この作品には男同士の性行為を描写した部分が存在します。
なので十八歳未満の方は(十八歳以上でも高校生の方も)閲覧を禁じさせていただきます(うっかり迷い込んでしまった男と男の性行為を描写した小説が好きではないという方も非閲覧を推奨します)。
それと、下品な描写もかなりありますのでそういうものにまるっきり耐性がないという方もやめておいた方がよろしいかと。




魔法の剣
「我がロマリアの王城に忍び込み、金の冠を盗み出しし大盗賊、カンダタ! きゃつから金の冠を取り返し、そのそっ首を叩き落して――」
「ひゃんっ!」
 ぞくぞくぅっ! と腰から背筋にかけて走った感覚に、思わず声が漏れる。とたん、周囲の視線がいっせいに自分に向いた。
 そのうち仲間たちの、ゼッシュのものがこちらに向けられるのはいつものことだし、ジェドが自分を心配してこちらを見ているのだというのもわかる。だが必死に声を抑えたのでロマリア王の大声の中ではそれほど目立たなかったはずなのに、こうも周囲の国王やら兵士やら書記官やら(ロマリアには王妃も姫もいたはずなのだが当然のように自分の前には姿を見せなかった)の視線が集まるのは、やはり自分の体質のせいだとしか思えない。
 リクトはたぶん真っ赤であろう顔を力なく振って、なんでもないんですーとアピールすべく微笑んでみせたが、たぶん力が入っておらず(またも)そそる笑顔になってしまっていたのだろう、周囲の男どもはいっせいにごくりと唾を呑み込んだ。何人かは明らかに前を押さえている奴もいる。周囲の視線は自分からまったく外れる気配がなく、むしろ一応正装姿である自分を視姦しようとでもいうように体のあちこちを這い回っている。
 ううううどちくしょー、と半泣きになりながらリクトは呻いた。他の国の王宮では、アリアハンのようなことがないように、なんとしても毅然とした男らしい勇者をやろうと思ったのに。質疑応答の練習やら毅然とした勇者のイメトレとかまでやってたのに。
 それもこれも、全部あいつの。
「ひっあ!」
 ぶぶぶぶっ! と自分の中に埋め込まれた太いものが振動し、リクトはびくびくっ、と身を震わせた。その場に倒れてしまいそうな脱力感を必死に堪える。こんな衆人環視の中でイくなんて死んでも嫌だ。嫌なのに。
「は……あ、っぁ……!」
 ぶぶぶぶ、ぶぶっ、ぶぶぶぶぶぶっ! とアヌスの中を埋め尽くす太いものが与えてくる振動に、どうしても声が漏れてしまう。堪えているのに快感にどうしても身をよじってしまう。悶えてしまう。周囲が明らかに不審そうな、かつ欲情に満ちた視線をぶつけまくっているというのに。
(どちくしょーっ、全部お前のせいなんだからな……!)
 泣きそうになるのを必死に堪えながら睨んだが、視線の先の相手――パーティの仲間の賢者、エイルことエイルナン・サーヴェイスは涼しい顔を崩さなかった。

 考えてみれば、ロマリア王宮を訪れる前日から、おかしなところはあったのだ。
「リクト、久しぶりのベッドだし、今日は思う存分愛し合いまくろうな!」と親指を立ててくるゼッシュを「冗談じゃないなに考えてんだよ明日は王宮に上がるんだぞ!」と必死に退けていると、唐突に「寂莫たる幽明の神宮よ、一時この愚者をその手に絡めとりたまえ=vとラリホーの呪文を唱えて眠らせてくれて。
「明日に備えて早く休め、お前も疲れただろう」と珍しく優しく笑ってくれたので、ついつい「ありがとう……」なんぞと照れ笑いしながら言ってしまったりして。
 そしてエイルってけっこういい奴だなぁ、頭いいし呪文もすごいし、一緒に来てくれてよかったかも、なーんて脳天気なことを考えながらベッドに入って。
 目が覚めたら、自分は空中で亀甲縛りにされていた。
「え……え!? ちょ、なに、なにどうなってんのこれ!?」
「目が覚めたか。この状況でよく寝息を立てていられるものだな、感心するぞ」
