2010.08.22.

セレブ欲情調教
21
影山有在義



■ 餌食1

金木犀の香りも終わりに近づいてきた。
のり佳は、庭で朝顔の種を収穫し、残りのつるや根を始末していた。
春に植えた種は、初夏から花をつけ始め秋にかけて次々と咲いた。
朝の清清しい空気の中で軟らかな花をつけるが、日差しを受けるとたちどころに、萎れてしまう。
しかし、次の日には、何事も無かったように、新たな花をかならず咲かせた。

のり佳は、朝顔を片づけながら、夏の終わりを感じていた。そして、暑かった今年の夏に起こった忌まわしい出来事を思いだし、この朝顔の残骸と共に捨てられたらどんなに幸せだろうと考えていた。

「奥さま」
突然の呼びかけで、のり佳はあたりがすっかり暗くなっていることに気がついた。
秋の夕べは、あっという間に暗くなって行く。
のり佳の前に横を向いたままの源蔵が立っていた。
「今度の土曜日の午後に私の小屋でお待ちしています」
源蔵は、ぼそぼそと横を向いたまま、こちらを見ずに話しをした。今度の土曜日は、夫は、泊りがけのゴルフに出かけ、帰ってくるのは日曜日の夜の予定だ。
使用人達も土曜から全員休みを取らせている。
夫も誰も居なくなった日に、のり佳を一日かけて、嬲り尽くす気でいるのか。
のり佳は、心臓をキュッと握られる恐怖を感じながらも、もう引き下がるものかという怒りがわいてきた。

「源蔵、もう、これっきりにしてください。これ以上、わたくしを辱めるのなら、すべてを旦那様に告白する覚悟です。あなたのおもちゃにされるのは、もう沢山です」
 のり佳は、凛として言い放った。
暗がりに源蔵の横顔のシュルエットが見える。だが、その表情を窺い知ることは、できない。
冷たい風が吹き抜けた。

のり佳は、拳を握りしめ、源蔵の返答を待った。
「よろしいでしょう」
源蔵は、歩きだした。
数歩してから、歩みを止めて、言った。
「では、土曜日お待ちしています」
 のり佳は、その姿が消えるまで見つめていた。
体からわなわなと力が抜けて行くのを感じた。

 その日の朝、のり佳の心は、むしろ晴れ晴れとしていた。
源蔵が、のり佳の申し出をあっけなく呑み、今日さえ我慢して乗り切れば、源蔵との事は無かったこととなる。
源蔵が約束を違えた場合は、最初に考えた通りに、夫にすべてを告白し警察に届をだすつもりだ。
のり佳は、昼食を摂った後、軽くシャワーを浴びていた。相手が源蔵といえ、体臭を残した体を触られるのは嫌だった。

シャワーを体に当てたとき、ふいにかつて、このシャワールームで源蔵に貫かれたことを思い出した。
バスタブの淵に足をかけた格好で尻から刺し貫かれたことを。
たしか、あの時が始めて源蔵と繋がったときだった。

のり佳の体の血が熱くなってきた。
乳首が固く勃った。バギナが蠢いている。
思わず、手が股間にのびる。
源蔵にされた様に、シャワーの放射水を開いた股間に直接当てたい欲求にかられた。
 何と言うことだろう、私の体は。犯される前に欲情するなど。
 のり佳は、掌を下腹部にあてたまま、嵐が行きすぎるのをじっと堪えていた。

 誰も居ない屋敷だが、のり佳は、あたりを見まわしながらゆっくりと源蔵の作業小屋に向かって歩いた。
寝巻き代わりのスエットを着て、化粧もいっさいしていなかった。

すっかり秋が深まり、日差しはあるのに、ひんやりとした空気が、漂っていた。
作業小屋の前にやってきたが、誰もいる様子がない。
扉が閉ざされたままだ。
しばらく扉の前に佇んでいたが、思いきって引き戸に手をかけた。
何度か引っかかりながら、半分ほど開けることができた。

薄暗い小屋の中には誰もおらず、あの地下に続く床の一部が開けられていた。
かすかな明かりと共にもやのようなホコリが立ち上っていた。
のり佳は、入ってきた引き戸を閉めた。そして、地下へと続く穴の中を覗きこんだ。
梯子がななめに下りていて、部屋まで覗くことができない。

「自分で下りてくるのじゃ」
突然、源蔵の声がしてのり佳は、ビクリとした。
「天窓を忘れずにしめるのじゃぞ」
のり佳は、恐る恐る梯子を降り、片手で天窓の紐を引いた。
パタン と音を立てて天窓が閉まった。
梯子をゆっくりと下まで降りていった。

