拍手小ネタ・マイナーゲーム紹介〜『キャプテン・ラヴ』

セオ「えと……その、みなさん、こんにちは。このサイト、『八百万間堂』の、DQ3・1stで、勇者をやっている、セオ・レイリンバートルと申します」
ロン「同じくDQ3・1stで、現在は賢者をやっているジンロンだ。ロンと呼んでくれ。しかし、こういうところで俺が君のお相手を務めるというのは珍しいな。人気も、君との会話の気安さも、高い人間が他にいるように思うんだが?」
セオ「えと……管理人さんがおっしゃるには、今回の拍手小ネタである、マイナーゲーム紹介において、現代日本人的な受け容れ方をしてくれる方がロンさんしかいない、からだそうです。他の人は、オタク的要素が微塵もないから、管理人さんの望む反応を全然返してくれないだろう、って」
ロン「ふむ……個人的にはそこまで言われるゲームに、ラグたちがどんな反応を示すか見てみたかった気もするが。まぁマイナーゲームの紹介という観点からいえば、確かに俺が一番向いているだろうな。わかった、続けてくれていいぞ」
セオ「あ、はい。えと、マイナーゲーム紹介は、今回で最後になるんじゃないか、と思うんですけれど……今回紹介するゲームは、1998年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売されたPSのダイアローグ・アドベンチャーゲーム、『アナザー・マインド』、です」
ロン「これはまたずいぶんと前のゲームだな。しかも発売元が箱か……なんとなく地雷の気配がしなくもないが」
セオ「それは、人によると、思いますけど。少なくとも管理人さんは、『個人的に最も愛したゲーム』って、言ってました」
ロン「……ふむ? まぁ、とにかくプレイしてみるか。今回は俺と君が協力してゲームを進めるんだったな?」
セオ「はい。アドベンチャーゲームですから、それでもさほど不自由はないだろう、って。……管理人さんは、『個人的にはデュアルショックつきコントローラーを自分自身で操りながらプレイするのが一番』とも言ってましたけど」
ロン「ふむ……そこまで管理人に言われるゲームとなると、俺も純粋に内容が気になってきたな。PSをセットして、始めるとするか」
セオ「はい」

ロン「……これは実写か! 箱が実写のゲームを創っていたとは初めて知った!」
セオ「ええと……? これは、主人公が女の子と話している……? ええと、主人公……デフォルトネームは男性になってますね。女の子の名前入力もある……選択肢を選んで話を進める……というのともちょっと違いますね」
ロン「ああ、どうやらこのゲームはプレイヤーキャラが発言をする際に、述語→述語活用形→主語→修飾語の順に選択していって文章を創るシステムになっているようだな。なるほど、ダイアローグ・アドベンチャーか……」
セオ「なるほど……たとえば、女の子に『君はノートを見るか?』と聞きたいと思ったら、『見る』『使う』『調べる』というように表示された単語の中から『見る』を選び、同様に表示された活用形の中から『見るか?』を選び、主語として表示された『君は』『僕は』『彼は』の中から『君は』を選び、最後に『ゲームを』『ノートを』『テレビを』と表示された中から『ノートを』を選ぶ……そんな風に文章を作っていくんですね」
ロン「そうだな。これはなかなか面白いシステムだ。しかも主人公の台詞は全部プレイヤーの選択によって作られるものだから、プレイヤーがゲームに参加しているという感がすごい。プレイヤーとプレイヤーキャラの間に齟齬がさほど感じられない、と言うべきかもしれんな」
セオ「説明書を読んだんですが、このゲームはプレイヤーが作った文章を喋る人をプレイヤー=A女の子を主人公≠ニ評してるみたいです。プレイヤー≠ノプレイヤー自身の名前を入力することも推奨してるとか。このシステムなら、納得と言うべきでしょうね」
ロン「そうだな……む、少女が目を覚ました……? プレイヤー≠ヘどこにいったんだ」
セオ「(ぶるるっ)わっ」
ロン「どうした、セオ」
セオ「いえ、あの、コントローラーが震えて……なんというか、突然のことなんでびっくりして。これは……説明書にあったつっこみシステム、ですよね?」
ロン「なるほど……いくつかのタイミングで自分からも話しかけられる、というわけか。これもプレイヤーがゲームに参加している感を強めているな……」
セオ「はい。それに、この震える感触がなんというか……身体感覚に訴えてきますから、突然訪れた話しかける機会に気分を盛り上げてくれると思います」
ロン「ふむ……む? ……この話の展開は……もしや、プレイヤー≠ヘ意識だけになって、この少女の中にいる、ということか?」
セオ「(きょとんと)え、はい。説明書にも、そう書いてありましたよね?」
ロン「今回俺は説明書を読まないでプレイしているからな。しかし、これは……俺としては、ものすごく嬉しくない展開だぞ」
セオ「? と、いうと?」
ロン「決まっているだろうが、少女の中に意識だけになって閉じこめられているんだぞ? 男性同性愛者としてげんなりすることはなはだしいぞ! 実際にそんな体験をさせられたらそれはもう精神的拷問としか言いようがないな!」
セオ「! それは……大変ですね。なにか、対処方法を、考えないと……」
ロン「いや、ゲームとしてプレイする分には拷問とまではいかないから気にしないでいい。というか、個人的には突っ込みを期待して言った言葉だから、君がそんな悲痛な顔をする必要はまったくないからな?」
セオ「あ……はい。ごめんなさい」


