■ 事の成り行き2
寝入る女を抱き上げ玄関の鍵を開けるのは苦労した…。
靴を脱ぎ散らかして応接間のソファーに寝かせ、へたり込む様にその横に座る…。
(ゲッ…この女、頭が切れてるぜ…しかし血は止まっているようだな…)
(このまま死んじまうことは…ないよなー)
(ったく…本当についてない…)
(……しかし…このままほっとくわけにもいかないし…)
(何処かに薬箱があったはず…)
(しかしよく寝てるよこの女は…ったく…こちらの気も知らないで)
俺はキッチンに行き…薬箱を取りだし、中身を確認して戻る…。
ガーゼに消毒薬を振りかけ、それでまず顔の血を拭き取り、次いで傷口を丁寧に拭き、傷専用の薬を塗って大きなバンドエイドを貼ろうとしたが…。
髪の毛が邪魔でうまく付かない…(くそーイラつくなー)
結局、包帯でぐるぐる巻きにして押さえた…。
(よし終わった…えーと…毛布はと…)
(おっ…………)
(この女…すごい別嬪じゃないか……)
顔に付いた血と、泥汚れを拭き取った女の顔は光り輝くほど美しかった…。
また着ている物も身につけてるアクセサリーも…高価なブランド品だということに改めて気付く…。
(この女…一体何者なんだ…女優?、しかし俺はそのセンはぜんぜん疎いからなー)
俺の好きな女優の竹内結子に似ていると想うが…(それはないよな…)
(しかし…ただもんじゃねーよなー、こんなレベルの美形…街でも見かけねーもん…)
(まっ、そんなことはどうでもいいか…はーっ俺も眠くなってきやがった…)
寝室に行き、毛布を取りだし臭いを嗅ぐ…。
(うっ…ちょっとカビ臭いけど…まっいいか…)
女の所に戻り毛布を掛け…俺は暫し女に見とれ…溜息をついてからバスルームに向かった。
シャワーを浴び、パンツひとつでキッチンに向かう…。
冷蔵庫から冷えたミネラルウオーターを掴み一気に喉に流し込む…。
(クーッ…酔い醒ましの水は旨まいや…)
(しかし…あの女…綺麗だったな…)
俺は急にHな気分になった…シャワーと水で頭が覚醒したせいかもしれない…。
(あれほど綺麗な女…さぞかしあそこも綺麗に出来てんだろうナー…)
(クーッ…見てみたい…)
(あんなによく寝てんだから…少しくらいパンツ捲っても起きねーだろう…)
(ちょっとだけ…ちょっとだけなら…罰は当たらないよな)
俺は足音を立てず…飲みかけのボトルを持って応接間に向かった…。
女は案の定…微かな寝息を立ててよく眠っていた…。
(うっ…酒臭せー、この女呑んでいやがったのか…)
(酒が臭うつーことは…俺の体内のアルコールもだいぶ薄くなったってことだよな…)
(しかしいい気なもんだ…どうせ酔って路上に飛び出したんだろう…)
(轢いたヤツもさぞ驚いただろうに…しかし…逃げるのは許せん!)
(…そいつも酔ってたんだろうか…?)
女の足元に俺は佇む…毛布を少しまくって女の表情を覗う…。
相変わらずの寝息に俺は大胆になっていく…。
毛布を女の腹部近くまでまくり上げ…フリルの長めのスカートの端を摘んで膝までまくり上げる…、それも女の寝顔を見つめながら…。
女の寝息に乱れはなかった。
(そういや…先程あんなに乱暴に抱いたのに全く起きる気配を見せなかったが…)
(ちょっと…この女…やばくない? …まさか頭を打って昏睡状態なんてこと…)
(おいおい…冗談じゃないぜ…もしもここで死なれたら…)
俺は急に不安になってきた、応接間を行ったり来たりして考える…。
先程来のHな感情などは今や何処かに消し飛んでしまった。
(シャワーも浴びたし…もうアルコールの臭いはしないだろう…)
(さっきの病院に行こう…確か救急何とかと看板に書いてあったな…)
(あっ…この包帯は……まっ…マズイなー……)
(はーっ…やってられないぜ…ったく、何で俺が苦しまなけりゃいかんのよー)
(……………………)
俺は急に腹が立ってきて…思わず女の頬を叩いた。
(ぅうん………)
女が呻いた…そして…ゆっくりと目が開き…また閉じる…。
「おい!、起きろ!…」
知らぬ間に俺は叫びながら女の肩を揺すっていた…。
女は揺れながら次第に体をこわばらせ…俺をしっかりとした眼差しで見つめだす…。
「やっと起きたか…おい! 大丈夫なのか…」
「ぁぁ…は…ハイ…」
「あぁぁよかった…どうなるかとおもったぜーったく」
俺はへたり込むように床に尻餅を付く…。
「あ…あのー…ここは何処ですか…」
「俺んちだよ!」
「あなたは…どちら様…」
「どちら様はないだろー…助けてくれって言ったのはお前の方だぜ」
「ぁぁぁ…そうでした…ごめんなさい…」
「お前…さっき体中がイテーって言てたけど…もういいのか?」
女は言われて気が付いたように体のあちこちを押し出した…。
「ぁぁ…ハイ…右の腰が痛いです…」
「お前…一体どうしたんだ、頭を切ってるが…車にでもはねられたのか?」
「…………………………」
「あぁぁ…私…思い…思い出せないの…」
「あのー…私は誰です……?」
「知るか!、俺が聞きてーよ、冗談もたいがいにしないか」
「ぁぁぁ……思い出せない…思い出せないの…」
「お…お前…本当に分からんのか…オイ…冗談じゃないぞ…」
「そー言やー、お前…頭ぶつけてたな…ってことは記憶喪失…?」
「おいおい…ほんとかヨー…服のポケットとか…身につけてるもん何かあんだろー」
女はコートのポケットを探しはじめる…暫くもぞもぞしてたが…
「何も入っていません…そ…そーだ、バック…」
「あのー…私…バックは持っていませんでした?」
「お前が倒れてたところには…確か…なんにも落ちてなかったぜ」
「……………………」
「もー考えてても埒あかん、俺はもう寝る !…いいか、夜が明けるまで思い出すんだぞ」
「ファーッ…眠い、まっ…しかし、死ななくてよかったぜ…本当に…」
「じゃーな、朝になったらちゃんと帰るんだぞ!」
俺はそー言うと自分の部屋に向かった。
しかし…ベットの中にもぐり込むと…またもや不安がよぎる…。
(あのまま記憶が戻らんかったら…どうするよ)
(警察に届けるしかないか…しかし事情を聞かれたらどう答えりゃいいんだ…)
(まさか道で拾いました…は…ねーよなー)
(頭の傷を見て…病院には何故連れて行かなかったと聞かれたら…)
(カーッ…やてられないぜ…何でこんな事で悩まされんといかんのだ…アホラシ)
(もー寝よ…)
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