拍手ネタ決議『無限戦隊ヤオヨロジャー・1』

「……えー。それではー。はいはいみんな静かにー。『八百万間堂次の拍手小話なににするか会議』始めるよー」
「うぃーっす」
「……つか、なんだよこの会議。なんでそんなもん俺らが話し合わなきゃなんねーんだよ?」
「んもーレジュメ読んでないのー? 管理人がもーいい加減ネタ尽きてきたっつーんで、僕らが協力してネタ出ししようってことになったんじゃん」
「なんだそりゃ……拍手ってアレだろ、叩いた分だけそれが管理人に送られて、感想も書けるってやつだろ? そんなもん別におまけなんざつけねぇでもいいだろが、要は人気のバロメーターなんだからよ」
「チェイッ!(ごすっ)」
「うごっ! お、おぉおっ、鳩尾入ったぁっ……」
「そういう問題じゃないんだよ。確かに拍手小話なんざわざわざ見る人は少数派だろうけども、特にうちの拍手小話はいろんなジャンルが入り乱れるから読んでてわけわかんねーっていう人いっぱいいそうだけども、拍手してくれる人に心ばかりのお礼をしたいって気持ちがわからないのかい?」
「だからって人殴っていいことにゃなんねーだろ! ったくよぉ……」
「ほらほらみんな、早く意見を出して。意見が出ないと帰れないんだからね。みんなプライベートの時間ゆっくり楽しみたいでしょー?」
『…………』
「……前みたいに質問とかの小ネタで九回もたせるのは? 少なくとも書く時に悩みすぎて更新する時間がなくなるなんてことはなくなると思うんだけど」
「んー、一理あるけど……却下。質問のネタもそろそろ尽きてるし、それに二番煎じはやっぱどうにも感じがよろしくないしね」
「じゃーそれより前の、各作品のキャラ小話で九回もたせるのはどうかなぁ? 少なくとも今まで書いた中で一番時間短縮できると思うよ?」
「うーん、確かにそうなんだけど……やっぱ却下。いよいよネタがないとなったらそれも考えるけど、あれはあれで大変なんだよ、出てくるキャラそれぞれに面白いネタ考えないとならないし。そういうのができないから前のキャラ小話はぐだぐだなのがほとんどになっちゃったでしょ?」
「ううん……それじゃあ、パラレルというのはどうでしょうか? 今までにも何度もありましたが……各キャラクターがそれぞれ入り乱れてひとつの話を創り出す、クロスオーバーパラレル」
「うん、まぁ管理人はそういうの大好きだけど……来訪者の方々には評判悪いんだよね、それ……いらっしゃる方々は知ってる作品しか読まない方が大半だからさ……」
「確かに……」
「じゃー読んだら面白いようなの書けばいいんだよっ」
「それは確かに正論だけどさ……そーいう面白いネタをどっからどんだけ持ってくるかっていう……」
「……戦隊ものとか、どうだ?」
『は?』
「だっから特撮戦隊ものだって! ちょうど折よく今年は戦隊三十五周年でいろんな戦隊のガワが見られまくる奇跡の年なんだぜ!? だってのにうちでは戦隊ものを一回もやったことがねーとか、これってマジゆゆしき事態ってやつだろ!?」
「……どこがどうゆゆしいんだか俺にはわからないんだが、わかる奴いるか?」
「わかるわけねーだろ、くっだらねぇ。んなガキくせぇ話……」
「てめぇ! 戦隊ものを馬鹿にしたら許さねぇぞ! 三十五年って年輪を重ねて戦隊ものは子供にとって面白いと同時に大人にとっても楽しめるような」
「はいはい、わかったわかった。それはわかったから話し合いをさっさと進めよう」
「このやろ、俺ぁマジで言ってんだぞぉっ!?」
「……戦隊もの、そんなに駄目ですかね?」
『へ?』
「あ、いえその、嫌だったらいいんですが、個人的には考慮には値するんじゃないかなーと。戦隊ものはストーリーがわかりやすいですから書くのもそれほど時間かからないと思いますし、舞台自体は現代の日常なわけですからキャラは山ほど出せますし、クロスオーバーとかもやりやすいんじゃないかなって」
「来訪者の方々からするとよく知らないキャラを大量に読まされるってことになるって危惧に対する対策案は?」
「うーん……正直、その対策案についてはあんまりいい考えが浮かばないんですけど、わりとよく感想をもらうキャラを目立たせることで少しは緩和できるんじゃないかと」
「なるほど……一理はあるが……」
「じゃあもしやるとしたら、どんな奴がどんな役をやることになると思う?」
「そうですね、たとえば……」
 …………
 ………
 ……


「行ってきまーすっ!」
 前を開けた学ランをはためかせながら家を飛び出しつつ、俺はトーストにかぶりついた。「ひほふひほふ(遅刻遅刻)〜」と唸りながら噛み締め飲み下す。今日はネタじゃなくてマジに急がないと遅刻する。
 俺、滝川陽平。八百万間学園に通う、十四歳の中学生! 勉強は苦手だけどスポーツ大好き、部活はロボット研究会と、ただ今青春真っ盛り!