ロン「ふむ、まだ第一章だからか、いろいろと伏線が張られている感じだな。まだ選択肢がほとんどないが、プレイヤー≠ニ少女を取り巻く謎があちこちにほのめかされている」
セオ「でも、なんというか……病院という閉鎖的な空間にいることもあって、じわじわと真綿で首を絞められるような恐怖感もほのめかされてますね。誰かがそういうことを言ったわけではないのに、消えた看護師さんとか不意に見えたビジョンとかから、『この病院にいては危険なんじゃないか』と自然に思わされる、という……」
ロン「ふむ、確かに。……む、霊安室に行くかどうか、か。ここは分岐点かもしれないな」
セオ「一般的に考えたら、わざわざ夜中に行かなくても、この女の子の言う通り昼に行けばいい、と思うんですが……」
ロン「だが、この病院になにか裏がありそうなことを考えると、昼間に行ってはわからないことを知ることができるかもしれない。迷うところだな。……ただ、この状況だと成人男子……設定によっては成人していないかもしれんが、とにかく男が少女をけしかけて夜中の霊安室に行かせようとしているわけだから、なんとなく忸怩たるものがあるが」
セオ「………ここは、霊安室に行ってみましょう。女の子をできるだけ励まして……」
ロン「ふむ、君にしては珍しい選択な気がするな。他人を動かしてなにかをやらせる、というのはあまり好きではないと思ったが」
セオ「はい、あまり好きではないですけど、これはゲームですし……。………」
ロン「ふむ、霊安室に来たか……実写だということも相まってなかなか雰囲気があるな」
セオ「………。………!」
ロン「む、話が動いたな。急いで通報し……たところでこうくるか。実写だからか、ムービーも意外とよく動く」
セオ「…………、…………」
ロン「……意外と夢中になってやっているな。まぁ自分で物語を書くような習慣の持ち主だから、当然といえば当然かもしれんが……おぉ、追われてる追われてる……これはまた……身体を動かしているのは少女だからろくに抵抗も……む? 意外とあっさり流されたか?」
セオ「……たぶんこれも伏線……たぶんこの女の子は、この病院に関係する陰謀の渦中にある……のかもしれない……」
ロン「……本当に夢中になってやっているな。こっちの話が聞こえてなさそうだ」


セオ「学園祭……呪いの文字と記号……脅迫状……その中に隠された、というよりあからさまに表された暗号……これが意味するところは……」
ロン「ふむ、オカルトと科学とミステリの間をなかなかうまく泳ぎ回っているな。あからさまに怪しい霊能者が出てきた時には驚いたが……というかあの女の化粧の濃さはなんなんだ、まぁ赤いポンチョのような服装の方が常識的に考えると問題だろうが」
セオ「これは……もしかして、彼が? フリーライターという怪しげな職業についている、けれど……彼は信用できる? ……このビジョンは……そうか、ここで説得するしかない……!」
ロン「ふむ。どうやらこのゲームは、少女とプレイヤー≠ノ与えられた謎のビジョンを見る能力を駆使して謎を解いていく、というパターンらしいな。謎自体はさして複雑なものではないが……むしろその方がいいかもしれない。やっている人間が自力で謎を解くことができるからな。自力で謎を解いたというカタルシスはゲームだとより強烈なものになる……もしかすると、これもプレイヤーによりゲームに参加している感覚を与えるためのものかもしれないな。……よくできているじゃないか」
セオ「この話の間の新聞調査とカウンセリング……なにかの伏線? でも、これは……うん……」
ロン「話の幕間に新聞調査と、新しくカウンセリングを受けている様子が描かれるようになったな。こちらを人格乖離障害と思い込んだカウンセラーが、治療のためプレイヤー≠フ人格に心理学的アプローチで迫ろうとするわけか。普通に心理テストのような形を取っているから、素直にやっていればプレイヤー自身の人格が調べられることになる……これもなかなか面白い試みだな。この手の精神にまつわる物語に心理学的アプローチは欠かせないし、それに自分が参加しているという感覚がまた味わえる。アドベンチャーでここまで臨場感が味わえるゲームというのは、ちょっと今までなかったな。俺の知っている範囲では」
セオ「……温泉……旅行……事件……警察………。……うん……うん………」
ロン「おお、第三話は温泉旅行か。わりとミステリの王道、というかお約束的な話をやっているな。だが、この話の展開ではむしろこういうお約束的な題材を扱った方が面白いかもしれん。普通じゃない状況に追い込まれた主人公たちが、その普通じゃない状況の力を借りてなんとかかんとか事件を解決していく、というのはある意味鉄板だが、やはり独特のカタルシスがあるからな」
セオ「………………」
ロン「……しかしセオは本気で夢中になってやっているな。まぁ、物語に入り込む質の人間がやるとハマりそうなゲームではあるが」