 あぐらをかいてた源蔵が、立ちあがった。
天井の梁についている滑車からロープが垂れ下がっているのを見て一瞬のり佳は、たじろいだ。が、下を向いた顔をさっと上げると、さっさとスエットを脱ぎ捨て裸になって横たわった。
背中の板がひやりとした。手を腹の上に軽く組、顔を横に向けた。

「随分と腹の据わったことだな」
節くれだった指が大きく張り出した胸をゆっくりと搾った。
源蔵は、のり佳をうつ伏せにし、後ろ手に手錠を架けた。
 手錠を架けられたとたん、のり佳の体が熱くもえはじめた。
固く目を閉じるが、今から行われるであろう淫責を待ち望んでいるかのようにバギナが充血しはじめるのを感じていた。
大きく盛り上がった尻を源蔵の大きな手が掴み揉んだ。
指が尻の割れ目から侵入し、アヌスをとらえた。

 あっ!

思わずのり佳がのけぞる。
ゆっくり楽しむように指の腹で小穴を撫でる。
「源蔵にいじくりまわされ、虐められるのがうれしいのであろう。どうじゃ!」

 くうっ!

のり佳は、白い咽をのけぞらして歯をくいしばった。
 滑車から延びたロープをとり、源蔵は、のり佳のキユッと締まった足首にゆわえつけた。
「ひっ、ひっ」
源蔵は、黄色い歯を剥き出してロープを引いた。源蔵がロープを引くたびにのり佳のすらりと伸びた足が広がって行く。
九十度まで広げたところで、ローップを柱に括りつけた。
横向きになった体で、剥き出しになってしまった股間を何とか隠そうと体を捩り、足を曲げたりするが無駄な徒労となった。
「何を今更恥らっているのじゃ。それ、汁が滲んでおるではないか、ほっ、ほっ、ほっ」

源蔵は、シェービングのハケを手にしていた。
ロープで吊った足首から腿に向かって、スーッと何度も毛先をはしらせた。
前にこの場所でハケで責められたことを体が思い出し、反応してしまう。
くぐもった声を漏らしながら海老の様に体をそらせた。

 その時、部屋の片隅の毛布の塊が叫びをあげ、暴れ始めた。
獣のような声をあげて、鎖に繋がれた義男が毛布の中から現れた。
 その様子を顔をねじまげて見たのり佳は、引きつった。
「いったい何!」

「我慢できずに出てきおって。しかたない」
義男は、毛布を振り払って立ちあがり、のり佳に襲いかかろうとするが、首輪の鎖に引張られ、体をがくん、がくんと棒立ちになっていた。
のり佳の姿に興奮し、目は血走り、涎が飛んでいた。

「いやっ、いやーっ!」
のり佳は、あまりのすさまじい勢いに恐怖でパニックに陥った。
「こやつの顔に見覚えがないかの」
意外なことばに、のり佳は、ハタと獣の顔を見た。
ガリガリに痩せた青白い顔を恐怖におびえながらも、覗きこんだ。
「よ、義男さん! どうして、そんな姿に」
「残念ながら、あの改造チンポは、切り落としました」
「!」
のり佳は、源蔵が何を言っているのか分からなかったが、改めて義男の姿を確認して股間から一物が消え、異様に大きく見える陰嚢が揺れているのを見て、その残酷な事態が理解できた。

「当初の予定では、一物のみを落とし、性欲の消えない獣となる予定であったが、気が狂っての。仕方が無いので指も落として、なめくじ男に変更したのじゃ。ほっ、ほっ、ほっ」
「よくもそんな残酷なことを」
「そんな他人事のようなことを言えるのも今のうちじゃ。こやつのできることは、ただひたすら舐める事とせいぜい指の無い掌で擦ることじゃ。だが、吐き出されることの無い性欲は、時間の観念を奪ってしまうのじゃ。つまり、延々と舐め続ける。男の味をしった女は、ある一定の愛撫を受けると男を受け入れ、達することを望む。ところが、いつまでも達することのできない状態が続くと、悶え続け、終いには発狂する。深い性欲を感じた女ほどその傾向は、強くなる。こやつには、今まで5人、商売女を与えたが、みな最後は、どっちが獣だか判らない程、狂ったわい。まっ、ワシがとどめをさしてやったがの」
「あなたは、なんとゆう人なんでしょう。獣は、あなたです!」
「相変わらずに強気なことだな。時間は、たっぷりあるでの。さっ、なめくじ男、奥さまを狂わしてやるのじゃ。おほっ、ほっ、ほっ」



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