2011.04.27.

Midnight Hunter
003
百合ひろし



■ 第一章 屋島学園3

同じ頃―――、地理の教師の小倉典子は帰宅する為に荷物をまとめていた。彼女は24歳と教師歴が浅い若い教師であるだけでなく、157cmの身長で幼さが残る顔立ちに可愛らしい服装、そしてふわっとしたボブカットの為、生徒と一緒に居ても普段着の生徒が混ざっている様にしか見えなかった。
典子は携帯電話が鳴ったのに気付くと発信元を確認した。ディスプレーには『りぼん』とあった。
「あ、もしもし―――。分かったわ」
電話を取って話した。話が長引いてくると目の前の席に掛けて待っている生物学の教師の新倉美幸が早く終わらないかな、といった表情で待っていた。
この2人の教師は年が近かった。美幸は2年先輩の26歳だった。そして典子が可愛いタイプで美幸が美人タイプ、更に典子が社会科で美幸が理科とベクトルが違う為不思議とウマが合った。
そんな2人なので大抵の時は一緒に居た。帰るのも美幸が典子を車で送っていくのである―――。

あれ?この間は―――?

勿論毎日が一緒な訳ではない。あの日は美幸が、
「ちょっと抜き打ちテスト作るから、今日は先に帰ってて」
と言ったので典子は先に帰ったのである。後はその場を覗いていた男子生徒(と一部ミッドナイトハンターも)が見ていた通りである。勿論テストは作っていたのだが、テストは残る為の口実で、あの日は用意までしてオナニーに耽っていたのだった―――。勿論そんな事は典子は知るよしも無い。
「分かった、それを流せばいいのね。私も調べてみるから。じゃあ」
長い会話の後、典子はそう言って電話を切った。すると美幸は、
「小倉ちゃん、長いよ。待ったんだから〜」
と苦笑いをして言った。典子は舌を出して笑い、
「先輩、ごめんなさい」
と言った。

3日後―――。
「生徒会長、空手部のスピーカー直したぜ。コーンがお釈迦だったからユニット交換だったな」
筋肉質でツナギのよく似合う長身で無精髭の用務員が生徒会室に入って来て言った。理彩はそれを聞いて、
「ありがとうございます。これで宮原さんは困らないでしょう」
と礼を言った。それから用務員が立ち去ると、役員に、
「多分大丈夫ですが、念の為今日も空手部はマークします。私が行きます」
と言った。役員は同意した。
そして部活終了時間に合わせて理彩は空手部に向かった。空手部に着くと同時に鐘が鳴り、葵は鐘に気付くと片付けを始めた。
「大丈夫な様ね」
理彩はそう呟き、道場の壁に寄り掛り、葵が出て来るのを待った。葵は、外で待っていた理彩に驚いたが、スピーカーを直す手配を取ってくれていたのでお礼を言った。理彩は、
「壊れてた事に気付かずに貴方を風紀を乱す生徒としてマークして悪かったわ」
と謝った。葵は、
「い、いえ。時計があるのに時間見て無かった私も悪いです……」
と言った。理彩はそれを聞いてから、
「何処かで食事しましょうか。たまにはいいでしょう。空手部に来年部員が来るように考えないとでしょうし」
と言った。部員が他に居ない葵にとっては死活問題―――、それでアドバイスを貰えるなら行かない訳にはいかなかった。
2人で歩きながら近くのレストランに向かったがその時突風が吹いた。葵も理彩もとっさにスカートを押さえた為にパンチラする事は何とか防げた―――。