 ……って、本当はそれだけじゃなくて、秘密のプロフィールがあったりするんだけど……それは仲間以外は誰にも秘密なんだぜ、ふふふ。
 とにかく俺は全力で通学路を走り、予鈴が鳴るギリギリに教室に飛び込んだ。
「だだだだーっしゅ! ……セーッフ……!」
「なにがセーフだ、たわけ」
「お? なんだよ、舞」
 こいつは芝村舞、俺の隣の席の女子。女子なのにいっつもすげー偉そうでぶっきらぼうで腹立つ奴なんだ……けど時々ちょっと可愛い……じゃなくて! とにかく普段は喧嘩相手……なんだけど、実は誰も知らない秘密のカンケーがあったりするから、なかなかそうも言ってられなかったりするんだよな。
「まったく、滝川ったら。本当だったら全然セーフじゃないよ? ロン先生が予鈴の一分前にはいつも教室に着いてるのは君も知ってることじゃないか」
「あ、そっか……」
 ぽややんな笑みを浮かべながらこんな言葉をかけてきたのは速水厚志。俺の大親友! ……だよな? そう言っていいんだよな? 時々疑問は感じるけどそういうことにしておこう……って奴。こいつとも誰も知らない秘密のカンケーがあったりする……っていうか、こいつの場合向こうの方が立場が上っぽいとこがあるから難しーんだよな、なんか。
「なんだよ、今日ロン先生なんかあったのか?」
「ロン先生っていうか、学校にね。通学路にドーガスが出たんだって」
「なんだって!?」
 俺は思わず立ち上がった。当然手には握り拳を作って。
 ドーガス――ここ八百万間市を中心に破壊活動をしている悪の秘密結社。施設を壊したり人を大量に誘拐したりと悪の限りを尽くしているけど、なぜそんなことをするのかは謎に包まれている。
 とにかくそんな奴らが通学路に出たってことは――生徒たちのピンチだ!
「それで!? そいつら、一体なにしでかしやがったんだ!?」
「生徒たちを誘拐しようとしたみたいなんだけどね、そこにヤオヨログリーンが現れて助けに入ってくれたんで、生徒たちは無事だってさ」
「そっか、よかったぁ……けど許せねーな、ドーガスめ! いたいけな生徒たちを誘拐しようだなんて!」
「年齢で言うなら僕たちも十分いたいけな年代だけどね……あ、そろそろ先生来たみたいだよ」
 速水が言い終わるや、がらり、と教室の前の引き戸が引かれてロン先生が姿を現す。長めの髪を後ろで縛ったかなりのイケメンな先生なんだけど、自分でホモだってことを明言してるんで、女子人気はそんなでもない。ちなみに担当教科は世界史で、授業はわりと聞いてて面白い。
「全員席に着け。朝のホームルームを始めるぞ。……すぐに席に着かない者は俺が心を込めて正常に心身が育っているか触診を」
 だだだだっ、と喋ってた男子たちが席に着く。……こういうことを言うんで、この先生男子にはすんげー恐れられてんだよな。
「よろしい。まぁ、少しばかり残念な気はするが……ホームルームを始めよう」
 そしてロン先生はいくつかの連絡事項を告げたあと、ドーガスについての話を始めた。
「全員周知のこととは思うが、ドーガスが今朝も、通学路の一つに現れた。何度も言っているとは思うが、現在我々は少しでも隙があれば襲われ、誘拐されたり殺されたりしかねない状況にある。ヤオヨロジャーが来てくれるなどと甘い考えは持たず、登下校は決められた通りの班を作って行うこと。ドーガスが現れれば、慌てず騒がず110番すると共に、落ち着いて可及的速やかに極力音を立てずその場を離れること。……まぁ難しい話ではあるが、それができればドーガスの襲撃被害の九割は防げるからな」
 ロン先生の言葉を聞きながら、俺はぎゅっと拳を握りしめていた。確かにすぐに逃げ隠れすれば少なくともそいつの命は助かるかもしれない。でも絶対じゃないし、ドーガスが出てきた以上必ず被害は出る。
 それに対抗するための存在が、この市にはいるんだ――無限戦隊ヤオヨロジャーが。


「……よし、今日の授業はここまで!」
 体育のラグ先生の声に、俺らは声を揃えて『お疲れっしたー!』と叫びつつ、わっとばかりにグランドから駆け去った。時間はちょうど昼休み、一刻も早く教室に戻って財布を取って購買で飯を調達しなけりゃならない。
 だだだだだだだっと廊下を走っていると、階段から駆け下りてきた人とぶつかりそうになって、俺は「わっ!」と叫びつつ身をかわした。向こうもちょうど身をかわしたところで、こっちをぎろっと睨みつけて怒鳴ってくる。
「あっぶねぇな、どこ見て走ってんだこの抜け作! ……って、あん? お前か」
「あ、風祭……先輩」