 そんなことを宙に浮いた自分の脇に立って涼しい顔で言ってみせたのは、エイルだった。リクトは思わずカッとなって怒鳴る。
「ってちょ、な、エイル!? なんだよこれっ、お前が縛ったわけ、なにやってんだ解けよっ」
「なぜ?」
 が、エイルは涼しい顔を崩さずに戒められた自分を眺めやりながらつい、と単眼鏡を直してみせた。そういう仕草をすると整った顔立ちも相まって異様なまでに嫌味っぽく見える。
「な、なぜって、なぜって、普通仲間に解けって言われたらこういう状況なら」
「解く、と思うのか? 俺が?」
 数秒考えて、思わずさーっと顔から血の気が引いた。こいつが自分を縛ったのなら、この状況で解いたりなんかするわけない。だってこいつは、自分のことを肉奴隷扱いしてくるような奴だった。
「! ! !」
「暴れても無駄だぞ、その縄は俺が魔化した特別製だ。さらにいうなら呪文も使えんぞ、きっちりマホトーンの効果時間拡大呪文式で朝まで封じてある。おまけに騒いでも無駄だ、トシーンを組み込んだ簡易結界を張ってあるからどんなに叫んでも部屋の外に声は漏れん」
「な、ちょ、待てよなに考えてんだよ明日はロマリア王宮に行くんだぞ!? 腰が立たなくなったりしたらお前だってこま」
「腰が立たない? お前が? 十人以上に輪姦されても、直後に平然と戦えたような奴が?」
「うぐ」
 反論しようのないことを言われ口ごもったリクトに、エイルはにやりと口元を笑ませてつらつらと並べ立ててきやがる。
「最近お前は自らの分をわきまえていないようだったからな。ここは少し思い知らせてやらねばならん、と思って一計を案じたのさ」
「ぶって、なんだよそれっ、俺は別に」
「ほう? 俺の奴隷という本分をわきまえず、始終男と乳繰り合っているのが分をわきまえているとでも?」
「はぁっ!? どっ奴隷ってなんで俺がそんな」
「奴隷ではない、と? はっ……そんな風に縛られながら、ペニスをこれほどでかくしている奴が言えた台詞か?」
「んっあ!」
 きゅ、とペニスの先端をつままれて、びくびくっ、とリクトは体を震わせた。確かに、自分のペニスはちょーっとくらいは勃起している、かもしれない。けどそれは単に刺激に反応してるだけで、縄が体を擦る感覚とかを体が勝手に感じてるだけで、それにそーだエイルは寝ている間に自分の体を弄ったに違いないだからこんなにペニスが大きく――
「ひ、いっあ!」
「余裕だな。よそ事を考えている余裕があるのか?」
「や、め、あ!」
 エイルの責めはどんどんと本格化してきていた。ぐいっと乳首を捻ったかと思うと、その先を乳首用のクリップで挟まれる。その先に錘を垂らされる。しゅっしゅっとしごかれて勃起したペニスの根元を紐で縛られ、また錘を垂らされる。
 そうしておきながら錘に引っ張られぐいんと下向きになった乳首を、ペニスを、ぴんと弾く。ぴんと張った糸をぴしぴしと弾く。そのたびにリクトは刺激と快感(こんなことからでも異常なまでに感度のいいリクトは快感を汲み取ってしまうのだ)に「ひ、ひっ」と呻き震えた。
「ほうら、さっきまでの元気はどうした? ペニスの先からこんなにいやらしい汁を垂れ流して。お前は本当に、どうしようもない淫乱だな」
「や、そ、な、ちが」
「なにか違う? お前はずっとこうされたいと思っていたんだろう、この淫売が。雌穴ももうどろどろだな。まったく少し縛られて弄られただけでこうもはしたなく下半身を濡らすとは、本当に根っからの変態だよ、お前は」
「ち、ちが、ちが、うも、あひっ!」
 不意打ちでやや下向きになったペニスの先端をしゅっと指で撫でられた。すでにぬるぬるになってはいるが、やはり亀頭を直接弄られるのは強烈な刺激だった。
「や、め、あぅっ! あひっ、やっ、あ、ひっ、そこ、やめて、いた、おちんちん、いた……っ」
