■ 2
“いいわよね”
女の目は語りかけてきた。
俺はつばをごくりとのみこんだ。
それを合図に、女の細い指は俺の衣服にかかり、そのまま下に向かわせた。
跳ね上がる俺の…正直なオレ。
女のその白い指は、黒くごつごつするオレを包み込み、羽でなでるような感覚でゆっくりほぐしにかかった。
こうなるともう声が漏れてしまう。
俺のなさけない顔を女は上目遣いでうれしそうに眺めていた。そして、ゆっくりと、口をあけてきた…。
一瞬だったが、女の口の奥まで見えた。
赤くなめらかな長い舌。ピンク色の喉。
まるで●●●…。
つばたっぷりのそこ。
女は自分の指を使って、オレを誘導した。
…ああぁ……。
女の口は深かった。
吸盤のように吸い付く軟口蓋。
絶え間なく動き、執拗にからみつく舌。
女は恍惚の表情を浮かべていた。
ここで一回、俺は果てた。
ごくり…。
大げさといえばそれまでだが、女は喉をならして、白くにごったねばねばを飲み込んだようだった。
唇についたそれまでいとおしそうに舐めとり、飲み込んだ。
俺の黒い手が女の白く細いももにかかる。
そのままぐいと持ち上げると、そこには蜜をたたえた桃色の薔薇が一輪咲いていた。
俺はそのまま女を寝かせ、その桃色の薔薇に舌を這わせた。
ねっとりとして、しょっぱく、時々苦い。
ふと女の表情を確かめると、ますます頬を赤く染めていた。
つぷ…つぷ。
俺は何度か薔薇に接吻を繰り返したが、とうとう我慢できなくなり、俺はオレを女に差し込んだ。
にゅるり…
あぁ、この感覚…。
懐かしい…。
男子高校出身で、大学でも特に女性と関係をもつことをしていない俺。
セックスは実に8年と少しぶりだった。
あの時の…あの……
……。
ふと俺はすべてのことにつじつまが合うことに気づいた。
女を見ると、燃えるような赤い巻髪を左右に振ってよがっていた。
こいつ……まさか……
…ゴボリ。
その時ペニスに違和感を感じ、女と自分の境を見つけると、信じられないものがそこにあった。
女の愛液が……黒い……。
「あそびは終わりよ」
急に冷めた声がした。それは女のものだった。
美しい赤毛からは、何か実のようなものが無数についていた。
その実が何なのか、俺にはすぐにわかった。
「ずっと待っていたわ。8年間と88日。今日は貴方をここに呼び寄せたの。
それくらいのことは、私には簡単にできるわ。だって…」
女は自分の足元を見た。
女の足元は、いつの間にか透けてなくなっていた。
そうだ、やっぱりこいつは…。
信じたくなかった。
こいつは、俺の初めてのセックスの相手。
セージと俺と他の悪ガキどもが…
8年前に集団でコイツを犯ったんだ。
「…ということは…セージは…?」
震える声で俺が女に尋ねると、女はにっこりと笑って茂みの外を指さした。
「せ、セージ!!!!!」
俺はセージにかけよった。
体はあたたかく、まだ死んではいないようだが、俺がいくら体をさすっても、目をさましてくれはしなさそうだった。
「おい、せーじ、セージ!! セージ!!! セー…」
何度もセージの名を呼ぶうち、俺はとんでもないことに気づいてしまった。
セージの性器が…ない!!!!
裸で横たわるセージの股間に、性器はなかった。
まるで女のそれのようになめらかになってしまったセージの股間。
ということは、次は俺が…!?
恐怖に身震いすると、女は勝ち誇ったように笑いだした。
「もう遅いわよ。黒い愛液はペニスを溶かすんだから。あはははは!」
そういえばさっきから、興奮とはまた違った熱さをペニスに感じていたのだ。おそるおそる自分のブツに手をやると、それが普段より格段に小さくなっていたのがわかった。
「あああああああああああああぁあああ!!!」
暗い海岸に響いたのは、タクヤの叫び声。
だが、それもまたすぐに潮風にかき消された。
明け方、海辺にあったのは、ひからびた蛸の死骸と、それを首にまとった一個の死体。
蛸の死骸は、心なしか泣いているように見えた。
おわり
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