 うわー、厄介な人につかまったなー、と俺はぽりぽり頭を掻いた。風祭澳継、俺よりひとつ上の高等部の先輩――なんだけど、この人なんつーかいちいち短気っつーか喧嘩っ早いっつーか、どんな奴にもすぐつっかかってくるから相手するの疲れるんだよな。悪い人じゃないんだけど。
「……なんだよ、そのいかにも面倒くさそうな顔は。文句あんなら相手になんぞ」
「いや、別に文句とか全然ないです、マジで」
「……ふんッ」
 小さく鼻を鳴らしてから、風祭先輩はすいと俺に近寄り(この人家が古武術の道場とかでものすごく人の懐に入り込むのがうまいんだよな、物理的な意味で)、耳元で囁いた。
「今朝の奴らの話、聞いてんだろうな」
「え、はい。もちろん聞いてるっす」
「今日の夜、あいつらまた出てくるらしいぞ」
「え!? マジっすか!?」
「こんなことで嘘なんざつくかよ。相手した本人が聞いたってんだから間違いねェだろ」
「あ、セオ先輩……ですか」
「ああ。……ッたく、あの野郎、毎度毎度俺と話すだけでうじうじ泣きべそかきやがって、鬱陶しいったらねェぜ。いい加減慣れろってんだよ、ッたく」
「あはは……」
 俺は頭をかきつつ笑ってごまかした。セオ先輩――フルネームはセオ・レイリンバートルっつって風祭先輩のさらに一個上の先輩なんだけど(そんで基本相当に内気で気弱な人なんで風祭先輩とはすんげー相性悪いんだけど)、風祭先輩同様、俺とはある共通点があるのでよく喋る。
 そして、その共通点が、今俺たちが話している内容に深く関わってくるんだけど――それは仲間以外には絶対に秘密! なのでここでは言うことができない(っつかこんくらいでも下手したら速水にどやされる)。
「他の奴らには?」
「セオの奴が連絡したっつってたけど……お前の方には連絡来てねェのか?」
「え、連絡? ……あ、やべぇ、携帯うちに忘れてきてたかも!」
「……てめェなァ……抜けてんのもいいかげんにしねェと殺すぞ!」
「うひーっ、すんません、すんませんーっ」
 ぺこぺこ謝りながらその場から逃げ出して、購買へ走る。俺の昼食代は一日五百円、これでぎりぎりまで腹にたまるもんを買うには人気の安上がりメニューゲットは必須、ぶっちゃけこんなとこで話し込んでる暇ないんだ。
 そして予想通り、俺がたどり着いた時にはもう、購買は昼飯を買おうと群がる生徒たちで黒山の人だかりができていた。うひー、と思いつつ無理やりその間に体を割り込ませて前に出て叫ぶ。
「スペシャルパンと焼きそばパン、アップルパイと牛乳!」
「悪ぃけど、もうスペシャルパンは売り切れだ」
 きぱっと言ってくる割烹着に銀髪という取り合わせがシュールな相手の台詞に、俺はやっぱりかーっ、とその場にくずおれかけたけど、いやここで退いては! と気合を入れてそいつに話しかける。
「そう言わねぇでさ! そこをなんとか、頼むって!」
「頼むもなにも売り切れなんだからしょうがねーだろ。はい、コロッケパンとハムカツサンドと紅茶、三十円のお釣りな。はい、メンチカツバーガーとポテトサラダサンドとオレンジジュースでお釣りは二十円」
「じゃあせめて割引してくれよ! 仲間のよしみで、なっなっ」
「アホか! 仕事の邪魔すんなら帰れ! はい、焼鮭むすびにいくらむすびに焼肉むすびにお茶で五百円ちょうど!」
 微塵の躊躇もなく怒鳴ってくる容赦のない顔馴染みに、俺は肩を落として焼きそばパンとチーズホットドッグと牛乳だけを買ってその場から立ち去った。
 この購買で忙しく働いてる奴は、実は俺と同学年のライっていう奴で、家庭の事情で学園の紹介した場所でアルバイトして学費を稼いでる苦労人だ。昼休みは割烹着着て購買か食堂か一日交替で働き、放課後は学校長の知り合いの店で料理人の修業をしてるらしい。
 そのせいかこいつの作るメシはすんげーうまくて、勉強のためにって学園に頼んでこいつが作ってるスペシャルパン(メニュー)は安いのにボリュームがあってうまい、と評判なんだ。
 で……こいつも、俺とはある共通点がある奴なんで、ちょっと融通利かせてくれねーかなー、と思ったんだけど、予想通り駄目だった。くそー、いつものことながら頑固な奴め。


「あ、滝川せんぱーい!」
 明るい声がかけられて、俺はお? と食堂の方をのぞく。そこではセデル――学園理事長の息子で、初等部の生徒会長をやってるセデルリーヴ・グランバニアが、セオ先輩と一緒に弁当を広げていた。
「よっす、セデル。セオ先輩も、ちっす。なんだよ、珍しいじゃん、ルビアちゃんと一緒にいないなんて」
 ルビアちゃんっていうのは本名ルビアレーナっつって、セデルの双子の妹だ。こいつらはすんげー仲がよくてどこへ行くにもなにをするにも基本一緒だから、一人で行動してるの見るとちょっと違和感がある。