「……ふん。なにを言っている、イイんだろう? さっきまで下向きだったお前のペニスが上向きになっているぞ」
「え……」
 言われて確かめて、愕然とする。確かにリクトのペニスは少しずつ上向きになっていた。勃っていたのに錘のせいで下向きになっていたのが、錘すら上回る力でびくびくと震え始めているのだ。
「や……ちが、これ、ちが……」
「違わないだろうが。お前はご主人さまに苛められるのが好きな淫乱マゾ奴隷だろう。認めたらどうだ、え?」
「ひぃやっ!」
 しゅっ、とまた亀頭を撫でられる。びくん! とまた体ごと大きくペニスが震えた。そして同時にぞくぞくぅっ、と腰の奥に痺れるような感覚が走る。
 それがイく前の快感に似ていると知り、リクトは泣きたくなった。なんでこんな状況でも、俺は感じてしまうんだろう。格好つかないったらありゃしないじゃないか。
「さて……」
 すい、と身を引き、エイルはごそごそとなにやら袋を探った。かと思うと、すっと少なくとも子供の腕ぐらいには太い、卑猥な形の張り方を取り出す。
「そ……それ、挿れる、の?」
「おやおや、なにを怯えているのだか。大人の腕すら何度も呑みこんだ淫売だろうが、お前は」
「そ、んなことなっ」
 実は確かに腕を挿れられたことも何度もあるが、淫売じゃない。それは確かに腕を突っ込まれた時は思いきり声を上げて乱れまくってしまったが、そんなの腕なんて挿れられたら誰だってそうなるはずだ――という真面目な意見を主張することはできなかった。その(少なくともリクトの後孔をすべて塞いでしまうぐらいには太い)張り型が、唐突にぶぶぶぶぶぶぶっと音を立てて震え出したからだ。
「な……なに、それ?」
「ああ、これはな、俺が魔力を付与した魔法の剣だ」
「ま……ほうの、剣? 剣なの……?」
「ああ。これにはな、一度人の体の中に入り込めば使用者以外には抜けない魔力が付与してある。そして使用者が念ずれば即座に好みの強さで振動するという特性もな。近距離ならば念じただけで抜き差しも可能だという痒いところに手が届きっぷりだ、いい出来だと思わんか?」
 数秒考えて、リクトは泣きそうな顔で叫んだ。
「やっぱり張り型として使うつもりなんじゃないかーっ!」
「いやいや、これは剣さ。攻撃力もあるんだしな。賢者として勇者に贈り物をするだけだ。使用感を実地に確かめてもらおうという健気な心意気だというわけさ……」
「ひっ!」
 びくん、と思わず体を震わせる。声をかけも馴らしもせずに、エイルが唐突に後孔にその魔法の剣を挿れてきたのだ。
「ひ……い、ぎ」
「ほう、またペニスの向きが上向いたぞ。やはりひどくされると感じてしまうわけか、どうしようもない淫乱なマゾ奴隷だな、貴様は」
「ちが……ひ、いぃっ!」
 ずぶ。ぬぶぶ。張り型がみちみちと自分の後孔を広げながら奥へ奥へと入りこんでくる。人の指や腕やペニスとは明らかに違う意思のないものの容赦のない動き。それがずに、ずにとリクトの体を貫いていく。
「や、め、ひぎ、あ」
「ふん……前も後ろもぐしょぐしょだな、この淫売が。小便でも漏らしたかのようだ。そうだな――少しばかり手伝いをしてやるか」
 エイルの手が小さくひらめき、リクトのペニスの上でわずかに動く――と思うや、リクトは叫ぶような声で呻いた。
「ひぁぁァッ、や、ひやァ――ッ!!」
「ほう……さすがのお前でも、これは効くか」
「ひぃーっ、いィっ、あぁ――ッ!!」
 体を必死に動かし、腰を揺らし、エイルの手から逃げようとする。だが体を縛る縄はしっかりとリクトの体を宙に固定し、逃してくれなかった。
 エイルの手に握られていたのは、ひどく薄く滑らかな手ぬぐいだった。潤滑用のオイルでたっぷりと濡らされた。
 それでエイルは、リクトの亀頭を磨いているのだ。ぬろー、ぬろー、と左右に動かして。言葉にすればただそれだけ。なのに。