セオ「……新たな展開……新たな女性……話の流れからすると、これは……後に響くのか、それとも……」
ロン「ふむ、これまでなんのかんのでのんびり事件を解決していたのがここにきて急展開、という型か。最初はいつもと同じと思わせて……というやつだな。お約束だがなかなか面白い……まぁ、新しい登場人物まで女というのが個人的には嬉しくないが」
セオ「…………」
ロン「しかし、これまでいろんな事件を解決してきたが、前回辺りからオカルトというか空想科学というか、ああいう系統の話が増えてきたな。まぁこの話はもともとそういう系統の話なわけだし、話の本筋に入ってきたと言うべきなんだろうが……」
セオ「…………」
ロン「……ふむ、話が盛り上がってきたな。黒幕、犯罪者、被害者――それらと主人公たちの行動が相まってドラマを創り出していっている。プレイヤー≠フ少女にアドバイスをすることしかできんもどかしさと、ゲーム内の話の展開に関われる範囲がほぼ同じ、という臨場感はやはり切羽詰まった時により輝くな。セオはどうやらやりながら心臓をばくばくいわせているようだぞ」
セオ「……………(ドキドキバクバク)」


ロン「なるほど……ここで『アナザー・マインド』という題名が生きてくるわけか! うん、これは焦るな……だが、だからこそ面白い!」
セオ「…………!(ドキドキバクバク)」

ロン「……さて、クリアまでやってみたが。どうだった、セオ?」
セオ「はい……すごく、面白かったです……!(きらきら) ゲームの臨場感と、物語に参加している感覚がすごくうまく噛み合ってて!」
ロン「臨場感は実写だからということもあるんだろうな。何気に有名な役者を使っていたりするし。主人公の少女は当時アイドルだった少女らしいが、役の雰囲気をうまくつかんでいると思う。時々出てくる実写ムービーシーンにも、ゲーム本編からの違和感をほとんど感じない」
セオ「あと、俺がすごいな、と思ったのは、分岐の多さです。このゲームはいくつもの単語を組み合わせて話す言葉を組み立てるというシステム上、小さな差異まで合わせると分岐がものすごい数になるんですけど、それが全部破綻なく物語に織り込まれている。会話で『あれ、これちゃんと文章が繋がってないな』ということがないし、これまでに言った言葉や反応がしっかりチェックされて相手の反応もそれに伴ったものになっている。これは、物語を重視する観点から見ると、ものすごく気持ちいいことだと思います」
ロン「アドベンチャーゲームとしての難易度自体はさして高くないのがかえって奏功しているな。突然少女の意識の中に放り込まれた意識体としての物語を思う存分楽しむことができる。細かい分岐を楽しむのももちろんだし、素っ頓狂な発言をしてもちゃんとそれに伴った反応が返ってくるから、徹底的に馬鹿になる、という楽しみ方もありだろう。『物語の中に自身が入り込んで、思い通りに話を動かしてみたい』というようなことを考える人には、このゲームは正直かなりお勧めだぞ。少なくとも箱のゲームだからといって敬遠するのはもったいない、現在の箱とはまるっきり違うタイプの隠れた名作だ」
セオ「今手に入れてプレイするのは、ちょっと難しいかも、しれませんけど……もしまだ動くPSを持っていて、ソフトが手に入ったら、一度やってみることをお勧めします。少なくとも管理人さんは……あと、俺も、すごく楽しめたソフトなので」
ロン「……というわけで、今回はちょっと短いがこの辺で終わらせてもらう。なんというかアドベンチャーゲームなので、ネタバレを回避しようと思うとこの程度のことしか喋れんからな……」
セオ「拍手小ネタとしては、ずいぶん、尻切れトンボな形になってしまいますが、とりあえず予定としては、ネタが切れてきたこともあって(他に管理人さんがプレイしているマイナーゲームというとサイトに小説を上げているものがほとんどなので)、今回でマイナーゲーム紹介は終了させて、いただきます。お目汚しご容赦いただき、本当にありがとうございました」





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