「えへへ、今日は秘密会議だから、ちょっとだけ別行動にしたんだっ」
「へ? 秘密会議って……」
「だって、今日の夜は」
 がばっ。俺はみなまで言わせずセデルの口を塞いだ。
「おっまえなっ、状況考えろよ! こんなとこでそんなこと話してたら司令に死ぬほど叱られるぞ!?」
 小声でぼそぼそと、かなり厳しい口調で言ったんだけど、セデルはきょとんとした顔で首を傾げて、ぷはっと口を出して言ってきた。
「え、なんで? だって、ボクたちが話してたの、特訓の話だよ?」
「……へ?」
「えっとね、今ボクとセオ先輩で秘密特訓してるんだー、もっと強くなるための。これ、ルビアにもお父さんにも秘密なんだよ。だから、それを今夜はどうするかっていう話してたの」
「…………」
 そーいうことは先に言えー! と言いたいとこだけど、セデルが説明する前に口を塞いじまった自覚はあるので、俺はうううと唸りながら食堂のテーブルに突っ伏してしまった。こいつといると、こっちが年上なのにそーいうみっともないとこ見せまくることが多いから困る。
 なにせ、こいつとも先輩たちやライ同様、ある共通点があるので、話すことも自然と多くなるからそーいうことも多くなっちまうんだよな。
 俺、風祭先輩、セデル、セオ先輩、ライ。この五人にある共通点、それこそが俺たちの秘密、トップシークレット中のトップシークレット! だからこんなとこでそれについての話するのとか、厳禁中の厳禁なんだよ、マジで。
「……でも、こういうところで少しでも関係する話はしない方がいい、っていうのは確か、だとは思う、んですけど……」
 セオ先輩がおずおずと口にした。この人はどんな人に対しても(それこそ初等部のセデルに対しても)基本敬語だ。
「う、そーなのかぁ……ごめんなさい……」
「な!? ほらなっ!? 俺別に間違ってねーだろ!?」
「……なので、関係する単語もできるだけ使わない方が、いいんじゃないか、って……司令、とか……」
「うぐ」
 痛いところを突かれて俺は変な声を漏らした。この人は内気で気弱だけど指摘にはけっこう容赦がない。
「えーと……じゃあそーいうことは話さない方がいいのかぁ。え、でも話さなきゃいけない時もあるよね? そーいうの、どこで話すの?」
「誰にも聞かれない、って確信できる場所、じゃないでしょうか。俺たちがいつも、集合する場所、とか」
「あー、そっかー……」
「おや、セオくん、セデルくん、滝川くん。なんだか、面白い話をしているね」
「いっ!?」
 俺たちは揃ってほとんど飛び上がって声をかけてきた人を見た。爽やかな笑顔で席に着いている俺たちを見下ろしているのは、ローグィディオヌス――この学園高等部の生徒会長だ。
 この学校では大学部と高等部・中等部・初等部は生徒自治の管轄部分がかなり違っていて、生徒会同士の交流があんまりない。なんで、高等部の生徒会長は高等部・中等部・初等部の生徒自治を事実上監督する役目を負っていて、当然ながら権力も強い。
 もちろんだからってなんでもできるわけじゃないけど、睨まれて得なことなんてなにひとつないんで、俺は(「こんにちは!」と元気にあいさつするセデルや唐突な登場にほとんど固まってしまっているセオ先輩をよそに)一人必死にぺこぺこと頭を下げた。
「いやっ、別に大したことじゃないんですよ! 俺ら仲間内でちょっとサバゲーみたいなことやってるんで、そのことちょっと語ってただけなんです!」
「へぇ、サバゲー。面白そうだね、僕もできれば仲間に加えてもらえないかな?」
「いやいやいやいや! これホント仲間内のちょっとしたもんなんで、生徒会長さまをお迎えするような大したもんでは!」
「そうか、僕は君たちの仲間にはふさわしくないっていうことなのか……僕の精進が足りないということなのだから、仕方のないことだけど、悲しいな……」
 寂しげな表情で目を伏せてみせるローグィディオヌス会長。その仕草に周囲の会長のシンパから(すげぇ人気あるんだよこの人)熱視線が送られてくるのに、俺はわたわたと慌てた。
「い、いやっ、そーいうことじゃなくて、ホントに、マジで大したことじゃなくて……」
「はは、冗談だよ。仲間同士で楽しんでいるところに割って入ったりはしないさ。他の人に迷惑がかからない程度に、楽しんできてくれ」
 そう笑顔で手を振って、会長はこちらに背を向け去っていく。俺ははーっ、と安堵の息をついた。
「はーっ、やばかった……会長がいきなりあんなこと言い出すなんて思わなかったぜ……」
「そーだねー、新しい仲間とか簡単に加えちゃダメだもんね。……あ、そうだ、滝川先輩。サバゲーってなに?」
「は!? お前知らねーのかよ! サバゲーってのはぁ……」
