速水「さーていよいよ二回戦に突入ですっ! 一回戦を突破した強者たち、彼らは二回戦でどんな戦いを見せてくれるのでしょうかっ!? 二回戦第一試合は緋勇龍斗選手VSセオ・レイリンバートル選手でーすっ!」
舞「ふむ、好カードだな。まだセオは本格的なレベル上げには入っていないゆえ、実力的には龍斗有利というところだろうが」
マスター「場数でもモチベーションでも龍斗が上だ。俺は龍斗有利に一票だな」
トロデ「うぅむ、じゃがセオもけして弱いわけではない。本気になったセオの力は、このサイトの中でも有数じゃぞ」
マスター「その『本気になる』までが大変だろ、セオの場合?」
トロデ「……うぅむ」


速水「二回戦第一試合……スタートですっ!」
セオ「…………(おどおど)」
龍斗「……やれやれ。小動物をいじめるみたいでいい気分はしないな」
セオ「あ、あのっ、でも、これは試合ですからっ、どうか、あの、本気で……」
龍斗「もちろん。試合でわざわざ手加減する趣味は俺にはないからな」
セオ「ご、ごめんなさい……俺なんかが、おこがましいですよね……」
龍斗「いやいや」
フォルデ「コラてめぇなにやってやがんだセオっ! 試合前に敵とくっちゃべってんじゃねぇっ!」
風祭「たんたんてめぇッ、敵と馴れ馴れしくしやがってふざけてんのかッ! とっとと戦ってぶっ倒しやがれッ!」
セオ「ご、ごめんな、さいっ」
龍斗「はいはい。……まぁ、俺の相方がああ言ってるんで……」
皆守「あー、だりィ……始め」
 カーン!
龍斗「できるだけ早く決めるとするか!」
 ごぉぉぉぉっ!
速水「おーっと龍斗選手、いきなりの大技っ! 秘拳・黄龍っ! 猛烈な気の奔流がセオ選手に向かい襲い掛かるーっ!」
セオ「……っあっ!」
 ずがっ!
速水「セオ選手必死に避けるが間に合わないーっ! 気の流れに飲み込まれて吹き飛ぶー!」
龍斗「爆流絶・序……そして破!」
 ずどぉんっ!
速水「吹き飛んだところに秘拳・青龍っ! 強烈な蹴り技にセオ選手さらに吹き飛ぶーっ!」
セオ「……ぐ」
ロン「いかんっ! このままではとどめの一撃をもろに食らうぞ!」
フォルデ「……っのやろっ、ざけんじゃねぇこんなとこであっさり負けやがったらぶっ殺すぞっ!」
龍斗「爆流絶……急!」
 ずごどぉっ!
速水「必殺の大技、大鳳が炸裂ーっ! 強烈な遠距離攻撃をセオ選手もろに食らって……これは、決まったかっ……!?」
セオ「……か……は」
 かくっ。
速水「セオ選手……膝をついたーっ!」


マスター「むしろよく膝をつくだけで耐えている。普通なら死んでるぞありゃ」
舞「攻撃力、防御力ともに龍斗が上、手数の多さも機動力も圧倒的に龍斗が上。戦術的なセンス自体の差はどちらが上ともいえない、ならば勝負は決まったも同然ということか……」
トロデ「むぅぅ……セオは現在回復呪文はホイミしか使えぬしのう……やはりLV99とLV16では差がありすぎるか……」
速水「龍斗選手油断なく構えて動こうとしません……セオ選手は膝をついたまま同じく動きません。これは膠着状態になったか……?」
セオ「…………………=v
トロデ「む? 今、セオがなにやら唱えたように思えたが……」
 きゅごっ!
速水「こ、これはぁっ!? セオ選手の体が猛スピードで龍斗選手の間近へ接近するっ! そして龍斗選手に抱きつき……!」
セオ「天路を翔けさる鳥のように、ひとつの架橋を越えて跳躍しよう!=v
舞「! これはセオの唱えるルーラの呪文!」
龍斗「………!」
速水「おぉっとぉーっ!? 龍斗選手の体がセオ選手と共に凄まじい速度で天へ駆け上るっ! そして天高くで……セオ選手、龍斗選手を抱きしめていた手を放したーっ!」
マスター「……そうきたか」
風祭「――たんたんッ!!」