「ひィッ、あひィッ、ひャぁァッ!!」
 ペニスに伝わってくるこの強烈な刺激は。扱くのとは桁が違う、尿道を犯される痛痒感ともまた違う強烈な刺激≠ニしか言いようがない感覚。逃れようとせずにはいられないその感覚に、リクトは大声で呻き、悶えた。
「ふん……空気よ、揺らげ=v
 エイルが小さく呟く。や、リクトは「ひんっ!」と喘ぐような声を上げた。乳首から錘を垂らしている糸が細かく揺れたのだ。当然、乳首には刺激が伝わってくる。それも、自分の味わっている感覚を増加させこそすれ、邪魔にはならない絶妙の範囲で。
「ふん、ここまでやられて乳首を弄られた程度ではしたなく悦ぶのか。お前は本当に淫乱な豚だな。誰にも彼にも腰を振って喘ぐ淫売だ。主人以外の相手には尻尾を振らぬよう、きっちり躾け直してやろう――」
「ひぃぁッ!!」
 唐突に後孔に挿れられた張り型がぶぶぶぶっ、と震えた。しかもリクトのイイところを狙ったように抉りながら。
 ペニスに、乳首に錘を吊るされ。乳首を苛められ、ペニスを磨かれ。後孔に嵌った魔法の剣は、ぶぶぶぶぶぶと強烈な振動でリクトのイイところを抉り――
「い、い、あ、ァ、ァァッ」
「ふん……いやらしく腰を振って。相当辛そうだな。快感と苦痛は紙一重ということが少しはわかったか?」
「ひ、イ、ァぁっ!」
「助けてほしいならこう言ってみろ。『イかせてください、ご主人さま』。この程度のことならば言えるだろう?」
 快感。苦痛。そのどちらかを感じているのかすらわからない強烈な感覚に翻弄され、脳髄の芯が惑乱してしまったリクトの頭には、その言葉に逆らおうという思考すら浮かばなかった。瞳にこぼれ落ちそうなほど涙を浮かべ、エイルを見上げ、体を震わせながら必死に、懇願するように告げる。
「イ、かせてくだ、さい、ご主人、さま……」
「……ふん」
 その時エイルがどんな顔をしているかは、リクトにはよくわからなかった。
 ただエイルは亀頭に被されていた手ぬぐいを取り、潤滑油で濡れた細い指で勢いよくリクトのペニスを扱き、後孔の魔法の剣をぐいっと押しこんだので。
「ひぁっ……!」
 呻き声だか喘ぎ声だかわからない声を漏らすとともに、リクトは吐精してしまった。
 と同時に、後孔に嵌っていた魔法の剣の振動が止まる。訪れた休息に、はぁはぁとリクトは必死に呼吸を整えた。
 と、エイルがリクトの眼前に細い指を突きだす。それは、リクトの吐き出した精液で白く汚されていた。
「舐めろ」
 一方的な言葉。理不尽な要求。
 だが、リクトは、イったばかりで快感の余韻からまだ心身ともに抜け出せておらず、かつ何度もこういうことはヤられて言われてきたので、ついそれが当たり前のような気持ちになってしまい。
「んぷ……う」
 突き出された指の上の精液を舐め、口の中に突っ込まれた指をしゃぶってしまったのだった。

 そのあとさらに何時間もあれこれと嬲られ。エイルが疲れてきたら空中に固定されたまま後孔に魔法の剣を突っ込まれたまま何時間も放置され。
 そして魔法の剣を突っ込まれたまんまでロマリア王の前へ連れてこられている。
 正直、エイルの相手をしているうちに明日ロマリア王に会うんだ―ということは頭の中から吹っ飛びかけていたので、エイルが「使いが来たぞ」と言った時にはしまったァァと顔面蒼白になった。急いで身支度して礼服着なきゃと大慌てになるリクトに(まだ縛られたままで)、エイルは「俺の言うことを聞くなら手伝ってやってもいいぞ」と言った。
 そしてエイルの『言うこと』というのが、後孔に魔法の剣を突っ込んだままロマリア王に謁見しろ、ということだったのだが。
(エイルのばかやろぉぉぉ、なに考えてんだよぉっ! エイルにとってだって俺がロマリア王にちゃんと謁見できなかったら困るはずなのにっ……!)
