2011.04.26.

梨華子と亜矢子
002
百合ひろし



■ 第一章 劣情2

「梨華子―――どうしたの?最近おかしいよ」
亜矢子は一緒に帰りながら聞いた。梨華子は最初は隠していた。こんな事言える筈が無かった。この日は亜矢子は薄いピンクのブラジャーをしているがそれを外してみたいだなんて―――。
亜矢子は暫く聞いたりなだめたりしたが梨華子が話す気配が無かったのでツインテールを翻して、
「梨華子はいつから私に隠し事をするようになったの?」
と声を震わせながら聞いた。梨華子はハッとした。そして、
「亜矢子……ゴメン。体育祭の種目決めの日から―――」
と答えた。亜矢子はそれを聞いて、
「随分長いね……。私の事信じられなくなったの?もしそうなら何で信じられないのか教えてよ」
と言った。梨華子は、
「そんな事無い……」
と答えた。亜矢子は更に、
「なら何で言えないの?」
と向き直って梨華子の肩を掴んで握った。力が強い―――、痛かった。亜矢子の手は震えてた。
「亜矢子……痛い、痛いよ」
梨華子は苦しそうに言った。亜矢子は、
「なら言って。言わないと絶交する」
と言葉にも力を込めた。梨華子は、
「先に―――離して……。言いたくても痛くて―――」
と言った。亜矢子は梨華子の肩から手を離した。すると梨華子はボブカットの髪で顔が隠れる程下を向き、
「今ここでは言えない事だから、今晩うちに来て……今日は私以外は居ないから」
と言った。亜矢子は、
「分かったよ……行く。聞かせてもらうよ」
と言った。梨華子は、
「一番気に入ってる下着を着けて来て……」
と言った。亜矢子は、
「?」
と不思議に思った。一体下着と梨華子の悩みと何の関係があるのだろうか―――と。
「言わなきゃ絶交って亜矢子は言ったけど聞いても絶交しない自信ある?」
梨華子は下を向いたまま握った拳を震わせて言った。亜矢子は、
「どうして……?」
と聞いた。梨華子は、
「それ位の事で悩んでいたのに言わなきゃ絶交なんて軽々しく言わないで」
大声では無かったが力の込もった声で梨華子は言って亜矢子の前から走り去った。亜矢子は追い掛けようとしたが諦め、
「絶交するわけ―――無いじゃん……」
と呟き、暫くその場を動かなかった。
兎に角言われた通り、気に入った下着を身に付けて行くしか無かった。


亜矢子はマンションに帰るなりシャワーを浴びて汗を流した。そして髪を乾かしてから部屋に戻ると梨華子に言われた通り、今一番好きな下着―――、白に近い水色のブラジャーと同じ色のパンツ、いや、もう前にリボンが付いてたりする大人用のパンツ、パンティだった―――を身に付けた。その上に黒のポロシャツを着てジャケットをはおった。そして下はまだフリルの付いたミニスカートは可愛すぎて抵抗があったのか持っていなかった。その代わり赤のチェックのミニスカートを穿いた。そして靴下はピンクに赤いボンボンの付いた可愛いものを選び、最後に髪をツインテールにまとめた。そして机に向かい宿題をしながら夜を待った。

一方梨華子は気分が晴れず、宿題も半分位しか手に付かなかった。やらなきゃ、と思いながらも途中で手が止まってしまう。
しかし、今日は亜矢子が来る―――。やらないわけにはいかないと思い、歯を食い縛った。
「言わないと絶交する」
亜矢子の言葉を思い出した。どうせ言わなかったら絶交だ―――。亜矢子が本当に絶交出来ると思うかと聞かれれば梨華子は出来ないと思う、と答えるが、この際どちらにしろどう話を切り出すべきか悩んでいたのだから思い切りぶつけてやろうと思った。その結果軽蔑されても構わない―――。
この間の小テストは亜矢子に完敗だった。気持ちの整理が付いたらその事が悔しく思えるようになって来た。宿題の残りを終わらせて風呂に入り食事をした。それから夜を待った―――。


梨華子がテーブルに掛けて本を読んでいると玄関のチャイムが鳴った。梨華子が出ると立っていたのは亜矢子だった。
「言われた通り、気に入ったのにしてきたよ」
亜矢子は言った。梨華子は、
「うん。私も―――。じゃ、上がって」
と答えて亜矢子を上げ、部屋に案内した。亜矢子が部屋に入るとドアを閉めて、
「好きなだけ暴れられるから安心して」
と笑顔で言った。亜矢子は、
「暴れる?どういう事?」
と聞いた。好きな下着と注文した次は好きなだけ暴れられるとは全く持って意味不明だった―――。梨華子はそれを聞いてから、
「話すよ。覚悟して聞いてね―――」
と先ず釘をさした。亜矢子は覚悟というまたこの場で使う意味が分からない単語が出てきたので、
「う、うん」
と、もう生返事してしまうより無かった。