速水「セオ選手ルーラの呪文の本来の効果を発揮させて中空から瞬間移動しましたっ! しかし龍斗選手はそれについていけず超高空から試合場へと落っこちるーっ!」
トロデ「あそこまでの高空から落ちれば龍斗とてまず命はないっ! セオ、考えおったな!」
速水「龍斗選手落ちていく、落ちていく、落ちて………おぉっ!?」
龍斗「こぉぉぉぉぉ………」
速水「こ、これはぁっ!?」
舞「なんと……!」
マスター「おいおい……マジかよ」
トロデ「ば、馬鹿なっ!?」
速水「た……龍斗選手、空中を走っているーっ! これは魔法かそれとも黄龍の神秘のパワーなのかっ! 空中を螺旋階段を走るようにして下へ下へと駆け下りていっているーっ!」
龍斗「はぁぁぁぁぁぁっ!」
フォルデ「冗談だろ……!?」
ラグ「武闘を極めた人間なら水の上も走れるというのは聞いたことがあるが……まさか宙を走るなんて……」
ロン「……達人とかそういう段階じゃないな」
 ばしゅっ!
セオ「………っ!」
速水「セオ選手ルーラで試合場に戻ってきたっ! しかしそこは……!」
風祭「いけぇっ、たんたん!」
龍斗「秘拳――」
フォルデ「よけろぉっ!」
龍斗「黄龍!」
セオ「………っ!」
 ずがどごぉぉんっ!
龍斗「………ふぅ」
セオ「…………ぅ(がくり)」
皆守「……勝負あったか。勝者、龍斗」
 カンカンカンッ!
 ウワォァァァァッ!
ロン「……負けた、か」
フォルデ「……ド畜生がっ!」


速水「それではみなさん、今回の試合はいかがでしたか?」
マスター「セオの奇策はたいしたものだったが、それを龍斗の腕が上回った。それにつきるだろう」
トロデ「反則気味な気もするが、まさか宙を駆けられるとは誰も思わなんだろう。圧倒的なレベル差を前に、セオはよく戦ったといえるのではないか?」
舞「確かにな……セオの持てる能力で龍斗に勝てる方法はあれが一番確率が高かっただろう」
速水「はいありがとうございましたっ。セデルビ巴ちゃーん、そっちの様子はどーおー?」
セデル『んもー、速水さんてばボクたちの名前略して呼ばないでよ!』
ルビア『……なんだか、盛り上がってます』
速水「ほほう?」
フォルデ『だっからてめーはいつまで泣いてんだっての。いつまでもぐじぐじしてんじゃねぇ、ぶん殴るぞ!』
セオ『ごめ、ごめんなさっ、どうぞ、殺してくださいっ』
フォルデ『……は?』
セオ『え……だって、フォルデさん、『こんなとこであっさり負けやがったらぶっ殺すぞ』って……」
フォルデ『…………………っ!!! 阿呆かてめぇはーっ!(顔真っ赤)』
セオ『え、え?』
ロン『素直に『よく頑張った』と言ってやればいいものを……』
セオ『え……?』
フォルデ『ロン、てめぇっ!』
ラグ『セオ、君は確かに負けたかもしれないけど、気にすることはないよ。君はよく戦った。知恵と力の限りを尽くしてね。見事な作戦と意志力だった、すごかったよ。格好よかった』
セオ『え、えぇ!? そ、そんなことないですっ、俺本当に弱くて、力なくて、勇者のくせになにもできない馬鹿でっ』
フォルデ『うるせぇタコっ勝手にてめぇのしたことの価値下げんじゃねぇっ! 言っとくけどな、俺はてめぇがしたことマジですげぇって思ってんだからな! あれだけのことやっといて卑屈になってんじゃねぇよボケ!』
セオ『ご、めんな、さい……』
フォルデ『……だからなんでそこで謝んだよてめぇはーっ!』
龍斗『青いな、甘酸っぱいな。どうだ澳継、お前もひとつあんな風に恥ずかしがりながら俺を褒めてみないか?』
風祭『死ねこのクソタコ野郎っ!(殴り)』
龍斗(かわし)
巴『さーて盛り上がってるとこ申し訳ないけどお仕事お仕事ー! セオ選手っ、龍斗選手との戦いはどうでしたかっ?』
セオ『……龍斗さん、すごく強かったです。俺なりに、精一杯考えた、作戦だったんですけど、あっさり破られちゃって。本当に、俺って弱いなっていうか、駄目っていうか、まだまだだなぁって、また再確認しました』
龍斗『いやいやあんな作戦を考えてほぼ成功しかけた人間としてはもう少し天狗になってもいいんじゃないか?』
セオ『わ!』
フォルデ『急に入ってくんじゃねぇよ!』
巴『おおー龍斗選手、いかがでしたかセオ選手と戦って? あの空中歩行はどこで習ったんですか?』
龍斗『別にどこで習ったわけでもない。まぁ、自力といえば自力なんだが……『仙の道を習い得て空を飛ぶこと自在也』ってわけでもないが、気を使う武術を極めていけば宙を駆けるっていうのはそんなに難しいことじゃない。自分の体の重みを極限まで軽くして、空気を踏めるようにすればいいことなんだからな』
巴『嘘だぁ……』
セデル『そうなの!? ボク今度やってみよう!』
風祭『本気にすんなよ。ンな怪物じみた真似ができんのは世界中探したってこいつくらいだ。空気を踏む、なんて普通に考えてできるわけねェだろ』
セデル『えー……そうなんだ……』
龍斗『ま、俺としても切り札ではあるな。やっぱりかなり気の制御に神経使うし。まさかこんな手に出るとは思わなかったから一瞬泡を食った。これだけ力に差がある人間に冷や汗をかかせられるとは、俺もまだまだ修行が足りん』
ルビア『ありがとうございました』