 だがエイルは涼しい顔で、公衆の面前で明らかに不審な、色情的な悶え方をする自分を見ている。周囲の近衛兵などはざわざわとこちらを見ながら囁き交わしていたりもするのに。ロマリア国王なんか喋りながらも明らかにこっちの痴態をかぶりつきで見ようとしてるっぽいのに。
 もうっほんとになに考えてんだよっ、と泣きそうになりながらもう数度目になる怒り(とどうにかしてよという懇願)の視線を向ける――や、唐突にリクトの脳内に声が響いた。エイルの声だ。
『俺の言うことをなんでも聞く、というならなんとかしてやってもいいぞ』
「!?」
 仰天してエイルの方を見るが、エイルはあくまで涼しい顔を崩さない。口元も穏やかに結ばれたまま、小揺るぎもしない。
『なにを驚いている。コヨーワ――念話の呪文くらいお前も知っているだろうに。俺が優秀な賢者なのはよく知っているだろう?』
(……っっっそんなら最初っから話しててくれてればいいだろぉぉぉっ!?)
『なにを言う。ご主人さまを楽しませるのは奴隷の義務だろう? 人前でその淫奔な本性を表すまいと必死に堪えるお前の姿は、なかなか楽しめたぞ』
(っっっっ!!!! エイルのバカっ、なに考えてんだよほんとにっ、俺が公的な場所で変なとこ見せたらお前だって困るだろぉっ!?)
『特に困りはしないな。お前がどれだけ痴態を示そうと、俺の名声はすでに求める分くらいはしっかりと構築されている』
(っっっっ………〜〜〜っ……もおぉっ、なんでそんな意地悪するんだよーっ、エイルのばかぁっ……!)
 泣きそうになりながら必死にエイルを見やるが、エイルはあくまで涼しい顔をまったく少しも崩しはしない。
『これを意地悪と言われては心外だな。飼っているものにきちんと躾けをするのは主人の義務だろう』
(俺はペットじゃないぃぃっ!)
『で、どうなんだ。なんとかしてほしくはないのか?』
 言われてう、と言葉に詰まる。それはもちろん、この状況からは助けてほしいけれども。
(……なに、させる気?)
『無理なことをさせる気はない。心配するな』
(……ほんとに? なんかおかしなこと言い出したりしない?)
『信じろ。俺がこれまでお前の期待を裏切ったことがあるか?』
(……これをしてほしいっていうのは裏切ったことないけど、嘘はしょっちゅうつくじゃん、エイル……)
『今回は違う。心配するな。絶対にお前ができないことや、お前に不利益になるようなことは要求しない』
(………じゃあ、お願い、する………)
『よし』
 一瞬口元がにやりと笑んだ――ような気がしたが、その違和感を整理する間もなくエイルはひざまずいたまま声を上げた。
「陛下。どうやら我らが勇者は疲れている様子。少し休ませてから改めてお話をうかがわせていただくことはできないでしょうか。できれば……この城の、人の来ない部屋などで」
 そしてにやり、と笑みながら意味ありげに自分とロマリア王を見比べる。ロマリア王は一瞬目を見開いたが、すぐにおほ、と豚の鳴き声のような声を漏らし、うぉっほん、と咳払いをして玉座から立ち上がった。
「うむ、そうだな。すぐに部屋を用意させよう。誰か! すぐに勇者殿を、あの部屋へ!」
 侍従たちが(顔を赤らめつつも)素早く動き、自分のほうへ近寄ってくる。だが体に触れるのはエイルとジェドがさりげなく防いでくれた(ゼッシュはあからさまに噛みついたが)。不服そうな顔はしたものの、無理強いすることなく侍従たちは自分の周囲をしっかり取り囲んで部屋へと案内してくれる。
「リクトっ、リクトっ、そんなに具合が悪かったのか、可哀想に、俺のリクト! やっぱり俺と昨日しなかったせいで」
「ゼッシュ、頼むからちょっと黙っててくんない……?」
「……大丈夫か、リクト。なにか事情があるのなら、話してくれ」
「いっ、いえあのっ、ないです全然本当大丈夫ですからっ!」
 本当は少しも大丈夫ではないしジェドに話してなんとかしてもらいたいというのはやまやまだったのだが、こんなことを正直に話すなんてなんぼなんでも恥ずかしすぎてできない。
 周囲を取り囲まれながらリクトたちは階段を下り、廊下を進み、塔のひとつへと歩いていく――と、その途中、光が射してくる窓から暗い廊下に入って一瞬目が眩んだ、と思った瞬間、ぐいっと腕を引かれてはがいじめにされ、手で口を塞がれた。
「昏黒たる真闇の担い手よ、しばし我らを守りたまえ=v
「!? 勇者さまが……勇者さまが消えたぞっ!」
「ど、どうしたのだっ、どこに行かれたのだっ!?」
「リクト? リクトっ! どこだっ、どこに行ったんだっ、リクトっ!!」
「落ち着け……敵に術をかけられたのかもしれん。急いで周囲を探索しなければ」
「そうだな。陛下にも頼んで侵入した人間がいないか調べてもらおう」
 などともっともらしげにうなずいて、他の人々を別の場所に導いていくその人間を見て、リクトは仰天した。今目の前でジェドたちと喋って、動いて、会話していた人間は、どこからどう見てもエイルだ。
 じゃあ、今自分をはがいじめにして口を塞いでいるこいつは、いったい誰だ?
