あとがき。

・書いてみて初めてわかったこと。
 =ゲットはユィーナ以外にはツンデレ。

 いやーまったくゲットがこうも見事にツンデレるとは思っていなかったので驚きました。自分が思っていたよりゲットは仲間たちのことが好きだったらしいです。
 さて、もう一年以上前に……なってしまってるんですねぇもう……唐突に更新したDQ3・100題2nd隠し作品。驚かれた方も多いのではないでしょうか。うちには珍しく2ndってガチ男女カプ作品ですもんね。そこにホモを絡めるとは、と反感を持たれた方もいるのではないかとちょっとドキドキしたりしてたんですが。
 すいません、ですがこれはずっと以前からの決め事なんです。それこそ自分がまともに小説を書くようになってからの。
 自分には心にひとつ、どんな作品を書く時も念頭に置こうと決めていたことがあります。それは……
『一作品一ホモ』。
 ……いやすいませんごめんなさい石を投げないでください。でもすいませんこれはマジな話。
 今を遡ること十年以上。自分は当然その頃からホモが好きでした。ですが同時に世に溢れるホモ作品の恋愛至上っぷりにちょーっと面白くない気持ちを持っておりました。
 なんというか、基本的に女性向けホモ作品って女性向けホモであることが作品のテーマと密接不可分じゃないですか。なんていうか、女性向けホモじゃなかったら成立しない作品、みたいな。商業BLも(最近の情勢はあまり詳しくないので一昔前の話ですが)ホモのお約束に乗っ取った狭い世界でしか通用しない恋愛ものがほとんどだったし。
 というかそれ以前にこれ金を取っていいのかみたいな作品かなり多かったんですがね。ネット上に転がっているその手の作品もそーいうの書いてみたいからお約束に乗っ取って書いてみましたー、なんてのが(特に二次創作だと)ほとんどだったし。まぁこれは今もそういう傾向はありますが。
 男性向けホモ……ゲイ向け作品は基本オカズ用としてしか存在しないものでしたし。今も昔も同じく。まぁそんな中でも創り手はそれぞれの作品に自分なりのクリエイター魂を籠めていたりもしたんですが。これも今も昔も変わらずにね。
 もちろん、女性向けホモにしろゲイ向けにしろ、そういった作品が悪いというわけではありません。お約束、様式美は美しいからこそお約束たりえるのです。そういったお約束を求めて作品を希求する読者の気持ちに応えようとするのは商業同人問わずに重要なことだと思います(外に表した表現である以上受け手との関係性抜きには存在しえませんから)。
 オカズ的作品ももちろん。オカズは男性にとっては必需品、必須アイテムです(男性は定期的に性欲を放出するようにできている生物です)。どうしてもヘテロに比べそういうものを手に入れる機会が少なくなってしまうゲイとしては、ゲイ作品にオカズとしての価値を求めるのは当然ですし、オカズであるがゆえに高い価値を持つ作品、というものも数多存在します。
 でもね、それはそれとして、なんつーか、フツーにホモな作品って、ないの? あっちゃ駄目なの? と思ったわけですよ、自分は。ほら、うちのだと君物のロンみたいな。普通の人間はヘテロなフツーの世界の中で、あるいはそうでなくとも別のテーマがありつつそれでもしっかりホモがホモとして存在している作品。
 あ、それとここでのホモ、というか自分がホモという時は、ゲイを指す他に『男性同士の尋常な枠組みから一歩以上はみ出した強い繋がり』ぐらいの意味で使ってます。性欲が存在しない場合もある。そんなのホモじゃないじゃん、という方には木原敏江の『摩利と新吾』をお勧めしておきます。友情だが、むしろそれであるがゆえにホモやらJUNEやらやおいやらの匂いを感じる、ということもある!
 今はそういう作品を商業同人問わず自分もいくつも知っていますけどね。当時は『ないならわしが書いてやる!』と思ったわけ。
 それと……というか、すいませんたぶんそれ以上強い目的として、あるサイトさんでね、『ホモとは全然関係ない作品の中にホモを見出す』という書評があって、それが自分すんげー好きでね。面白い! と思ってね。『わしもフツーの作品の中にホモを見出してもらえるような作品を書きたいなぁ……』と思ってしまったのですよ(これまでの長い前振りは一体……)。
 だってそういう思わぬホモ萌え発見って楽しいじゃないですか! 少なくともわしは大好きだ。そういうのを見るとそこだけ何度も読み返す。真正面からのホモでないけど『これはホモだ!』というのを見るとはっきりゆってフツーのホモより萌える! BLよりノーマルな作品にホモを見出す二次創作の方が圧倒的に多いのと同じ感じですね。
 で、そんなわけでわしは『一作品一ホモ』を心に誓い、以来書く作品のすべてにこっそりとホモを出してきたのでございます。隠しじゃない作品にもどれにも必ずホモがいます。これにはホモがいない、と思われるような作品でもわしの脳内には必ずいて登場の時を待っているのです!