梨華子は先ずは去年の騎馬戦の話をした。梨華子が亜矢子をねじ伏せた形になった事だ。亜矢子は、
「勝ちたかった―――。運が無かったけどそれも含めての勝負だから」
と少し悔しそうに言ってから笑った。梨華子は、
「私も勝ったから言う訳じゃ無いけど亜矢子とやれて良かったと思うよ」
とボブカットの髪を少し気にして後ろにやった。そして、
「馬は無いけど……も……もう一度やりたいと……思ったんだ……」
と、突然言葉を詰まらせた。そして亜矢子から顔をそらし、ペットボトルの水を含んだ。そして気持ちを落ち着けた。亜矢子は、
「うん、ならやろうよ。ハチマキなら100均にあるし」
と言った。しかしフに落ちない。たったこれだけの事を言うのに一見繋がりのない訳分からない要求をしたり覚悟を求めたりはしない筈である―――。
「ううん、鉢巻きは要らない。何故なら―――」
梨華子は顔から火が出そうな程恥ずかしい気持ちになり、左手で顔を押さえながら右手は最初に亜矢子の顔を指差し、少しずつその指は下がっていった。
梨華子は口からさっき食べたものを全部吐き出したい気持ちになった。心臓はドクドクと気色悪い鼓動を打ち、そして呼吸は浅く早くなった。
梨華子の指は亜矢子の胸で止まり、カタカタと震えていた―――。
「その下に着けてるブラ……ブラジャーを取り……合うから」
梨華子はそう言うと膝から崩れ落ちた。亜矢子は、
「り、梨華子」
と言って梨華子を抱き止めた。梨華子は、
「こんな事ずっと思ってた―――。亜矢子のブラジャー外したい……って。変態だよね……」
と言うと、亜矢子は、
「いいよ―――」
と答えた。梨華子は、
「軽蔑―――しない……の?」
と聞いた。亜矢子は、
「梨華子に謝りたい。確かにこんな悩み言えないよ……。絶交なんて軽々しく言ってごめんなさい……軽蔑なんかしない―――」
亜矢子は頭を下げた。梨華子は気持ちが落ち着いてきて、謝る亜矢子に、
「ううん、亜矢子は正しいよ。信用してないと思われたら―――私も辛いよ」
と言った。それから二人に笑顔が戻った―――。

とりあえず体が落ち着いたらやろうという事になったので、二人ベッドに並んで座り、水を飲んだ。
「でも何で騎馬戦?馬無いけど」
亜矢子は聞いた。梨華子は、
「最初は亜矢子のブラが透けて見えてたのを外したくなったんだけど……」
と顔を赤らめて言った。亜矢子は、
「ホック外し居たしね―――気持ちは解るよ」
と顔を赤くして視線をそらして言った。梨華子は、
「私が一方的にやると不公平だからどうしようと思ってたら、騎馬戦の説明があって―――」
と話した。これで全てが繋がった。気に入った下着はそれぞれ見せ合って更にはそれを取ること。暴れるはその為に騎馬戦の騎手の如く戦うから。覚悟とはそんなカミングアウトだからである―――。

「じゃ、始めてみようか」
そう言って亜矢子は立ち上がるとジャケットを脱いで続いてポロシャツも脱いだ。そして、スカートも脱いだ。
「スカートは……」
梨華子が言うと亜矢子は恥ずかしそうに、
「折角そこまでやるんだから下―――パンツ……も見せるよ」
と言って足からスカートを抜き取り、服の上に置いた。亜矢子の体は胸はCカップともう充分にあるが、全体的に線が細く、まだ大人の体型になりきって居なかった―――。
梨華子は亜矢子が脱いだのを見て、ブラウスとミニスカートを脱いでベッドに乗せた。亜矢子が薄い水色なら梨華子は薄い黄色だった。白でも良かったが、この日は色付きにしたかった―――。梨華子も亜矢子同様の体型をしていた。
背丈、成績、性格、体型、運動神経―――どれを取っても近い二人は双子みたいと言われていた。唯一違うのが顔付きと髪の長さで決まる髪型だった―――。