 説明しかけて、俺はセオ先輩が会長の去っていったあとをじっと見つめているのに気づいた。ちょっと気になったので訊ねてみる。
「なに、セオ先輩、会長がどーかしたのか?」
「え! いえあの、その、えっと……なんでも、ない、です。ごめん、なさい……」
「……え、そう? ふぅん……」
 俺はちょっと首を傾げた。セオ先輩の視線は、あんまりなんでもない風には見えないというか、なんかすごく考え込んでる風な気配を漂わせまくっていたからだ。


 その夜。
「……おい、本当にここに出てくるっつったんだろーな?」
 風祭先輩がぎろりとセオ先輩を睨む。セオ先輩はびっくぅ! と震えつつ、おそるおそるうなずいた。
「『計画通り、端町の廃工場で集合だ』って……言ってたと、思い、ます。こっちに聞こえるように言ってた、わけじゃなくて、唇を読んだので……偽情報、というわけでも、ないんじゃないか、と……」
「それっぽい奴らなんぞどこ探してもいねーじゃねーか」
「あの、それは、えと……ごめん、なさい……」
 泣きそうな顔になるセオ先輩に、風祭先輩はあからさまにイラッ、とした顔つきになった。
「てめェ、毎度毎度こっちがなんか言うたびにぐずりやがって……鬱陶しいんだよッ、言いたいことがあんならはっきり言いやがれってんだこの根性なしッ!」
「う……ごめん、なさい。ごめん、な……」
「風祭先輩! セオ先輩をいじめるの、やめてよっ」
「っつか、ここを全員で張るって決めたの司令だぜ? 司令が命令したんだ、俺たちはぐだぐだ言わずに従うのが筋じゃねぇのか? あんただって命令に一度ははいっつったじゃねぇか」
 セデルとライが割って入ると、風祭先輩は「チッ……」と大きく舌打ちしてそっぽを向き、セオ先輩は泣きそうな顔でうつむいて「ごめんなさい……」と謝る。俺たちがチーム組んでからそんなに経ってないけど、騒ぎが起こるのはいつもこの二人の間からだ。年長組なんだからもーちょいしっかりしてくんないかなー、と頭を掻いていると、装着しているインカムから澄んだ声が響いてきた。
『工場A-2エリアから反応あり! 波形パターンレッド、ドーガスです!』
「なにっ! 了解だ、すぐに向かうぜ!」
 俺は通話口の向こうのルビアちゃんに答えると(ルビアちゃんは俺たちが作戦行動を取る時は、オペレーターの役をしてくれてるんだ)、後ろを確かめもせず気配を殺しつつ反応のあったエリアへと走った。他の奴らもついてくる気配がする。そう動いてくれるだろうってのは、これまでの経験上よっくわかってた。
 反応エリアの前まで来ると、確かに大勢の動くものの気配がする。物陰からこっそり様子をうかがう――と、そこには何十人ものドーガスの戦闘員たちと、筋肉をやたらめったら誇示しているドーガスの怪人がいた。
「急げ急げ! 急がねぇとうちのボスの雷が落ちるぞ!」
「はっ! しかし、ハッサンサンさま。こんな誰もいないところで爆弾を爆発させて、なにか意味があるので?」
「おう、なんでもな、この爆弾の中には特殊な……サイキン? かなんかが詰まってて、人間がそれを吸うと脳がドーガスに支配されちまうんだとよ。今夜の風向きからすると、ここで爆発させるのが一番広範囲にサイキンをばらまけるんだそうだ」
「な、なるほど……さすがスリーシックスさま、考えが深くていらっしゃる!」
「はっはっは、そりゃあ俺らのボスだからな。わかったら急げ! あの邪魔なヤオヨロジャーに嗅ぎつけられる前にな!」
「……なにわかりやすく悪事の解説してんだ、こいつら。作戦の理由なんて実行班なら全員知っとくのが当たり前だろーが」
「んなことは今はどーでもいい! みんな、変身だっ!」
『おうっ!』
「は、はい……」
「……チッ」
 一応全員がうなずいたのを確認してから、俺は左腕に装着しているブレスレットに右掌を触れさせ、みんなと声を揃えて叫んだ。
『インフィニティ・チェーンジ!』


「待ていっ!」
「誰だっ!」
 大音声で呼ばわった声に負けず劣らす大きな声で返してくる敵――そいつらに向け、俺たちはその場の全員に響き渡る声で名乗り上げる!
「バンダナの赤は闘志の証! 無限に燃えるぜ正義の炎――ヤオヨロレッド!」
 ババーン!
「………手甲の青は闘気の徴……無限の敵にも容赦はしない、ヤオヨロブルー……」
 ビシューン!
「しっぽの黄色は希望の光! 無限の絶望も照らしてみせる――ヤオヨロイエロー!」
 ズバーン!
「サークレットの緑は慈愛の象! 無限の恩情で痛みを癒す――ヤオヨログリーン!」
 キラーン!
「……瞳の銀色は仁義の印! 無限の友を背負いて護る――ヤオヨロシルバー!」
 シャリーン!
