突いて、跳んで、切って、すり足。 滝川は無言で機体を動かしていた。口を開きもせず、通信に反応を返すこともなく、ただ黙々と幻獣を倒す。 切って、刃を返して、移動して、突く。 幻獣はあっという間に次々消えていく。滝川の手によって、攻撃する間もなく、避けることもできず。 移動して、突いて、返して、移動して、切って―― 『そう、そうやってやればいいんだよ』 ふいに滝川の脳裏に声が響いた。 滝川は答えない。無言で機体を動かす。 『答えてくれないのかい? 寂しいな。私はいつも、君のそばで見守っているというのに』 滝川は答えない。 跳んで、突いて、返して、移動。 『君には見えているんだろう? 感じているんだろう? 戦いながら、幻獣のゆめを見ているんだろう?』 滝川はやはり答えない。 移動して、突く。 『嫌だ死にたくない逃げ出したいなんで俺がなんで俺がなんでなんでなんで』 ずぶりという感触と共に、感情が伝わってくる。 幻獣たちは、今の滝川には赤い丸に見えた。殺されるのを待っている、殺されると感情を発する赤い丸。 笑い声が聞こえた。 『君はそれでも戦うんだね。今の君をなんと呼べばいいんだろう? 君はもはや人でない。人ではない君は、一体なんなんだろうね?』 滝川はそれでも答えない。 跳んで、切って、突いて、返して―― 『俺は――』 心の中でひとりごちる。 『俺は、ただの人殺しだよ』 |