2004.10.15.

虜囚にされたOL
03
木暮香瑠



■ 罠に嵌ったOL3

「麻希さん、大丈夫かね? 酔ったのかな?」
 幸造が麻希に手を差し出す。麻希は、先ほど平手を食らわせた相手に助けてもらうことが情けなかった。しかし、それほど足が縺れていた。自分一人では、とても立てそうになかった。
「すっ、すみません……」
 俯いたまま、恥ずかしそうに手を出した。

「ああっ、あああん……」
 幸造に引き起こされるが、脚に力が入らない。
「ひどく酔ってますね。たった二杯呑んだだけなのに……」
 幸造は、倒れそうになる麻希を支えようと脇の下に手を差し込んだ。
「うっ、ああん……。だ、大丈夫です……」
 麻希の唇から、潤いのある声が漏れる。
「大丈夫じゃないでしょう。とても一人じゃ立てそうにない!」
 太田は、脇の下に差し込んだ手を背中に回し、麻希を引き起こした。

 太田の手が触れた背中が、脇の下が酷く熱い。それは、太田の体温が伝わってくるのではなく、触られたところが内側から熱を発しているようであった。
 意識ははっきりしているのに、身体の力が入らない。感覚は過敏になり、太田が喋るたびに漏れる息さえ頬に感じている。
(どうなってるの? わたしの身体……。こんな酔い方、初めて……)
 自分一人では立ち上がることも出来ない麻希は、恥ずかしながらも幸造の手助けを借りる他はなかった。

 麻希は、幸造の肩を借りやっとの思いでボックス席のソファー席に腰を下ろした。
「カウンター席は危ない! そんなに酔っていたら落ちてしまう。こちらで小林君を待ちましょう。お酒を楽しみましょう」
 フワフワの大きなソファーに腰を下ろした麻希は、安堵の顔を見せた。お尻を包み込むようなソファーが、しっかりと麻希の身体を支えてくれた。
「こんなに酔ってしまって……、恥ずかしいわ。ごめんなさい」
 麻希は、酔った自分を……、平手を喰らわした太田に助けられたことを恥じた。

 太田の手が触れたところがジンジンと熱くなっている。火照りは、手の触れた脇の下、背中から広がっていき身体全体が熱を持っていった。
(ふふふ、媚薬入りのカクテルとも知らずに……。二杯も呑んじゃ、身体中が性感帯になってるだろう)
 太田は、笑いを堪え麻希の横に座った。

 ついさっき、平手を食らわせた相手が隣に座る。麻希は嫌だったが、酔った私を介抱してくださってるんだわと自分に言い聞かせ我慢した。太田の助けを借りなければ、このソファーに座るのさえ儘ならなかった。亮輔が来るまでは、太田の言うことを聞いているしかないと自分を納得させるしかない。

「暑そうだね。汗びっしょりだよ」
 太田は、おしぼりを手に言った。麻希の額には、大粒の汗が浮かんでいる。脇の下、背中も汗を噴出していた。
「はい、少し暑いですわ……」
 太田がおしぼりで麻希の額の汗を拭う。
「太田さん、結構です。自分でしますから……」
 麻希は、太田の手首を握り振り払おうとするが力が入らない。麻希の手は、太田の手首に添えられているだけのようだった。

 麻希の首筋には、絹のような艶やかな後れ毛が汗で貼り付いている。汗に濡れた黒髪は、肌の白さをことさら強調している。額には髪の毛が貼り付き、色香を漂わせる。
「いくら拭いても汗が出てくるね。服を脱いだほうがいいんじゃないかい? フフフ……」
 太田は、目の奥に卑猥な光を漂わせながら口元を吊り上げた。

 太田は、ソファーに凭れこんでいる麻希の背中に手を挿し込みワンピースのファスナーに手を掛ける。
「いやっ、だめえ、こんな所で……」
 麻希は、太田の手から逃れようと身体をクネクネとくねらせた。しかし、太田はあっさりとファスナーを探しだし、一気に下げた。
「いやあ! そ、そんな! 恥ずかしい。ひ、人に見られてしまいます」
 麻希は両手で胸を覆うようにし、ワンピースを脱がされまいと我が身を抱きしめた。

 ボックス席は、三方が壁で仕切られていて通路側にはカーテンが備え付けられている。カーテンを引けば、個室のようになり視界を遮ることができる。
「カーテンを閉めれば、見られる心配はないよ。声さえ出さなければね」
 太田は、カーテンを引き視界を遮った。
「こういう場所は初めてかい? ここは、恋人たちがお酒とHを楽しめる場所なんだよ」
 カーテンの向うから複数の足音が聞こえる。新しい客が来たみたいだ。コツッ、コツッ、コツッとハイヒールの甲高い足音と革靴の低い音が聞こえてくる。
 太田は麻希の横に座り直し、胸の前で組まれている手首に手を掛けた。

 太田は、ゆっくりと麻希の手を胸の前から剥がしていく。
「いやっ、やめて……。だっ、だめえ……」
「ふふふっ、声を出すと他の人に気付かれてしまうよ。いいのかい?」
 太田が、麻希の耳元で呟く。麻希は、イヤイヤと首を横に振った。