『無限戦隊ヤオヨロジャー、五人揃ってただいま参上!』
 ドッゴォォン!
 そう、これが俺たちの秘密――俺たち五人こそが、無限戦隊ヤオヨロジャー! 俺こと滝川陽平がリーダーのヤオヨロレッド、風祭先輩がヤオヨロブルー、セデルがヤオヨロイエロー、セオ先輩がヤオヨログリーン、ライがヤオヨロシルバー! ついでに言うなら司令が速水でヤオヨロスーツとか武器とかを作ってくれてる博士が舞、オペレーター兼開発助手がルビアちゃんでスポンサーがアディム学園理事長! 俺たちは普段は一般生徒に混じって学校に通いながら、いざという時にはヤオヨロジャーとして出撃する使命を負っているんだ!
「ちっ、現れやがったがヤオヨロジャーめ。てめぇら、やっちまえ!」
『ダー!』
 襲いかかってくる戦闘員たちに、俺たちは散開して立ち向かう。
「いくぜ、ヤオヨロアサルト! だだだだだだーっ!」
 俺は腰のウェポンホルダーから可変武器のヤオヨロアームを取り出し、俺専用のアサルトモードに変形させて撃ちまくる。連射速度と射角については随一のモードだ、うじゃうじゃ寄ってきた奴らはみるみるうちに倒れていく。
「へッ、雑魚がうじゃうじゃ寄ってきやがって! 食らいやがれッ!」
 ブルーも専用モード・ヤオヨロガントレットを装備して、次から次へと戦闘員たちを薙ぎ倒していく。古武術の達人なブルーは、技の多彩さならヤオヨロジャー一だ。
「ヤオヨロヘヴンソードっ! ええーいっ!」
 イエローも小さな体で専用モードであるヘヴンソードへとモードを変えて、ばったばったと敵を斬り倒す。体は小さいけど、スピードとパワーを併せ持つイエローは、そんなことまるで感じさせない戦いができるんだ。
「ヤオヨロシールド……いきます!」
 グリーンの専用モードはシールド。投げればブーメラン、殴れば打撃武器、かざせば盾になる攻防一体のこの武器は、着実に被害を減らしつつ敵を減らしていく。
「ヤオヨロブラスト、ヤオヨロブレード……いくぜ、おらぁっ!」
 シルバーはヤオヨロアームを二つに分離させ、遠距離の敵にはブラストで狙い撃ち、近距離の敵はブレードでたたっ斬るというやり方で見る間に敵を倒していく。間合いの使い分けのうまさは俺も舌を巻くほどだ。
 あっという間に戦闘員は全滅し、残るはハッサンサンと呼ばれていた怪人一体になった。
「ちっ! 仕方のねぇ奴らだぜ! ここは俺がお前ら全員をぶっ倒して、首を我がボススリーシックスに捧げてやる!」
「それはこっちの台詞だぜ! いくぞ、みんなっ!」
『おうっ!』
「……は、はい……」
「……チッ。てめェに指図される覚えはねェが、仕方ねェからやってやら!」
「だーもうっ、こーいう時は素直にリーダーの台詞に乗れよーっ! よーしきびってもんがあるだろーっ!?」
「様式美という、言葉は、本来は、存在しないので、形式美の誤用だと、思うんですけど……」
「え!? マジで!? 様式美=お約束っての嘘なの!?」
「あ、でもその、ここまで人口に膾炙した言葉にいまさらどうこう言う方がおかしいと思うので別に言い直す必要は」
「なにぐだぐだくっちゃべってやがんだ、敵が来るぞ!」
『っ!』
「くらいやがれ! バーンプアップ、正拳突きーっ!」
「うおっ!」
 ムキムキの筋肉をさらにムキムキと盛り上がらせて攻撃してきた怪人の拳を、俺はスーツの跳躍力を活かして大きく飛び上がって避ける――けど、その拳が勢い余って工場の床を文字通りかち割ったのを見て仰天した。なんせ床にばきばきばきぃっ! って亀裂が入ったと思ったら裂けちまったんだもん。ほとんどノリとしては地球割りだ。
「ちっ、避けやがったか。ならばさらにバーンプアップ、爆裂けーんっ!」
「うわっ!」
 今度は素早い四連撃。かわしきれないと悟った俺は攻撃を受けながら後方へ飛んでダメージを殺そうとしたけど、それでも勢いを殺しきれず壁に叩きつけられた。こいつ、見かけどおり、とんでもない怪力だ……!