食事が終わり理彩と別れた後、葵は寮に戻るや否や着替もせずにPCを起動して裏サイトにアクセスした。そして雑談スレに入ると、榊に接触したと言ってきた人物の書き込みは無かったが、1つ新しい書き込みがあった。匿名の裏サイトで態々"onirok"と固定ハンドルネームを付けて、である。
「おにろk―――?」
葵は訳の分からない名前に困りながらも本文を読んでみた。内容は世間話だが、今まで同様隠された内容に気付いた。
「最近夜中の風紀が乱れてるのでセイバイされた」
「まだ出るかも知れない気を付けろ」
「何があるか知りたければ夜中の校舎へ」
と書かれていた。葵はすぐに行こうとは思わなかった。大体榊の事についての情報のまだ前回書き込まれた返事が無いし、ラグビー部の生徒と榊とは交友関係が無い為の関連性が見えて来ないからだったが実際に榊に続いてラグビー部の生徒もやられているのは事実である。その為、その関連性も探る事にする事にしたが取りあえず榊の事を聞く為にonirokに対して同じ様に世間話の中に、
「榊君の事は何か分かりますか?」
と埋め込んで置いた。
しかし、こうやって複数の人と暗号のやり取りをしていると、益々榊は何かにはめられてしまったのでは?と思いたくなる。
「下着姿のハンターも本当にいるのかなあ……」
一瞬そう思い、いや、思わずには居られなくなり立ち上がって制服を脱いだ。ブレザー、ネクタイ、スカート、ワイシャツを脱ぎ下着姿になった。それから空手の基本動作をやり、最後に蛍光灯の紐をパシッと蹴った。青いリボンがついた水色の地にピンクの小さな花が散りばめられた可愛いブラジャーと同じく正面に青いリボンが付いた水色の地に、幅1cmと細いサイド以外の部分以外はピンクの小さな花が散りばめられた可愛いパンティ姿の自分が鏡に映ってるのを見てドキッとして赤面した。下着姿で闘うのはこういう事なんだと思って急に恥ずかしくなり急いでタンスから服を取り出して着たがドキドキは収まらなかった。
何故だろう?今迄下着姿になった事だけなら数え切れない程ある―――。着替える時や風呂入って服を脱ぐ時や逆に風呂から上がって服を着る時。つまり毎日必ず下着姿になる時間が存在するのだ。また、別に今初めて今身に着けている様な可愛い下着を身に着けた訳ではない。今迄だって沢山あったのだった。それなのに何故今だけこんなにドキドキしたのか―――?
今迄は服を着たり脱いだりする通過点に下着姿があったに過ぎなかったのだが、今は違ったという事だった。つまり下着姿で何かをやる、下着姿で長時間居るという下着姿自体が目的だった事が無かったからである。しかも「下着姿で闘うハンターが居る」という事を意識し、ハンターの彼女と下着姿で空手の型をやった自分と重ね合わせてみるなんて事をすれば、いままでそういった経験が無かったのだからドキドキするのも無理は無かった―――。今身に着けている様な可愛い下着が好きでそれを身に着けてそんな事をすれば尚更だった。
葵は立ち上がって自分の部屋から出て自販機に向かった。そこでジュースを買ってグイッと飲み、やっと落ち着く事が出来たが、今着ているブラウスとミニスカートの下には可愛いブラジャーとパンティを着けているんだ―――とどうしても意識してしまっていた。