 ガンパレとかピノッチアとかはもーモロですし、シスプリは勝と兄一の関係はホモとしか言いようがありませんし(勝は兄一にだけはツンデレ)。クレしんは原作からしてアレですし、S&Tはトークやら企画のあとがきやらにホモ語りを載せてますし。
 DQ5は主人公とヘンリーがやましいことはないんだけど的ホモですし(企画の質問の隠し編を参照のこと)、九龍とDQ8はそもそも隠しでも扱ってる作品ですし、サクラは原作の昴さんの少年愛的雰囲気かもし出させっぷりの上手さには脱帽ですしサニーも新次郎をおちょくるのに相当労力使ってる辺りが非常にソレっぽいですし、なによりうちの作品内では士官学校の先輩たちがモロに大正浪漫的ホモです。
 DQ3の隠しじゃないのにも全てに必ずホモがいます。3rdはクトルとラグナの間の運命的絆っぷりがホモですし4thはエジーディオがホモです。無自覚の。エマのために命捨ててもついていこうとするアドルのために命懸けちゃうんですよ奴は!
 5thはロットがホモなんです。自分的にはかなりあからさまにしてるつもり。拍手質問とかでもロットはダクに片想いしていますよ、というのを相当ストレートに匂わせているのです。
 8thはまぁこれから書く時ちょっと驚いてもらいたいので飛ばすとして、9thはレヴォリ(『さまよう魂』で出てきたユーリーの兄貴分の魔王倒すために軍動かそうとしてる兵士)がホモです。ユーリーのために命懸けて軍動かして魔王倒そうとしている段階で相当ですが、奴は無自覚ながら真性入ってるのでユーリーが女だって知るとガッカリするんですよ。相当落ち込むと思います。奴的には失恋したのと同じくらいかそれ以上のショックですね(恋愛というのは肉体的欲望も含めて恋愛ということ。その人なら性別なんて関係ないとか言えちゃうのはもはや純粋な愛です。桁がひとつ以上違う。そんくらいなら性的に範疇外だろうがセックスのひとつやふたつできようさ、ってわけ)。
 11thはステルヴィオがホモというか、自覚ありのバイという設定なんですよ。で、好みがツンデレでツン状態のを落としてくのが好き、って拍手質問で書いてますでしょ? つまり奴的に好みなのはゴドフレードなんです、実は。ゴドたちに声かけたのも、もちろん一番大きな理由はステルの優しいおせっかいさのせいなんですけど、ゴドのことを見て話しぶりとか聞いて『お、ちょっと好み』と思ったことも理由のひとつなんです。
 12thはまぁああいう作品なのでまだ出てきてはいませんが(落としゲーで攻略対象同士がくっついてしまうのは禁じ手じゃないですか)、自分の脳内にはホモがしっかり存在し、いつか出てくる日を待っているのですよ。
 ……すいません、書いてて思ったんですが、これ作品をノーマルに見てるホモ苦手な方からすると相当嫌な話ですよね……ホモ好きな方でも思ってもないところでホモ出てきたらイヤとかなんでもかんでもホモにするの興ざめとかいう方いっぱいいらっしゃいますよね……スマン、ごめん、許して。悪気はないんです……が悪気がないからといってすべて許されるもんでもないですよね。
 いやでもさ、なんていうかさ、自身変態なわしからすると、『ホモ苦手ー』ってノマ好きな方々の発言って悲しいのよね。なんつーか、『アンタ嫌い、生きる価値なし』って言われたみたいでさ。まぁネットなんだからそういう発言を目にすることも当然覚悟の上でいなくちゃいけないとは思うし、そもそも自分のサイトで自分の思うように発言するのは当たり前なんだから文句をつける気はさらさらないのだけれども。
 ただやっぱり自分がきっぱり拒絶された、という気分は拭えないので、「ちぇっちぇっ」と軽く落ち込みたい気分にはなったりするのですよ。なので自分の書く作品でそういう風に設定付けして楽しむくらいはどうか許していただきたいです。厚かましくて申し訳ないんですが。
 で、2ndパーティ。ここのホモは、もうおわかりのようにヴェイル・レーディネスくんです。
 彼がゲットが好きだ、という設定は相当早くから自分の中にありました。設定を固めてるうちにもう思いついてたような気がする。
 ていうか、自分ゲットってある意味相当いい男だと思うんですね。漢的に。惚れた女のために命を懸けて世界を救う、そんな男が身近にいたら男として憧れるものはあると思う。普通に。