「……心配するな。俺の方が本物だ」
「! むーっ、むーっ」
「さらに言えば今そこで話してる奴も偽物ではない。レムオーラス――自律思考型の幻覚を創り出す呪文というのがあってな、それを使った。ついでに言えば今俺たちはレムオルの呪文で透明になっている。足音などもしないから、自分たちが声を出さなければ誰にも見つからないわけだ」
「むーっ、むーっ」
「……言っておくが、今ロマリア王配下の奴らに見つかったら、お前はロマリア王への生贄にされるぞ」
「!? むーっ!?」
「今代のロマリア王はなかなかに問題のある王のようでな、色欲もかなりに旺盛なんだそうだ。以前調べたことがあるんだが、客人ですら目をつけた奴は専用の部屋に連れ込まれて押し倒されてしまうらしい。あの口ぶりでは事実もそれに相違ないようだな。なのに問題になっていないということは、記憶処理のために術者を雇っているんだろう。となれば、当然部屋には魔法や行動を封じる術やらなにやらも仕掛けられているだろうな。つまり、部屋に入ってしまえばロマリア王の思うがままというわけだ。わかったか?」
「…………」
 ロマリア王に部屋を用意するように言ったのお前じゃなかったっけ? という言葉を呑みこみつつ、リクトはうなずく。すると、エイルは自分の背後でにやりと笑み、こんなことをぬかしてきた。
「よし。では、要求を言わせてもらおうか」
「…………」
 要求?
「まさか忘れたわけではないだろうな? 俺の言うことを聞いてもらう、とさっき言っただろう?」
「…………」
 確かに言ってたけど。なんでこんな状況で。
「今ここで、俺に抱かれてもらおうか」
「………っっっ!?!???!!!!?」
 リクトは仰天して思わず暴れ出す。今、ここで、俺に抱かれろって、なにそれなんだそれそんなことしたら本当に変態の露出狂じゃないかーっ!
 が、エイルはあくまで冷静に、「あまり暴れると音が立つぞ」などと抜かしつつそれはもう憎ったらしく嫌味たらたらの口調で言ってきた。
「断るのか? 俺とああもはっきり約束をしておきながら? 曲がりなりにも勇者さまが?」
「………っ」
 それは、ちょっと悪いかもとは思うけど。でもこんな要求、呑めるわけ。
「言っただろう? 俺たちは今レムオルの呪文で姿が見えない。さっきもすぐそばにいたのに誰にも気づかれなかった。お前がはしたなく声を上げたりしなければ、誰にも見つかったりしないさ」
「…………」
 でも。だけど。こんな場所で、そんなこと。
「それなのに断ると言うのなら仕方ない。……昨日のお前の痴態を、ロマリア城下の広場にでも幻影呪文で映し出させてもらおうか」
「!!?」
「もちろんお前がきちんと約束を守ってくれるならそんなことはしないさ。だが、俺に助けられておきながらあっさり約束を反故にするような相手には、こちらも実力行使に出る必要があるからな」
「…………」
 それは。約束を破るのはよくないと、思うけど。でも、いくらなんでも。こんなこと。こんなこと――
「さぁ――どうする?」
 耳元で、笑みを含んだ声で囁かれ、リクトは泣きそうになりつつも、こくん、とうなずいた。実際「いやじゃあぁぁ!」と叫んで暴れてやりたい気は満々だったのだが、以前実際にそういう上映会のようなものをやられた(一応事情を知っている人間の外には漏れなかった)ことのあるリクトとしては、この状況ではそれ以外にやりようが見つからなかったのだ。
「よし、いい子だ」
 言ってエイルは軽くリクトの頭を撫で――たと思った次の瞬間、ぐいっと肩を引き落とされた。強制的にしゃがまされ、顔の前に突き出されたのはエイルの股間だ。
「しゃぶれ」
「…………っ!」
 こ、この野郎ーっ、と思いつつも、他にどうしようもなくてリクトは顔を真っ赤にして目を伏せながらエイルの前を開きペニスを取りだした。隣の窓からはさんさんと陽の光が差し込む、豪奢な装飾の施されたロマリアの王城内の廊下で。