PM11時―――、ウエーブの髪で顔の上半分をマスクで隠し、黒の靴下と黒のスニーカー、そして白いリボンの付いたこげ茶色のブラジャーとパンティ姿の女はいつもの様に学園を見回っていた。外の見回りを終え、今度は中へ―――。別に窓から忍び込むのではない、職員玄関から堂々と入るのである。女はセキュリティキーの入力をして扉を開けて中に入った。そう、こんな仕事をしているのだからそういった番号などは当然全て覚えている。
音を立てない様に移動し、怪しい所があったら壁伝いに移動し隙を見て中に突入する―――。女は全神経を集中させて微かな音も聞き逃さないように歩いていた。廊下は非常口を示す明かりや消火栓の赤いランプの灯りのみで照らされ視界は殆ど無かったが女にはかなり見えていた―――。毎日休まず夜にこの仕事をやっていると初めて夜中に校舎に入った人には見る事の出来ない物も見えてくるといったものである。
何か音がした―――。女は注意深くその音の方へ向かった。理科室だった。壁に背を付け暫くその状態で中の様子を伺うが特に動きが無いので理科室には異常は無いと判断した。女の判断は正しかった。実際何も無く、微かな音は換気扇から入った風がカーテンを揺らし、カーテンが近くに整理整頓してあった器具に当たり器具が揺れて立てた音だったからである。
と、この様に普通はこんな調子なのでミッドナイトハンターが実際に何者かと闘う事は無いのである。ここの所3件連続発生はおかしいといってもいい程発生頻度が高かった。この日の様に1回目の見回りの時に何も無ければ一旦校舎から出て小屋に行き、休憩を取る事が出来る。この休憩は女にとって大きかった。
小屋の裏口から「自分の部屋」として与えられている部屋に入り、電気を点けて一息ついた。自分の部屋といっても夜中にこうやって休憩するためのみの部屋なので色んなものがあるわけではない。自分の着ていた服がハンガーにかけてあり、その他はパンなどの軽食、歯磨きセットや化粧品、小さなタンス位しかないのである。
壁には自分の着ていた服がハンガーに掛けてあるのみで、タンスの上には歴代ミッドナイトハンターの写真が入ったアルバムが置いてあった。女は久し振りにそのアルバムを開いた―――。自分は10代目で、始めてから1年8ヶ月程経っている。
「彼女に次やってもらいたいわね……」
女は呟いた。初代はほぼ11年前―――、それから毎年交代して自分まで来た。ミッドナイトハンターはこの屋島学園の女子生徒であり、今迄の人は2年生の中頃にミッドナイトハンターになり、そして3年生の中頃に引退してきた。しかし、自分は1年生の時になったので、これだけ長い期間になったのである。因みに、先程屋島学園の女子生徒がミッドナイトハンターになると言ったが、6代目のみ男子生徒だった。
アルバムには名前と顔写真、全身写真とある訳だが、ミッドナイトハンターとしての写真なので、顔写真は今彼女がしている様なマスク等、正体を隠す為のアイテムを着けた状態で撮られている。全身写真でも勿論そうでありマスク等を着用していて、そして下着姿である。写真に残すという事なのでみんな自分が一番気に入っている下着を着用していた。但し写真は室内―――この部屋で撮ったものなので足には靴下のみで靴は履いていなかった。
この写真を撮るのは後継者が見付かって、引退が決まってから―――、つまり女はまだ後継者が見付かっていない状態なので写真は撮れなかった。
「まだ時間はあるわ……」
女は呟き、掛け布団を出して布団の中に丸まって仮眠を取る事にした。当然いつでも動けるように服は着ないしマスクも着けたままである。
その中で幾つか考え事をしていた。女が後継者にしたい"彼女"に適性があるかどうか調べなければならない事だった。ミッドナイトハンターには鉄の掟がある―――。

1, パンティ姿を愛しその姿でいる事。パンティは死んでも守らなければならない。
2, 正体を知られてはならない。
3, 正体を知られた場合は見破った者を後継者にしなければならない。
4, 通常の引退時は任務を適性を持った者に引き継がなければならない。
5, もし4,以前に希望者が現れたら闘いによって決定する。希望者が勝てばそのまま弾き継ぎ、負けた場合は経過観察し、希望者に適性があるならば引き継ぐ。

つまり、女が後継者にしたい"彼女"が先ず1,を満たすかどうかが問題である。また、その他戦闘能力が足りなければ何かあった時に正体を知られてしまう。つまりそれだけの戦闘能力、そして隠密能力が求められる。引継ぎに関しては実際今迄、3、4、5代目と3代連続で条件5, の闘いによって引継ぎが行われた。4代目は実際に3代目を倒して引継ぎ、5代目は4代目を倒せなかったが、4代目に適性があると判断されて5代目を引き継いだ。因みに6代目の男子はというと、5代目の後継者としてどうしても女子が見付からなかったので男子になったのである。男子では1,を満たせないのでその代わりビキニパンツという折衷案で何とかしたらしいが、7代目を探す時に、5代目の力を借りて7代目に引継ぎをしたという事だった。
考えているうちに眠りについてしまい、そしてベルの音と共に目を覚ました。AM3時だった―――。そして2回目の見回りをしてこの日の任務を終えた。


