2013.11.13.

緑色の復讐
002
百合ひろし



■ 第一話2

遥は小夜子グループに囲まれた状態で体育館に入った。上履きから体育館履きに履き替えて、小夜子達に引っ張られバレーボールのコート内に立たされた。授業でやった時と同じ状態である───。あの時は全員、いや、小夜子を除いた人で片付けたのだが、また出したのだろうか。遥は他人事の様に考えていた。そうしないと突然訪れた今の状況に混乱してしまうからだった。
と、その考えは中断させられた。小夜子が一歩前に出て命令したからだった。
「制服、脱ぎなさいよ」
それに対して遥は首を振った。今ここで脱いだらどういう事だかは考えなくても解る。しかし、小夜子はもう一歩間合いを詰めて、
「制服で体育やるつもり?体操着"忘れた"のだから解ってるでしょ?」
と言って遥の顎に人指し指を掛けた。遥は一歩下がったが、グループのメンバーに当たったので突き飛ばされて転倒した。
顔を上げると目の前に小夜子がしゃがんでいて、
「先生がこういう事やると後々問題になるから私達が代わりにやってあげるわ」
と言い、遥の顎に指を掛けてグイッと自分の方を向かせた。それと同時にグループのメンバーも間合いを詰めた。
「どうしても嫌なら私達が手伝うけど?」
小夜子が甘い声で言うとグループのメンバーは冷たく笑った。遥は逆らう事も逃れる事も出来ないと悟った。きつく目を閉じ首を左右に振った。そしてゆっくりと立ち上がって両手を腹に持って来た───。
ブレザーのボタンに指を掛けて外し脱いだ。その後蝶ネクタイをほどき床に落とした。それからワイシャツのボタンに指を掛けてゆっくりと1つずつ外して行った。視線は下を向いている訳ではないが、誰にも目を合わせずに少し細めていた。
全てのボタンを外すと、スカートに手を掛けた。ベルトのバックルを外し、スカートのホックを外してチャックを下ろしてから手を離すとスカートは重力に任せてフワッと落ちた。それからワイシャツを脱ぐと薄いピンク色の下着姿になった───。
「これで……いいの?」
遥は恥ずかしそうに顔を赤らめながらも小夜子だけをじっと見据えて聞いた。両腕で胸をかばう事など意味無いし、そうすると逆に小夜子に喜ばれて手を退けさせようとするに決まっているので遥は普通に両腕をダラリと下げて、逆らう気は無い意思を示した。
小夜子はクスッと笑い、
「ピンクの可愛い下着ね───、白のリボンがいいじゃない。あなた顔も可愛いし似合ってるわ。意外と解ってるじゃないの」
と言いながら、スッとパンティのリボンを触って褒めた。勿論遥は嬉しい訳がなかった。小夜子は暫く遥の周りをぐるぐる回ってじっくりと鑑賞した後グループに体育の授業でやったことを復習するように指示した。
グループのメンバーは言われた通りに遥にやらせた。軽く体を暖めるランニング、ストレッチ、そして対人パス等───。ここまでは普通だった、遥が下着姿でやっている事を除いては。
しかしここからは違った。小夜子はバレーボール部に入部しているグループの一人に指示をした。
「青山さんは運動神経良いから普通じゃ物足りないわ。レシーブ練習では部活と同じ位思い切り打ってやって」
そして自らネットの側に立ち遥に向かって、
「それで私にレシーブしてね」
と笑顔で言った。この事が何を意味するのかと言うと遥が捕れない様にキツク打ってきてレシーブ出来なかったら馬鹿にしたり、もしくは態とボールを当てて楽しんだり、下着姿で床に這いつくばったりするのを鑑賞しようとしているのは解っていた。

小夜子が遥を下着姿にしたのは遥に恥をかかせた上に鑑賞するためだけでは無かった。そうすることで逃げられなくなるからという理由もあった。遥がこのグループの囲いを破って制服を手に取って逃げたとしても着ている時間がない、まさか下着姿のまま人前には出られないだろうと踏んでいたからだった。
更に真由羅に遥の制服を見張らせていた。但し真由羅には遥が脱いだ状態のままにして手を触れるなと指示をしていた。綺麗に脱いだにしても脱ぎ捨てられた制服が床に散乱していたら、遥の視界にそれが入る度に羞恥心や恥辱心、屈辱心を擽ると思ったからだった───。

早速始まった。遥に対して容赦無いスタンディングでのスパイク攻撃───。ここでいいようにやられてしまっては小夜子の思う坪なので何とか返してやろうと頑張ったが、幾等運動神経が良いと言っても専門の人間が打つスパイクを受けきれる筈はなく、何本かは小夜子の方に返るものの、殆んどは返らずその度に小夜子から嫌味を言われ、グループのメンバーには笑われた。

遥に疲れが出てきた所に強烈な1球が飛んで来た。遥は何とか避けようとしたものの避けきれずボールが側頭部に直撃した。遥は崩れ落ちる様に尻餅をつき、そのまま後ろに勢い良く倒れた。

ゴツッ……!

