■ 第二章 教室で…… 1
僕はぼんやりしていた。
目の前のやかんは、普通のボロいやかんに見えた。
僕は“セックスが話すことと同じくらい気軽にできる世界”を悪魔に願った。それって、現実だったのだろうか?
でも、ティッシュ十箱と券四枚はちゃんとある。しかも、ご丁寧にカーボン紙で契約内容が写った『ご契約控』まで落ちていた。
「おい、まさる、早く行かないと」
すすむが言った。
「まだ十一時過ぎだろう。今教室行っても入れないじゃん」
僕たちが普段使っている教室は、この時は僕らが選択していない授業をやっていた。
「今日は健康診断だろう……そういえばお前パン食べてたな。忘れてたのか?」
「……忘れてた」
今日は大学の健康診断だった。前日の夜八時以降は水とお茶以外口に入れてはいけないのだった。
健康診断は午前中に行かねばならなかった。僕は、三分で顔を洗ってひげを剃って歯を磨き、すすむと共にアパートを出た。
大学の門までは、歩いて十分。僕はきょろきょろとあたりを見回した。
街並みは……別に昨日までと変わりない。当たり前か。
「おい、見ろよ」
すすむが前から歩いてくる、白いTシャツに短めのスカートの女の子をこっそり指して小声で言った。
「あの子ノーブラじゃないか?」
僕は気づかれないようにその子を見た。昨日までは、ああいう真っ白なTシャツの後姿にはブラジャーの線が透けて見えて、よく興奮したものだった。
しかしその子の白いTシャツの下には、二つの突起−乳首!!−がはっきり見えた。
そのうち、大学のひとつの門にさしかかった。僕たちは大学の塀に沿って、健康診断をやっている保健センターに近い門に向かって歩いていた。
目の前を自転車に乗った女の子が通りかかってその門に入っていった。その子は上半身はごく普通のブラウスを着ているが、その下は……ピンク色の、まわりにたくさんひだがついた、パンティー一枚だけをはいていた……
歩いているうちに通常の状態になっていた棒が、大きくなっていくのを感じた。
しかし、僕らはこんなことに興奮していたことがすぐにバカらしくなる。
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