榊和弘の停学が解け登校してくると、友人達にからかわれたりしていた。彼は元々交友関係は活発であるので停学を切っ掛けに苛められるとかそういうのは無かった。今までの日常に戻っただけであった。しかし、1つだけ絶対に気をつけなければならないことがあった。そう、「タバコで停学になった」という事を忘れてはならない事だった。榊がタバコを吸っていなかったのはみんな知っている事実であるので、聞かれたら、吸ってもいないのに初めて吸ったタバコの味とかそういうのを答えなければならなかった。不自然になってはいけない―――。本当の目的は体操着窃盗だったのだが、ミッドナイトハンターに襲撃され、その後見知らぬ部屋で目を覚ました時、
「もう、一切から手を引くって約束するなら、タバコって事で手を打つよ」
と、彼も良く知る人にそう言われたのでそれに従うしか選択肢が無かったのである。しかし、何故その人がそんな事を何処で知ったのか―――?それだけはどうしても分からなかった。
「どうしたんだ榊。いきなりボケッとして」
「あ、いやいや、やな事思い出してさ。やっぱり学校はいいぜ」
友人とそんな会話をしていた時、呼び出しの放送が掛かった。
「2年2組の榊君、榊和弘君。職員室まで来てください」
地理教師の小倉典子の声だった。1組と2組は理系のクラスなのに文系教師の典子からの呼び出しは不自然だった。榊は選択で地理を選択していないので尚更である。

夜―――。葵はスピーカーが直った事で部活動終了の時間をオーバーする違反をしなくなったので完全に生徒会からのマークは解けた。いつもの様に1人で帰った。断っておくが葵は友達が居ない訳ではない。空手部は1人なのでそうなってしまうのである。そしていつもの様に寮の自分の部屋に戻るとPCを起動して、情報を集める為にネットに接続した。最近はその情報集めも裏サイトばかりになっている。
結局「サカキと接シょくした」と書いた人はそれ以来書き込まなくなっていた。実際に榊が復学した事からどうやら釣り発言だったのだろう。その代わりにonirokと匿名のもう1人の書き込みがあった。その内容はいつも見るような世間話であった。しかし、匿名のもう1人の書き込みは、逆斜め読みで、
「ミッドナイトハンターに会った」
との書き込みであった。葵はそれに対して同じ逆斜め読みで返事を返した。
「榊君の事件と関係あるのですか?」
すると3時間後、今度はonirokの方が、
「関係あります。今は言えませんが」
と縦読みで返して来た。葵は寝る前にもう一度掲示板を見てその書き込みを確認した―――。


3日後―――生徒会室。生徒会長の理彩は、全校生徒のデータを見ていた。副会長は、
「最近データ見てること多いですね。何か気になることでもあるの?」
と聞いた。理彩は、
「ええ……。寮生の割合が少なくなってるのが気になってきてね。地方への求心力が無くなって来ている可能性があるわ。首都圏に人口が集中してるっていってもまだ4割―――。その4割のうちの6割は通学圏外よ」
と答えた。現在の寮生の割合はザックリ30%。一番多かった時は45%程は居たのだ。それを更に学年別に調べる為に見ていたのだった。因みに葵は寮生であるが地方出身ではなく首都圏の通学圏外だから寮生である。そういう人もどんどん取り込めないとこれからの学校の発展は難しいという事で資料を纏め、理事長室に持って行く事にした。
廊下で地理教師の典子と会った。典子は、
「あら、貴方も理事長室に?」
と聞いた。理彩は、
「ええ。先生もですか」
と返事した。典子は、
「はい」
と可愛らしい笑顔を見せた。理事長室に入れるのは校長と教頭、生活指導部部長、生徒会役員の会長、副会長、書記までである。他の者は特別に許可がないと入れない。しかし、その特別許可者の中に典子は入っていた。しかもその時々に許可を受けるのではなく扱いとしては前述の者と同じであった―――。

夜、女は小屋に入った後着ている制服をブレザー、ネクタイ、スカート、ワイシャツと1枚ずつ脱いで、靴下を履き替えて紺の靴下と水色のリボンがついた紺のブラジャーとパンティ姿になった。それから制服をハンガーに掛けてから壁に掛けた。その時ブレザーのポケットに入っている携帯電話が鳴った。ディスプレーを見ると「ホック」とあったので出た。
「はい、もしもし」
それから色々話をして電話を切った。
「思った以上に食い付いて来るわね……。何処かで潰すか、でも潰す前にその人が男か女か調べないとね……」
そう呟き、ホックという人に電話を掛けた。するとホックはすぐに出て、
「分かったわ、少し釣ってみる」
と答えた。それから女は携帯電話を制服にしまい仕事に出た。
この日も特に異常は無く1回目と2回目の見回りを終える事が出来た。



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