床に頭をぶつけ動かなくなった───。その音は離れて制服を見張っていた真由羅の耳にも入った。真由羅は遥の散乱している服の横に座って見張っていたが、立ち上がって心配そうにその方向を見た。グループのメンバーが遥を取り囲んでいた為良く見えなかったが、紺の靴下に白い体育館履きを履いた遥の左足だけは見えていた───。

遥は大の字になって気を失っていた。顔は横を向き、ボブカットの髪が掛っていたので口が少し開いてる以外表情は判らなかった。一方で体の方はピク……ピク……と痙攣していた。
「エッロいなーコイツ」
「痙攣なんて初めて見たよ」
とか
「ちょっと……でもコイツ、動かないよ」
「死んだらヤバくない?」
「何を今更言ってるんだよ。コイツが悪いんだからさ」
グループのメンバーは勝手な事を言い合いながら下着姿で大の字そして痙攣というイヤらしい格好を晒した遥の写真や動画を撮っていた。
薄ピンクの色に可愛い模様が入っているブラジャーに優しく包まれた形の良い弾力ある乳房、綺麗でありながらもスポーツで鍛えている感じの腕、引き締まった腹、メリハリのある腰のくびれが普段から体に気を使っている事が伺えた。下半身に彩を与えるブラジャーとセットのパンティを穿いていた───Tバックの様に尻を見せすぎたりブルマの様に逆に覆いすぎたりせずに、適度に覆う事で自己主張して更に可愛い模様がお洒落を演出していた───。そのパンティから出てるスラッとしながらも適度な太さを持つ足は、運動神経に象徴していた。そして頭から足まで汗がコロコロと水玉をつくっていた。
そんな遥をみんなで面白がって写真を撮っていった。
「これでパンツ濡れてたらメッチャヤバくなかった〜?キャハ」
メンバーの一人が言うともう一人が、
「そんな女居たら相当なマゾじゃん」
と言いながら気になったのか、両足の間にしゃがみ、遥の股間を観察した。しかし彼女が期待する様な愛液の染みは無かった。
「まあそれも、機会があったらやりますけどね」
小夜子はグループに背を向けて誰にも聞こえない声で呟き、遥の制服を見張っていた真由羅の方をチラッと見た。それからグループの方へ向き直り、倒れている遥の横に立ち軽く蹴飛ばした。遥はビクッと一回大きく痙攣し、その後痙攣は治まり、呼吸に合わせて胸が上下するだけだった。
小夜子は下着姿で大の字になっている遥を台の上に置いて鑑賞するのも悪くないと思った。着せ替え人形の様に毎日下着を交換してやり世話をするのだ。
自分より大柄な遥を可愛いと形容するのはおかしいが、小夜子は遥が可愛いという事は認めていた。だからこそ自分に二度と逆らう事は勿論その様なそぶりさえ見せる事が出来ない様にしておく必要があった、自分の思い通りに動かす為に。それこそ、小夜子さんが望むなら私を下着姿で展示して下さい、と自分の口から言わせる位に───。
「帰るわよ───青山は起きそうに無いし無意味だわ」
と指示した。するとメンバーの一人が、
「このまま青山を放置して?誰かに見付かったら……」
と言った。すると小夜子は、
「安心して。介抱は真由羅に任せるわ」
と言い、真由羅を呼んだ。真由羅に指示した内容は、遥の目を覚まさせろ、ということだった。目を覚まさなければ救急車を呼んでも構わないと───。小夜子はそう言ってグループのメンバーを引き連れて帰ってしまった。

