■ 奸計の章2
「柴田さん……喜んで下さい! なんとかごまかして養子縁組が出来そうです……明日戸籍謄本と印鑑を持って市の福祉課まで来て頂けませんか」
電話の奥で園長の高ぶった声がキンキン響く。
「よーし! よーやった……でっ……やばい話にはならんだろうな!」
「おまかせ下さい……ついてはあなたの身元、家族構成等をこちらで作っておきましたので後でFAXします……よく暗記しておいて下さいね、……それで…………女のことも借金も全て無かった事にしていただけるんですよね……」
「まー全部うまくいったらな……おれは嘘はいわんから安心せーや」
バス停に清楚な中学生が佇んでいる、秋風にフルフルと長い睫毛が揺れ……栗色の細く柔らかな髪がなびく。
少女は白いオーラに包まれている……セーラー服の前はふっくらと萌えスカートからはミルクを溶かし込んだような真っ白な脚が光り濃紺のスカートに映える。
バス停に1台のベンツが近づく、ブレーキランプが点り緩やかに停まっていく、そしてウィンドが開けられた。
「聡美だね……柴田です、さー乗って」
少女は一瞬躊躇し戸惑う素振りを見せたが……ベンチに置いた大きなバックを握り締め、車の助手席を開けた。
「柴田さんですね?……聡美と申します、どうぞよろしく御願いいたします」
「あー……挨拶は後でいい、いまトランクを開けるからその荷物を早く入れなさい」
少女は開けられたトランクにバックを置いて閉め、助手席側に回り込んで男の横に乗り込んだ。
「聡美ちゃんだね……柴田です、あーやっぱり可愛い子だ、今日は学園に行って挨拶してから君を迎えるつもりだったが……忙しくてごめん、園長さんおじさんのことを何にか言ってた?」
「柴田さんは多忙な人だからご迷惑にならないようバス停まで出てお迎えしなさいと、それからすごく優しい人だから安心しなさいって……」
「そっか……優しい人か……」
「おじさん……こんな私でいいんでしょうか……」
「こんな私って……どういうこと?」
「私……中学生なんです……こんなに大きくなってから養子に望まれるなんて……」
「いやね……実は今年の初めに君を街で見かけて……あまり可愛いから私から園長さんに是非にと頼んだんだよ」
「本当は君がもう少し大きかったらお嫁さんに欲しいところだが……まっ……」
「おじさんには奥さんはいないのですか……」
「いないよ……」
(やっぱり……美智姉さんの言ってたとおり)
自分を養子に欲しがっている人がいると聞いたのは夏の初めだった、すごいお金持ちでいい人だから一度考えてみてくれるかなと園長先生に言われた。
友愛学園では今まで幾人の子が養子に貰われていった、しかしたいていは小学校にも上がっていない幼子ばかりで……聡美のように中学に通うような子は皆無だった……。
同部屋の中学3年の美智が、「聡美……どうせそんなオヤジ……ロリコンのエロ爺よ!、やめなさい、どんな目に遭わされるかしれたもんじゃないよ!」と言った。
「園長もわかったもんじゃないよ!、なんかエロイ噂も有るみたいだし、それとタケシが言ってたけど……この前の日曜にやくざ風の奴らが園長室に借金取りに押しかけてたみたいよ」
「フン……園長の奴……どうせ借金で首が回らなくなって……あんたを売る気なんだよ、あんた綺麗だからねー」
「姉さん……そんな風に言ったら……園長先生に悪いよ、私のこと想って養子の話を探してくれたんだから」
「あんたは本当にオボコイねー、中学生にもなったあんたを欲しいなんて奴……どう考えてみてもおかしいと思わないの! まっ養子に行くのはあんたの勝手だけど……でもこれだけはいっとくよ、あんたを欲しいっていう奴……絶対あんたの体目当てだから……でも……こんなとこにいるよりは…………」
「エロオヤジに抱かれても……豪勢な暮らしが出来……学校も行かせて貰えれば……体なんかどんなに汚れようが洗えばわかんないもんね……あんた本当に綺麗に生まれてよかったねー……私なんか……来年から町工場の女工だよ……」
美智は寂しく窓の外を見つめた。
聡美は美智姉さんの言うことが間違いとは思わなかった、中学生にもなる私なんかを貰いたいなんてやっぱりおかしいと感じた、でも……今までお世話になった友愛学園のために自分が役に立てればそれでもいいとこの時は思った。
会話は途切れた……武雄は車内に漂う少女の甘い香りに魅了され妄想に耽っていたのだ。
助手席に座る清楚な少女……愁いに満ちた顔で通り過ぎる銀杏並木を見つめている、武雄は夢見心地でハンドルを握り、これからのことを思うと自然に前方の視野が白くぼけてくる。
(こんなに簡単に行くとは思わなかった……しかもロハで……クククク……しかし半年は長かったナー……)
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