「じゃ、しゃがんで。説明するよ」
梨華子がルールを説明した。
「しゃがんだ状態でやること。尻を上げたら反則で崩れて倒れたら待て。で、ブラジャー取られたら負けね」
「質問」
亜矢子が手を上げた。梨華子は、
「何?」
と言うと亜矢子は肩のストラップに指を掛けて、
「紐で肩に掛ってるし、ホックもあるから完全に取るの難しくない?」
と聞いた。梨華子は、
「そうだね……」
と言って顎に指を当てて少し考えてから、
「こうしよう。ホック外すか左右両方胸をはだけさせたら勝ち。はだける条件は……乳首が……見えたら……で」
と言った後目線をそらし、
「―――で、負けた方は自分でブラを除けて目の前に置く……事」
と言った。この間二人とも顔が真っ赤だった―――。凄く真面目にやってる事が却って嫌らしく感じたからだった―――。亜矢子も梨華子から視線を逸らした。梨華子は静かに、
「あのアラームが鳴ったら……始めよう……」
と言った。亜矢子はそれを聞いて静かに頷いた。


ピッ……ピピピピピッ
アラームが鳴った。梨華子と亜矢子は尻をついた状態で組み合い、お互いのブラジャーを取ろうと闘いを始めた。梨華子も亜矢子も運動部には入っていないが近所のクラブで体を動かしていた関係で運動が得意になっていたと言う事だった。その二人が今組み合っているが、そうやって運動して来た為、普通の女子と比べて力も強かった。
「イタっ!」
亜矢子の肘が誤って梨華子のこめかみに入った。梨華子はその時態と倒れた―――それは先程ルールを説明した"倒れたら待て"ということで、つまり亜矢子の攻撃を一回切る為である。
「ごめん」
亜矢子は軽く謝って攻撃を止め、ポジションに戻り、梨華子は頷いた。そして再開―――。二人は息を切らせながら必死になってこんな闘いをしていた。くだらないしイヤらしい―――でも二人はそう思いながらも梨華子は溢れ出て来た悶々とした気持ちを晴らす為に、亜矢子はそんな梨華子を理解する為に闘ったが、梨華子に対して負けたくないのと、手を抜く事は失礼だと思っているので全力だった。その為思っていた以上に長引いた。
こんな闘いであるが、やってみると意外と頭を使う―――。まず考えるのは背中のホックを守る事だが、そればかり考えていると前を守るのと攻めるのは腕一本だけ。つまり相手が両手を使って攻めて来たら長い時間は守り切れず、負ける事になる。一方両手で攻めれば背中のホックを外される危険がある。となると、状況に応じて自分の体勢を決めないといけないのである。
少しこう着状態になって来た。二人とも左手を後ろに回し、ホックを守っている。そして右手で攻めたり乱されたブラジャーを直したりしていた。
そして意外な所で決着が着いた。亜矢子が手を伸ばしてきた時に梨華子は少しだけ体を傾けて避けた―――。すると亜矢子はバランスを崩し、ホックを守っていた左手を床についてしまった。その隙を梨華子は逃さず、素早く亜矢子の左脇から右腕をスッと入れ、亜矢子のブラジャーのホックに手を掛けた。亜矢子が左手で梨華子の手を退けようとしたが適わず、右手も後ろに回して離させようとしたが、ホックをがっちり掴んでいる梨華子の手はどうにも出来なかった。
プツン
と少し鈍い音がすると、亜矢子は諦めて両腕を下ろし息をついた。
「ルール通り、自分で外すね……」
亜矢子はそう言って負けを認めた。梨華子は攻撃を止め、手を引いた。亜矢子はストラップを肩から抜き取り、そしてブラジャーを自分の胸から退けて目の前に置いた。パンティ一枚姿で乳房が露になった。しかし亜矢子は隠そうとせず、手はだらんと下げたままだった。
「すっきりした?梨華子。でも態と負けた訳じゃないよ。負けたから……悔しいよ」
亜矢子は顔を赤らめながらそう言った。梨華子は、
「有難う亜矢子」
と言って亜矢子を抱き締めた。自分の悩みを聞いてくれて、それだけで無く軽蔑もせずにきちんと勝負してくれた。梨華子にとって本当に嬉しかった―――。
「もう大丈夫だよね?」
亜矢子は聞いた。梨華子は亜矢子から離れて、
「大丈夫。成績も戻すよ」
と答えた。亜矢子は目の前に置いたブラジャーを拾い、身に着けた。そして、
「どんな悩みでも相談しあえるのが親友なんだから……。お願いだから一人で抱え込まないでね」
と言うと梨華子は、
「うん……ごめんね、心配かけて」
と謝った。

これで梨華子の人には言えない悩みは解消された。しかし、これは本人は一時的なものの心算でいたのだが、そうは行かなかった―――。



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