体育館に残されたのは下着姿で大の字になっている遥と遥の制服を見張っていた真由羅、そして遥の制服だけで、バレーボールで使った道具などはそのままだった。今誰かが体育館に入ってきたら異様な風景にゾッとするだろう。
真由羅は小夜子達が見えなくなった事を確認すると遥の横に座り、
「ごめんね……こんな事になって……でも私は……」
とうつ向いて呟いた。それから遥の後頭部に手をやると、床にぶつけたと思われる所はコブが出来ていたので少し安心した。遥の呼吸も落ち着いて来ていてまるで眠っている様だった。
しかし、一回起きて貰わないと生きてはいるが意識不明の重体が続いてる状態で安心出来なかったので軽く頬を叩いた後はあまり頭を叩くと良くないだろうから腕や足、腰をペシペシと叩いた。すると、
「……うっ……、痛っ……」
と遥は声を出し、両手で頭を押さえて横向きになった。真由羅は遥が意識を取り戻したのを見てホッと一息ついた。そして上半身をゆっくり起こした遥に制服を持って来た。
「病院……行く?頭打ってるでしょ」
真由羅は聞いた。遥は左手は床について右手で頭を押さえながら、
「行った方が……いいかも。クラクラする……」
と答えた。すると真由羅は遥から顔をそらして、
「でも───聞かれたら、バレーボールの練習してたらポールにぶつかったとか、言ってね」
と言った。要は本当の事は言うなという脅しだった。遥は、
「そう……」
と言った。真由羅は遥に背中を向けて、
「みんな青山さんが気を失ってた時、面白がって写真撮ってた。もし変な事を言おうものなら裏サイトにばら蒔く……って」
と感情の篭っていない声で言った。ここだけはまるで自分の意思ではなく言わされている感じがした。
遥は床に目をやり、
「そう……」
ともう一度繰り返した。完全にいじめグループにターゲットにされてしまいもう逃げられない事を思い知らされ、何も考えたくなくなった。
「片付けないと───」
遥はゆっくりと立ち上がり、右手の人指し指でパンティを直した。そしてフラフラしながらネットを外し、ポールを床から抜いた。本当は直ぐにでも病院に行きたい位だったが、片付けて置かなかったら小夜子に後で何を言われるか、何をされるか分からなかったので片付けを優先した。すると、
「片付けは私がやるから……、青山さんは服着て休んでて」
と真由羅が遥の制服を持って来て言った。見るときちんと畳んであった。遥はそれを見てやっぱり真由羅はきちんとした人なんだと再認識した。しかしどうして小夜子やグループのメンバーとは性格が一致しない真由羅がグループにいるのだろうか。
今の自分の様に何か弱味でも握られているのだろうか?

体操服を返してくれたのは真由羅だったが、それ以外いじめ行為に絡んでいない。今回だって単なる見張り役だった。いや、今でも見張っているのだろう。真由羅は片付けは自分がやる、と言ったがお言葉に甘えて任せてしまってはそれが小夜子に伝わって後で何をされるか───。
こんなマイナス思考しか出来ない今の状態を遥は悔しく思った。両手で顔を隠すように覆い、ポールに額をつけて声を殺して短く泣いた後、
「服、ありがとう。でも片付けは私がやるよ」
と言って真由羅の申し出を断った。制服を受け取ると直ぐに着て、それから全ての道具を片付けて病院に行った。その時も真由羅はついてきたが見張られている事を不快に思いながらも邪険にはしなかった。


その後も事ある毎に小夜子グループのいじめは続いた。遥が運動神経が良い事をネタに普段はそんなそぶりさえ見せず、放課後や夜に呼び出して体育の補習という名目でやっていた。勿論、来なければ下着姿の写真を裏サイトにばら蒔く、と脅した上で───。
遥を下着姿にした上でグラウンドのハンドボールのコートでキーパーをやらせて、シュート練習ということでボールをバンバンぶつけた。遥が倒れたら無理矢理起こして更に続けた。更に、遥が反抗的な目付きをしたり、可愛い下着を砂で汚したりしたら小夜子が自ら平手打ちをしたりして、倒れるまで続けさせた。そして倒れたら記念撮影と言わんばかりに砂まみれになって大の字になった下着姿の遥を撮影していた。
更に酷いのはまだ4月で寒いのに、その中で夏日と暑くなった日の夜にプールに呼び出した。シーズン前で洗っていない為に苔や藻が繁殖して緑色の水になっていたがその中で泳がせたりもした。
そして身体中苔まみれになった下着姿の遥を写真に撮って笑い物にした───。その後遥はそれが原因で風邪をひき、更にこじらせて肺炎になりかけたが何とか回復すると学校に来た───。



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