 れろ、ぬろ。
 まずは舌先でぬろぬろと竿を舐める。下から上まで、つぅっと舌を走らせて。
 ねろ、ぬちょ、ちゅぶっ。しゅっぢゅっ。じゅぷ、じゅぽっ。
 それから先端を隅から隅まで掃除するように舐め、口内に咥えこむ。口内で吸い、舐めながら竿の部分をしゅっしゅっと扱く。そして喉の奥まで呑みこみ喉で扱く。
 ……こんなやり方をどーして俺は当然のようにわかってしまうんだー、とちょっぴり泣きそうになったがそんなことを言っている場合ではない。
「……っ、いいだろう。そこに立って、尻をこちらに向けろ」
 うううう、本当になんでこんなー、と思いつつも素直に立って下穿きを下ろし、ぐいっと尻を持ち上げる。左右に割った方がいいのかな、と思ってからなんでそこまで俺が! とぶんぶんと首を振る。
「なにやら独り相撲を取っているようだが……俺に抱かれている時にそんなことを考えていていいとでも思っているのか」
 そんな言葉と共にぐいっ、と髪をつかまれ、顔を上向きにされた。息が苦しくなって「ひっぐ」と潰れた蛙のような声が出ると同時に口が開いて自然に舌が突き出されてしまった。
「ふん、口が寂しいか? そんなに前後に男を咥えこんでいなければ物足りないのか。まったく、お前ほどに淫乱な奴は俺も初めて見たな」
「ち、が、あ!」
 ずぼっ、と後孔を塞いでいたものがなくなった、かと思うと今度は熱く、ぬめぬめとしたものが後孔に挿れられてくる。エイルのだ、とリクトは思ってから、見もしないのに後孔の感覚でそれがわかってしまう我が身を嘆いてうつむいた。
 が、すぐにそんな余裕はなくなった。ずん、ずんっ、と音が感じられるほどの勢いで、エイルがリクトの孔を突き始めたからだ。
 ぐちゅ、ぐち、ぐちゅ。そんな水音も経つほど勢いよく、腰を尻に打ちつける。いつの間にか濡れていた自分の後孔はあっさりとその暴虐も呑みこんでしまったが、そのエイルにしてはひどくわかりやすい刺激は、脇腹を、尻を、乳首を、いつの間にか服をはだけ、突っ込んで弄ってくる手のせいもあり、どんどんとリクトの性感を高めていった。
「あ、あ、ひんっ、あ、あっ……」
「……そんなに大きな喘ぎ声を出していいのか? 声を出せば通りがかった奴にも聞こえるんだが?」
 エイルの言葉に、ざーっと音を立てて体から血の気が引いた。そうだ、ここは、王城の中だった。しかもよその国の。普通に人の通る、こんなところでこんなことをやっちゃ絶対にいけない場
「ひっぅ!」
 思わず口を押さえた。それでも声は漏れてしまう。エイルがリクトの一番敏感な辺りを突いたのだ。
 抗議しようと顔を向けようとしたら、ぐいっと髪を引かれて顔を窓に押しつけられ、両腕をぐいっと引かれた。さらに尻を突き出すような格好になってしまい、結果的により深く抉られ声を漏らす。
「な、に、やめ」
「ああそうだ。言い忘れていたがな。このレムオルという呪文、あまり激しく動きすぎても解けるんだ」
「!!」
「あまり暴れると呪文が解けてしまうかもしれないな? そうしたら、外からこちらを見た奴ら全員に、お前のみっともない姿が見られてしまうわけだ」
「ひ……」
「わかったならせいぜい声を抑えて、いろ!」
「っ!」
 ぱん、ぱん、ぱん。さらに勢いよく腰の奥を突かれる。イイところというよりは、一番刺激を感じてしまう敏感な辺りを。そこを突かれるとどうしても声が漏れてしまう、そんなところを何度も。必死に我慢しようとしても、口を押さえることはできないし、無理やり手を振りほどこうとして、もし呪文が解けたら――
「っひ! ぅぁ! ゃ、ぁ、ひっぃ……!」
「勇者さまー! どちらにいらっしゃるんですかぁー!」
「!!!!」