「はッ、上等だ! 俺がその脳天、叩き割ってやらァ!」
「わ、ブルーっ、危ないってば!」
 だっとブルーが怪人へ向けて突っ込む。そこにちょうどカウンターのようにばかでかい拳が叩き込まれる――と思ったら、ブルーはその拳をぎりぎりでうまく受け流していた。そのまま一気に懐へと飛び込み、逆カウンターの要領で腹にヤオヨロガントレットの一撃を叩き込む。
「ぐはぁっ……!」
「へへッ、ざまァみやがれ! ……な、ぐッ!?」
 ブルーの一撃は普通の人間、どころか怪人ですら吹っ飛ぶくらい強烈なものだったけど、怪人ハッサンサンはダメージは受けたみたいだったけど怯まなかった。どころか逆にがっしとブルーの首をそのでかい掌でつかみ、締め上げていく。
「ぐ、ふ……!」
「はっはっは、掴んだぜ……まずは、一人……!」
「このっ! ブルーを放せーっ!」
 俺たちはめいめい怪人を攻撃する――けど、ハッサンサンは体を小揺るぎもさせずにブルーの首を絞め続ける。ダメージは蓄積してるはずなのに、少しも体が動かない――こいつ、格ゲーのスーパーアーマーでも持ってんのかよ……!
「無駄無駄無駄っ! この程度の攻撃じゃ俺を動かせるか! こいつの首、もらったぜ……!」
「ぐ……ぅ」
「くっ……!」
「――ごめんなさい、それは、させません」
「むっ!?」
 ぐいぐいブルーの首を絞めつける怪人が、くわぁっと目を開いた。グリーンが相手の死角から、懐へ飛び込んでたんだ。
「ヤオヨロシールド――スマイト!」
「ぐぁっ!?」
 グリーンの盾を使った打撃は、ハッサンサンの腕を麻痺させたようだった。固まった腕から、ブルーが力を振り絞って転がり落ち、けほけほ喉を鳴らしながらも間合いを離す。
「やったぁっ! ブルー、大丈夫っ?」
「……たりめェだろ、くそッ……おい、……ッグリーン!」
「え!? あ、は、はいっ」
「……ありがと、よッ」
「は、は、はははいっ!」
「えへへ、よかったね、グリーン!」
「……ったく。いちいち面倒くせー奴」
「なッ、てめえらなッ……!」
「喋ってる暇ねぇぜ! みんな、とどめだ!」
『おうっ!』
「つぅっ……てめぇら……!」
 ますます筋肉を膨れ上がらせながらこちらにやってくるハッサンサンを前に、俺たちは陣形を組んだ。それぞれのヤオヨロアームを変形させ、合体させ、ひとつの巨大な大砲へと変える。
「行くぜ、ヤオヨロキャノン――インフィニット・シュートっ!」
 どっごぉぉぉん!
「ぐ……あぁぁーっ!」
 五色の光が混じり合った球体は、一撃で敵の体を吹っ飛ばした。


「よし、やった!」
「う……ぐ、まだだぜぇ……!」
 体の真芯を貫かれたハッサンサンが、ふらつきながらも呻く。耐えられないほどのダメージを与えているはずなのに、その体はじわじわと膨れ上がってきていた。
「! 暴走か!」
「ははっ、そのとおり……暴走すれば二度と元には戻れなくなるが……負けてうちのボスに殺されるよりは、はるかにマシだ……! うおおぉぉおっ!」
 がっ、とハッサンサンが傷口に拳を突っ込む――や、その体は見る間に巨大化した。工場の屋根を、壁を壊しながら、一気に高層ビル並みの大きさへと姿を変える。
「ちっ……いつもながら往生際の悪い奴らだぜ」
「こうなったら、ヤオヨロギガントを召喚するしかないよ!」
「ようし……いくぜ! カモン、ヤオヨロウイングっ!」
「こいっ、ヤオヨロアーマー!」
「召喚、ヤオヨロガーメント!」
「え、えと……ヤオヨロヘルム、来て、くださいっ……!」
「………………だーくそッ、とっとと来いッ、ヤオヨロレッグ!」
 キュィーン! と音を立てて、俺たちのブレスレットが反応する。ヤオヨロブレスレットは通信機であると同時に空間を越えて装備を召喚するテレポーターでもあるんだ。がらがらと廃工場の残骸が転げ落ちる中俺たちが叫ぶと、ぐぉぉぉっと上空の空間が歪み、俺たちの相棒であるヤオヨロエクイップたちが現れる――と同時に、ブレスレットが反応し、俺たちはそれぞれのエクイップの操縦席へと転送される。
 いつもと同じ操縦席に腰かけると、スクリーンに他のみんなのエクイップと、暴れ回る巨大敵怪人の姿が見える。よし、と気合を入れて、俺は操縦レバーをぐいっと押し込んだ。
「合っ………体っ!」
 キュウルルル、カシーン! カシーンカシーン!
 俺たちの巧みな操縦とエクイップたちの出す誘導波で、俺たちは素早くエクイップたちを合体させていく。俺たち五体のエクイップが合体し、操縦席が移動して五人揃った巨大操縦席になる――ヤオヨロジャーの誇る巨大ロボット、ヤオヨロギガントの誕生だ!
『うごぉぉおおぉっ!』
「悪いけどさっさと決めさせてもらうぜ! ギガントソードっ!」
 俺の掛け声に従い、ヤオヨロギガントの右手に巨大な剣が現れる。ヤオヨロギガントの最大にして最強の武器だ。
『うがおぉぉぉっ!』
「敵、来ます!」
「させるか! インフィニティ・エナジーフルバースト! ギガントソード、エクシードモードっ!」
 キュィィィンッ、とギガントソードが輝き、激しく震えはじめる。俺はそれを操縦桿の向こうに感じながら、仲間たちと視線を合わせ、叫びながら一気に振るわせた。
『インフィニット・ギガント・スラーッシュっ!!』
 ズバァーッ!
