密
アサト:作

■ 32

「じゃあ、来週も今日と同じように、聡子よりいい成績取ったら……」
 貢太がそう言った瞬間、電話の向こうで俊樹が笑い始めた。
「と、俊樹……?」
『お前、本当に学習能力ないな。そんな回りくどいこと、必要ないって言ってるだろ?』
「必要ないって、それがルール……」
『あいつらのルールに従ってたら、いつまで経ってもお前はあいつらの言いなりだ。違うか?』
 俊樹の言うことは正しかった。だが、弱みを握られている以上、貢太は京介達に逆らうことは出来なかった。
『まだ、分かんねぇのかよ? これはチャンスだって言ってるんだ。いいか、来週、勉強会に出席する人間は、お前とあの美人と、もう一人のでかい奴だろ? あのでかい奴さえ何とかできれば、後はどうにでもなる。相手は非力な女だからな。』
「それは、そうだけど……俺、あいつらに弱み握られてるって……」
『だから、あの女の恥ずかしい写真、撮ってやるんだよ。たっぷりと、いろんなアングルで……』
 俊樹の言葉に、貢太は妙な興奮を覚えていた。
『俺も、色々手伝ってやるからよ。』
「俊樹、でも、お前まで巻き込むわけには……」
『バカ、何言ってんだよ。俺は、面白そうだから自分から首を突っ込むだけだ。お前に巻き込まれるわけじゃねーよ。』
 俊樹の声は、本当に楽しそうだった。貢太はその声に、京介に覚える恐怖とは違った種類の恐怖を覚えていた。それが具体的に何であるのかは理解できなかったが、これ以上触れてはならないような気がして、貢太は電話を切ろうとした。
『あ、そうだ。一つ聞きたいんだけどさ、あの美人って、いつも勉強会に何時頃来てるんだ?』
「いつも、俺達が行く前にはもう教室にいるから、何時頃かは……」
『じゃあ、いつもよりずっと早く行けばいい。それで、あのでかい奴が来る前に、教室の中を俺達とあの女だけにして……』
「分かった。じゃあ、来週……」
 貢太はそこまで言って、電話を切った。俊樹の計画は少し恐ろしい気もしたが、どちらにしても聡子を抱ける、その事実に変わりはない。そう思うと、興奮が抑えきれなくなってきた。貢太は、ベッドに横になると、ズボンの中で既に膨らんでいる一物を掴んだ。
「……聡子……」
 その名前を口にするだけで、手の中のものはびくんと脈打って、その硬さを増してそそり立つ。貢太の脳裏に、聡子の妖艶なまなざしや仕草が浮かぶ。まだ、聡子の、あのしなやかな指と、柔らかな唇の感触しか知らなかったが、それだけでも十分すぎる刺激を得る事が出来た。
 まだ夏美の身体しか知らない貢太は、夏美と違ってふくよかな聡子の胸の感触や、その中の感覚を想像しながら、激しく手を動かした。
「……っ!! 聡子……聡子……っ!!」
 自らの手の中で激しく震えながら、貢太は果てた。その行為に、言い知れぬ空虚感を覚え、貢太は大きなため息を一つついた。こんなものじゃないはずだ、聡子の身体は、もっと素晴らしいはずだ……その感情が、貢太の中で徐々に大きくなりつつあった。

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