速水「次は二回戦第二試合、九龍選手VSアディム選手ですが……今回の勝負、どうごらんになりますかみなさん?」
トロデ「それはアディム殿の勝利で決まりじゃろう。なんといっても力の桁が違う」
舞「それはそうだが、九龍は機動力においてはるかにアディムに勝る。そして駆使できる戦術も極めて多彩だ。九龍の変幻自在の攻撃にはアディムも苦戦すると思うが」
マスター「……アディムだな」
速水「ほほう、やはり親バカ同士、相通じるものがあるのですか?」
マスター「人聞きの悪いことを言うな。俺はただ知っているだけさ」
トロデ「なにをじゃ?」
マスター「子供にいいところを見せようとする親が、どれほど強いものかな」


皆守「……あー、だりィ……(すぱー)」
九龍「クラァ甲! 堂々とアロマすぱすぱ吹かしてんじゃないっ! トイレの中にいるみたいな気分になるだろっ!」
皆守「……勝者、アディム」
九龍「ほほう、よほど背後に回られて急所をランチャーで狙い打たれたいんだな?」
アディム「まぁまぁ……とりあえず試合を始めようよ」
皆守「……ああ。……始め」
 カーン!
速水「おーっと九龍選手一気に間合いを詰めたっ! 取り出したあれはっ……!?」
舞「! あれはゲーム中で最高というか桁違いの攻撃力を誇る武器、八握剣! だがあれは人間にはひどく効きづらいはずだが……?」
速水「今入りました情報によりますと、九龍選手の装備は武器が攻撃800の八握剣+近接武器のダメージを+50%する八咫烏+ニトロマイト。アンダーウェアはT・スーツ、アクセサリはプラズマ発生器のことですっ! プラズマ発生器は攻撃を電気属性化させます。つまり人間にも攻撃力800がもろに来るっ! 以外にも九龍選手、正面からガチンコ勝負で来たーっ!」
九龍「オラオラオラオラオラオラァッ!」
 ずばずばずばずばずばっ!
アディム「……ぐ……!」
速水「速ーいっ! 持ち前の速さを活かしてアディムの何倍もの速さで強力な斬撃を与えまくるっ!」
トロデ「む……? 急に離れだしたぞ?」
 すたたたたたたたたっ。
速水「おーっと九龍選手、アディム選手と間合いを取ったーっ! 九龍ゲームでの基本中の基本、『攻撃して離れる』を行っておりますっ! アクセサリを浮遊輪に持ち変えて移動力アップ、地学も当然マックスな彼は一気にとてつもなく遠くまで離れてしまったーっ!」
トロデ「じゃが、この程度の距離ならアディム殿のバギクロスで……」
マスター「それは無理だな」
トロデ「なぜじゃっ?」
マスター「九龍にもバギクロスの一撃くらいに耐える力はある。そして、九龍がその一撃に耐えたら――」
アディム「……っ、ベホマ……」
速水「アディム選手、ベホマで回復します。そしておーっと九龍選手、また間合いを詰めたーっ! アクセサリをプラズマ発生器に変えて攻撃攻撃攻撃ーっ!」
マスター「この次の攻撃で倒されるからさ。つまり、アディムは一方的に攻撃されて回復、というのを続けざるをえない」
トロデ「……まさか……九龍はアディム殿の魔法力切れを狙っておるのか!?」
マスター「最初からそれを狙ったのかどうかは定かじゃないがな」