「ああっ、だ……、だめです……。こ、こんな所で、服を……脱ぐなんて……」
 意識ははっきりしているのに、身体が思うように動かない。酔い潰れた時のように身体が重く、動作が緩慢になってしまう。麻希は、太田の成すがままワンピースを脱がされいく。
「ワンピースも汗でびしょびしょだよ。こんな服を着ていたら風邪を引いてしまうよ」
 やさしく言うが、目の奥では淫欲がギラギラと渦巻いている。太田は手際よく、ワンピースの袖から麻希の腕を抜いていった。

 麻希は、力の入らない身体に歯痒い思いを感じていた。太田の手を拒もうとしても、それが出来ない。
(亮輔さん、は、早く来て……。た……、助けて……)
 心の奥で小林亮輔に助けを求めても、未だ来る気配はない。麻希のワンピースは太田の成すがまま脱がされ、腰のところに纏わり付いていた。

 麻希は、両腕を胸の前でクロスさせでブラジャーに包まれた隆起を隠した。
「ああん、恥ずかしい……」
 太田の目前は、麻希が隠そうとしても隠し切れない肉丘が腕の隙間から零れている。シルクの輝きを湛えたレースのブラジャーが、汗で双乳に貼り付いている。
 亮輔と二人だけの誕生日のために、麻希が選んだランジェリーだった。ハーフカップのブラジャーは、肉丘を寄せ谷間を深く刻んでいる。そして、Vゾーンをシースルーのレースが飾り立てていた。この日のために麻希は、普段は身に着けることのない大人っぽいランジェリーを選んでいた。

 太田の目前で、荒くなった息に合わせ柔らかい隆起が大きく上下していた。乳頭は辛うじてカップに隠れているが、張り付いたレースの下に乳輪が透けて見えている。
「いやらしいブラジャーをしているんだね。乳輪が透けて見えるよ。いつもこんな下着で仕事してるのかね?」
「いえっ、恥ずかしい……。みっ、見ないで……」
 麻希は、頬を赤く染め俯いた。目元を朱に染めた姿が、太田の淫欲を刺激する。太田は、興奮に震える手を麻希の胸元に伸ばしていった。

 麻希のクロスされた腕の下に潜り込ませ、ブラジャーの上から柔乳を揉んだ。
「ううっ、いやっ! だめえ……、ううっ、ううっ……」
 麻希の背中を電流が流れた。今まで経験したことのない甘媚な刺激が、脳天へと、また、股間へと流れ込み、喘ぎ声が漏れる。
「ああっ、あうう……」
 太田が指に力を入れると、麻希は喉を退け反らし喘ぎ声を上げながら背凭れに寄掛かった。
(えっ? どうして? なぜこんなに感じるの?)
 麻希は、自分の反応に驚き不安を感じる。
「ブラジャーもこんなに濡れてるね。暑いんだね、これも脱いだほうがいいね」
 汗に濡れたブラジャーを柔肉と一緒に揉みながら、太田は麻希の背中に手を廻す。
「ぬ、脱がさないで……。いやっ、恥ずかしい……」
 身体をクネクネと捩るが、ホックをあっさりと外されてしまった。

 麻希の意識は恥辱と快美な刺激に支配され、自分がいる所がカーテン一枚で隔てられていることも忘れていた。麻希は、脳に幕が掛かったように虚ろな表情をしている。露になった乳頭を、太田が指で弾いた。
「ううっ、あんっ……、いやん……」
 ルージュに塗られた唇から、喘ぎ声が零れる。
「色っぽい声を出すんだね。会社ではいつも清楚な感じなのに……」
 麻希は自分の唇から漏れる声が恥ずかしく、体中の血が頭に上ったようにカーッとなる。

「暑いんだろ? こんなに汗が浮いてる」
 胸の間を覗き込むと、深く刻まれた谷間に汗が溜まっている。
「ああ、暑いの……。わたし、おかしい。どうして? 暑いの……」
 太田は、おしぼりで谷間の汗を拭いてやる。麻希は、イヤイヤと首を横に振りながらも、抵抗する素振りは見せなくなっていた。

 今まで味わったことのない感覚に、麻希の思考はどうしたらいいのか判らなくなってた。胸が熱く火照り、隆起が張ってくる。乳頭がムクムクと頭をもたげてくるのが自分でも判る。おしぼりで、赤の他人に胸を拭かれているのに、それなのに感じてしまっている。
 二十三歳の麻希の身体は、快感を味わったこともエクスタシーを迎えることも経験済みだった。しかし、今感じる疼きは、そのとき以上のものになる予感がしていた。
「乳首が勃ってるよ。真面目な娘だと思ってたのに、こんなに感じやすくて淫乱な娘だったなんて……。幻滅しちゃうな、フフフ……」
 太田は、皮肉を込めて言う。
「へん、変なの、わたし……。ああっ、きょ、今日はおかしいの……。酔ってるせいよ、ううう……」
 麻希は、敏感になっている身体が不安でたまらなかった。恥ずかしいのに感じてしまっている。このままでは、太田に絶頂を迎えさせられてしまうのではないか? そんな不安が脳裏をよぎる。しかし抵抗することもできず、身体は快感を求めているような気がする。麻希は、不覚にも酔ってしまった自分と感じやすい身体を呪った。



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