■ 3
あ、ドアが開いた…
「さ、告った人です。」
「…?」
「あぁ、普段と逆にしてます。見える所が隠れて、隠れた所が見えて…いい眺めでしょ?」
「…」
ミミの声?
じゃ、聞いているのは先生?
でもなんだ? 告ったって。
まさかミミ知ってるのか? 僕と先生の会話。
「さ、お好きにして。」
「…」
あ、近づいて来る。ミミ? 先生?
あ、なんだいきなり…痛い!
「いきなりそこ噛むんですか? それじゃなんぼなんでも痛いですよ。」
「…!」
「まずお乳から。」
「…」
あ、今度は指?
なんか不器用だなぁ…
「う〜ん、違うなぁ。相手はオスです。お乳は小さいの。」
「…?」
あ、今度は気持いい。あ、だめだ恥ずかしい。立って来る…
「そうそう、小さく小さくまぁるくまぁるく…」
「…?」
「そう、その調子。」
「ほらほら、元気になってきたわ。嬉しい嬉しいって。よかったね?」
「…」
あ、なんか格好悪い…恥ずかしいよ…
「今度は舐めてみて?」
「…?」
あぁ…今度は舌? あぁなんかあったかい。これ、先生?
ちくしょう、ハンカチの柄うっとうしい。
あぁ、もう限界だよ。
「あららら? 立ったら左向くのね。ピサの斜塔みたい。ほらほら、見て。」
「…!」
「ね、日本にいながら海外旅行よ。」
「…!」
「さ、搭に行きましょうか? ここの搭には美味しいレストランがあるの。」
「…?」
「新鮮なオスの剥き身が名物なの。」
「…?」
? 何を言ってるんだ、ミミ。なんかおかしいぞ。
「汗の海から釣った新鮮なオスですわ。」
「…」
「このオスは昨日手に入れましたの。そして命じました。お風呂に入っちゃダメ! 今朝、このオス、排泄しましたの、大きい方。それも拭くだけ、洗っちゃダメ! …って言い聞かせましたの。なんでか分かります? クリーミーな香りとコクを付けるためですの。」
確かにミミは僕に命じた。僕が毎朝大きい方をするって言うのを知ってて。
「リンちゃん? 今日は大事な日なの。先生はね、天然の香りが好きなの。だからお風呂入っちゃだめよ。それからお尻洗っちゃだめよ。」
って。
先生は天然の香りが好き?
どういうことか分からないけど、なんでミミは先生のことをやたら知っているんだ?
しかし新鮮なオスとは…
惨めな格好だ。
「さ、まずは鼻を近づけて…そう、怖がらないの! これは美味しい料理ですよ。」
「…」
また何か近付いて来た。
足からなんかスースーするものが上がって来る。
こそばゆいなぁ。
これは鼻息だ。
ちょっとずつ荒くなって来る。
匂いを嗅いでいるのか。
「剥きたての香りはいかがです? ほらそこに剥いだ皮が畳んであるでしょ? つい10分ほど前に剥ぎましたから、まだ身と皮の間に篭っていた香りが温かさを保っていると思うんです。」
「ム! ーんヴ、ム! ーんヴ…」
「あらあらそんなに焦って嗅ぐことはありませんわ。ほらちゃんと手足を縛ってますから逃げられませんわ。まるで蛹…人間の蛹ね。」
息に声が混ざっているけど、これが八木先生の声か?
ただの獣の唸りみたいだ。
ハンカチが暗くなった…今、目の前に顔が来ているな。
耳がこそばゆい。あ…
「あらら、一瞬蛹が痙攣したわ。おっかしい。斜塔も一緒に震えたわ。ちょっと柔らかくなって来たかしら?」
あっ! 冷たい…
こんなとこ摘まみやがる。
「フルフルフル…おっかしい。」
ミミは狂ってるんじゃないか?
いったいなんの企みだ?
「さ、ソースも味わってもらわなきゃね。身体の真ん中辺にクリーミーなソースが掛かってますの。さぁ、どうぞ。」
あ…足がほどかれてる。何をするつもりだ?
「さぁ、脚を開いてちょうだい。あなたの大好きな人があなたの味を味わうんだから。」
…え? 僕に言ってるのか?
「何してるの、さっさと開きなさい。でないと、あなたの夢はここでお終いよ。」
夢? …ちくしょう…ミミの奴、図に乗って…
あぁでも、なんでだ、なんでこんな場面で八木先生の指先や唇が浮かんで来るんだ…
「あらら、フルフルがまた元気になって来たわ。あ、やっと分かったのね。ほら見て、脚が開き出したわ。」
股の辺がスースーする。
またあの鼻息だ。
「いかがです? ソースの香りは。この生き物は自分でソースを出すんですよ。ね、言ったでしょ? 天然の香り100パーセントです。」
「ハーッヴ…」
あぁ、もうここまでしてるんだ。ミミ、とにかくこの顔のハンカチのけろよ。
ん? これは硬い服の感じ…まだこの相手は服を着ている。ちくしょう、僕だけがこんな惨めな格好なのか?
「ン? ヴ…ン? ン?…」
「あららら? 我慢出来ないんですか?早く食べたい?
アツアツを食べたいの?」
「ヴー…ンンン…」
「じゃ、全身舌になる?」
「ンン! …ンンン!…」
訳が分からない。とにかく見せて欲しい。お前らはどんな状況なんだ? 僕はまだこのままか? ミミ、いくら5万円でも、これはひどいぞ。
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