 リクトは完全に硬直した。人が。人が来てしまう。本当に。こんなことをしているのに。すぐ横に。
「いないなぁ、勇者さま……どこに行かれたんだろう」
 声はどんどん近付いてくる。あっち行ってどっか行って、と必死に懇願するリクトの内心とは正反対に。うわぁどうしようどうしよう、と頭の中は惑乱している――のに、エイルはまた、勢いよく腰を打ちつけ始めた。
「っ! ! っ、っ!」
 必死に唇を噛みしめて声を堪える。なのにエイルはお構いなしにどんどん遠慮なく体をいじくってくる。乳首を、脇腹を、尻を、太腿を、耳を、首筋を――そしてペニスを。玉を潰さんばかりに揉み、竿を扱いて、ぐりぐりと掌で亀頭を苛めて。自分の弱いところを、的確に。
「勇者さまー? なんだかこっちから、声が聞こえたような……?」
 気配が近づいてくる。足音が、声が。自分たちのそばに。来てしまう。見られてしまう、気づかれてしまう。自分が、ここで、こんなことを。
「っ、っ、っ、っひ、いっ」
 ずんっ、とエイルが思いきり感じるところを突き、上体を反らさせてペニスを擦り。ねろりと耳を、首筋を、自分の弱いところを舐め――
「ひっ、ぁ、ぁぁ、ぁっ……ぁ……!」
 リクトは、必死に堪え抑制しようと死力を振り絞りながらも、すすり泣くような声を漏らしながら、みっともなく達した。びゅっびゅっ、と白濁が飛び出し、窓に引っかかって白い染みを作りながら、でろりと床へと垂れていった。

「……なー、リクトー」
「なに」
「なんでエイルの奴簀巻きにして引きずったりしてんの? や、別に俺はエイルがどーなろーと全然オッケーっつーかむしろそれがベストって感じなんだけどさ、もしリクト怒らせるようなことやったんだったらやっぱ未来の夫として俺もヤキ入れとかなきゃなんねーと」
「悪いけどちょっと黙っててくれる。俺、今かなりイライラしてるから」
「お、おう……」
 戸惑ったような声で答えるゼッシュに顔も向けず、リクトはずかずかと簀巻きにしたエイルを引きずっている縄を肩にかけ直しながら歩を進める。
 取り繕ってる余裕はなかった。簀巻きの人間をずりずり引きずっているというだけでもかなり恥ずかしいのに、何度も何度も勝手に脳があの時のことをリピートするのを止められそうにない。
 だって、透明のままヤられるのはまだしも、人がいると思わせないとつまらないから、なんて理由でわざわざ人の気配やら声やらを呪文で作るなんて。しかもそれをネタにまたもいびってさらにえっちなこと(今度は貞操帯を嵌めて隷従しますと誓えとか言い出したのだ)させようとするなんて。そんな奴、ちょっとくらい本気で痛い目に合わせなきゃ気がすまない。
 というか、こういう風に誰かにヤられたあと前後の見境なくキレたりするのは(こんなことしたら絶対あとで猛反撃喰らうとわかってはいるのだ)、地味にこれが初めてかもしれなかった。ゼッシュ以外で。ゼッシュはもうほとんど家族なんじゃないかと思うほど一緒にいる奴なので別だと考えていたのだが、エイルもそんなような存在だと認識し始めているんだろうか。
 あんなに意地悪な変態野郎なのに。俺のこと変態とか淫乱とか淫売とか露出狂とか言うし。そりゃ、ちょっとは普段より感じてたかもしれない、けどそんな、俺は別にい、淫乱とか、マゾとか、変態とか、そんなんじゃ……
「リクト、どうした」
「へいっ!?」
「顔が真っ赤だぞ」
「なっなんでもないですなんでもっ! えぇ本当にまったくなんでもっ、あはははっ」
 ぶんぶんと勢いよく首を振って、わー恥ずかしーっと顔を押さえながら、リクトはずりずり簀巻きにしたエイルを引きずって早足で歩き出した。下半身が妙に熱を持っているのは、いつものことなので別に気にしてはいなかったが。

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