九龍「オラオラオラオラッ!」
 ずばずばずばずば!
速水「九龍選手完璧なまでのヒット&アウェイ! アディム選手にまったく攻撃をさせませんっ!」
舞「これは相当アディムと自分の能力の違いを研究してきているな。どれだけ離れればアディムが攻撃できないか、どれだけ攻撃すればアディムが次の行動で回復せざるを得ないか、わかっているようだ」
速水「一気に攻撃して倒してしまうわけにはいかないんでしょうか?」
舞「ある程度以上一度に攻撃すれば九龍も攻撃を受ける。アディムの攻撃を一発でもくらえば自分は瀕死になると考えたのだろう」
速水「なるほど……しかし、このままでは千日手じみた展開になりそうですが……」
舞「その前にアディムが行動を起こすであろう。……動いたぞ!」
アディム「はあぁぁぁァァァ……」
 ギャオォォォォォォンッ!!!
トロデ「これは……ドラゴンの杖! そうか、ドラゴンの巨体となって一気に間合いを詰めようと考えたのじゃな!」
九龍「……(ふっ)」
速水「なんとっ……九龍選手、逆に間合いを詰めたっ! そして……八握剣で斬って斬って斬りまくるっ!」
九龍「オラオラオラオラオラオラオラオラ!」
 ずばずばずばずばずばずば!
アディム「ワギャォォォンッ!」
 ズバァッ!
速水「アディム選手その爪で九龍選手を斬り裂く……しかしーっ、九龍選手はまだ生きているーっ! しかも寿司を食って行動力回復、そのまま斬り裂く速度をさらに増すーっ!」
九龍「オラオラオラオ……」
速水「……っと……これは!?」
舞「アディムが……九龍を、食った!?」
アディム「ギャォォォ……」
九龍「(アディムの口の中から)わーっ、わかった、まいった! ギブアーップッ!」
皆守「………。勝者、アディム」
 カンカンカン!
 ウオォォォォッ!


速水「さて、今回の試合は、最後なぜいきなり九龍選手がギブアップしたのかよくわからないという方が大半だと思うので、そこの解説からお願いしたいのですが」
トロデ「うーむ……わしらにも自信はないのじゃが……」
マスター「たぶん、動きを封じられたんだと思う。――舌でな」
速水「舌、ですか?」
舞「うむ。口の中に入れてしまえばドラゴンの巨大な舌で九龍の動きを封じることができる。しかもそれには一挙動もいらぬ、こうしようと思うだけで充分じゃ。なにせ舌じゃからな。しかも同時に喉の奥から炎を浴びせられようとしていた。そこで九龍は自分の勝ちはない、と思ったのだと思う」
速水「九龍選手にも充分に勝ち目はありそうな戦いでしたが?」
トロデ「確かにな。お互いギリギリのところだったと思う。アディム殿は巧みに全力を封じられておったが、互いに智謀を尽くしたという意味ではよい勝負だったと思うぞ」
速水「ありがとうございました〜」


速水「で、セルとーズ、そちらの様子はいかが?」
セデル『変な呼び名つけないでってば!』
巴『今回はビアンカさんと話してまーす。珍しく』
ルビア『そうなの。夫婦水入らずなの』
速水「ほほう?」
アディム『……だから、心配かけたのは悪かったけど……』
ビアンカ『けどなに。どうせあなたは子供に心配かけたことしか悪いと思ってないんでしょ?』
アディム『別にそういうわけじゃないよ』
ビアンカ『なによそんなにしれっと! 私のことをなんだと思ってるわけ!?』
アディム『……僕の奥さんで、セデルとルビアのお母さんで……』
ビアンカ『ほら! やっぱり私のことお母さんとしか思ってないんじゃない!』
アディム『だからそういうわけじゃないって言ってるだろう?』
速水「……夫婦喧嘩してんの?」
ルビア『あのね、お母さんがね、お父さんがひどくやられてるって心配して救護室に向かったら、お父さんわたしたちのこと探して控え室にいたの。それで……』
速水「喧嘩になった、と」
アディム『僕はただ……その。子供たちの方が僕のことを心配してるだろうと思って』
ビアンカ『私なんか心配されるだけ迷惑ってわけね!』
アディム『だからそうじゃないって……! ああもう!』
 ぎゅっ。ちゅっ。
ルビア『きゃぁ!』
セデル『わー……お父さんとお母さんがチューしてるところ初めて見た……』
九龍『ここに子供がいなければ寝技に持ち込んで誤魔化すところなんだろうなー。やらしい大人ー』
セデル『………? やらしいって、なんで? ねわざってなに?』
ルビア『………………(わかった)』
巴『では九龍さん、試合の感想を』
九龍『くやしー! ってのが感想? 俺なりにめいっぱい考えて勝てるつもりで戦ったのにさ、それを越えられちゃったのやっぱり悔しいよ。今度はもっと他のルールで戦ってみたいな。射撃戦なら俺絶対勝つ自信あるよ!』
巴『ありがとうございましたっ。ではアディムさんは?』
アディム『……正直、勝てたのは僥倖だと思ってる。一歩間違えれば負けてたな、と思うよ。僕もまだまだ修行が足りないな。なにかもっと他に方法がなかったか、反省しておくことにするよ。……セデルとルビアにも今回カッコいいところを見せられなかったし……』
巴『とのことです』
速水「はーい毎度ありがとうトモトモ。これ以降は来月っ! 見なきゃ訴えて勝つよ!」
マスター「そろそろ決め台詞もネタ切れてきたみたいだな」

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