『う……ぐ、がぁぁーっ!』
 どごぉぉん、と火花を散らしながら爆発する敵怪人に背を向け、俺はビッと親指を立てた。
「決めたぜ!」
「……なんでいちいち相手に背ェ向けんだよ」


「ふむ、なるほど……ドーガスも、だんだんなりふり構わなくなってるね」
 学園の地下に広がるヤオヨロジャーの秘密基地。そこで、ヤオヨロジャー司令の速水は、俺たちの報告を受けてもっともらしくうなずいた。
「対処療法では間に合わなくなってくるやもしれぬな。早く敵の本拠地を突き止めねば」
「そうですね。さっそく今回の情報を分析してみます」
「うんっ、ルビア、博士、頑張ってねっ」
 うなずき合う舞とルビアちゃんにセデルが声をかけると、ルビアちゃんは「うん……お兄ちゃん」と顔を赤らめた。いつもながらこの兄妹ははたから見てるとちょっとヤバい。
「ともかく、今回も無事街の平和を守ることができた。そのことはスポンサーも喜んでらっしゃるそうだよ。これからも学生の本分も忘れずに頑張るように、ってさ」
「がくせいのほんぶんって……なんだよー、そんなことより街の平和が大事だろ? 人の命がかかってんだぜ?」
「それを言うなら学生生活には一人の人間の今後の人生がかかってるからね。なにせスポンサーの仕事が仕事だし。赤点でも取ったら超厳しい補習の上にヤオヨロジャーの活動自粛、どころかクビってことも……」
「そ、そりゃねーよー!」

 ……一方その頃。
「ふむ……ハッサンサンも敗れたか」
 玉座に腰かけたスリーシックスは、右手のワイングラスを物憂げに揺らした。
「仕方ない奴ねぇ……あいつには、同じ武闘家として目をかけてやってたのに」
 レディ・ツヴァイがため息をつきつつ、そのグラスに赤い液体を注ぐ。
「まー、戦闘員除いたら五対一だからねー。けっこう頑張った方なんじゃない?」
 子供のような幼い顔と体を持った、パッパー・ビーが手の中の剣を弄びながら肩をすくめる。
「データは取れました……奴らの対策は数日もあればほぼ完璧なものができるでしょう。あとは実行する者の能力の問題です」
 プロフェッサー・エイティエイトがくいっと眼鏡を押し上げつつ言う。その灰色の髪が、レンズの光を反射してきらめいた。
「……ふむ。では、次は、サードジェネラル。お前に行ってもらおうか」
「え、お……私、ですか」
 巨大な剣を背負った赤毛の将軍は、戸惑ったように目を見開く。
「ああ、お前だ。くれぐれも手など抜かぬようにな。お前が負ければ、お前の教え子がどうなるか、わかっておろう?」
「………は」
「……ふふ。楽しみだな、ヤオヨロジャー。お前たちは、どこまで我に抵抗してくれるのか……」
 スリーシックスは喉の奥で笑声を慣らし、その逆立った蒼い髪を弄ぶようにかき上げた。


「……どーだよっ! な、なっ! 戦隊もの、いいだろ!? 燃えるだろ!?」
「うん、そうだねっ! ボク、すっごく楽しかった!」
「俺は微塵も楽しくねえよッ! なんで俺があんなカッコしてあんなことしなきゃなんねえんだ!」
「いやだってキャラのバランスと感想の来る率考えたら適当なのが他にいなかったし……」
「……というか。それをおいておいても、いろいろ問題がなかったか?」
「へ?」
「まぁ、展開がお約束すぎるのは戦隊ものの宿命だからしょうがないとしよう。だが、なんというか……文章でお約束な展開をなぞるっていうのは、かなり寒くないか? 正直」
「う゛」
「戦闘シーンを描くっていうのとはまた違うからなぁ。特撮の流れをそのまんま文章にしたら寒くなるのは当然だよな。……俺的には戦隊ものっていうの自体には心惹かれるんだが」
「う、うー……け、けどさぁ……」
「まぁまぁ、落ち着いて。まだ始まったばかりなんだ、これからどういう形にするかは試行錯誤していけばいいじゃないか。……ていうか僕がまだうちの子たちと共演できてないのに打ち切りとかありえないだろう……!」
「はいそこ、私情を入れない。……ま、そーだねー……ここは、双方の意見を鑑みて。来訪者さんの反応次第ってことでどう? 反応が好意的だったり、特に反応がなかった場合はとりあえず今回の設定を継続。これはダメだろって反応だったら変える、ってことで」
「う、うー……わかった……」
「じゃ、そういうことで。とりあえず今回は解散。みなさん、お疲れ様でしたー」
『お疲れ様でしたー』

戻る   次へ