 もちろんその行動がアレなので、普通なら呆れが先にたつだろうとも思うんですが。人としてアウトですが。でもヴェイルのキャラを練っていくうちにですね、『こいつ、もしかしてゲットのこと相当好き……?』とか思えてきちゃったんです。
 まーたぶん自分が男が二人いたらホモを考えるようなどーしよーもないホモ好きだからなんでしょうが(自重しろ自分)、自分は男同士が(男女でも女同士でもだけど男同士は特にね)仲間として一緒に戦っていた場合、その間に仲間としての絆が結ばれていないと悲しくなってしまう性癖の持ち主です。喧嘩しててもムカついててもいいんだけど、ちゃんと人格を認めて、尊重していてほしいのね。心の中では。相手をどーでもいいとか関係ないとか、そういう風に思わないでほしいのよ。
 で、自分の書く作品であるからにはやはり自分が楽しいように書きたいので、自分はこの二人の間にも絆が結ばれていてほしいなぁと思いました。が、ゲットはユィーナ以外見えてない奴なので、ヴェイルに対する感情はそれこそどうでもいい≠ニかいてもいなくてもどっちでもいい≠チていうのが妥当なものなんですよ。これはゲットのキャラ設定の根幹にも関わってくる問題なので、どー転んでもそうならざるをえない。そこを崩したらゲットのキャラ、ひいては知花という物語自体が崩壊する。
 じゃー露骨に冷え冷えした関係なのか、というと、ちょろっと話書いてみたり設定とかでキャラの掛け合いとかやってみた感じ、そーいうわけでもないっぽい。ていうかちゃんと仲間としてやってるっぽい。それなりの(あくまでそれなりの、なんですが)絆が結ばれてる気がする。
 となると、ゲットから手を伸ばすのはまずありえない以上、ヴェイルから手を伸ばしたとしか考えられないわけで。つまりヴェイルにはゲットにそれだけする価値があると思ってたわけで。絆を結びたいと思っていたわけで。
 そこらへんをいろいろ考えてくと、『ヴェイルゲットのこと好きなんじゃねーの?』としか思えなくなってきてしまったわけですよ。なんでもかんでも恋愛にしたいわけじゃないけど、自分の考えるホモ――通常の範囲から一歩踏み出した感情ではあると思った。仲間としてちゃんと認めてほしい、絆を結びたい、と思ってると思えた。
 だから本編中でもヴェイルはけっこういっしょーけんめーゲットに尽くしてます。仲間として。ゲットを頑張って理解しようとしたり、自分が泣くほど一生懸命ゲットの相談に乗ったりね。
 まぁ、ゲットはユィーナ以外基本興味ない奴なので、どーしてもユィーナ関連以外では関われないんですけど。それがけっこう寂しかったりしてるんですけど。それでもゲットがそういう時にちらっと見せるこちらを気遣うような態度がヴェイル的に非常に嬉しかったりした感じなんです。
 で。本編が終わって、三人で旅を始めるという時に、自覚するんですが。当然ながらヴェイル自身、この恋が報われるなんて考えてもいないわけです。だってゲットがユィーナ以外を好きになるなんてありえないもん。それをヴェイルはよく知ってますし理解してる。
 だからヴェイルはゲットに自分を好きになってほしかったわけじゃない。ていうかユィーナと別れてなんてほしくない。ユィーナが可哀想だしゲットの幸福はユィーナと共にあることにあると思うし(作中でもありますがヴェイルは常識的な人間なので同性愛に幸福な結末を考えられないんです)。それにヴェイルはユィーナに惚れて暴走しまくる、ユィーナのためなら世界だって救っちゃうゲットが好きになったわけですから、ゲットの好意が自分に向けられたらうろたえちゃうと思う。
 なのにすっぱり諦めて忘れられなかったのは、ですね。ゲットの中の、自分の存在の軽さが悲しかったからなんですね。
 存在の耐えられない軽さ……ってわけでもないですけど、ヴェイルはこれまでヴェイルなりに頑張ってみんなと一緒に旅してきて、パーティに貢献してきたつもりなんですが、ゲットとも自分なりに頑張って仲良くなろうとしてきたんですが。でもあんまり報われてないというか、ゲットの自分に対するどうでもよさ加減というのが悲しかったんですよ。
 これまで一緒に戦ってきた、悔しいけど男として憧れの気持ちも持ってる好きな相手、そうでなくともものすごく大切な仲間に、自分が少しも重要視されてないというか、作中でも言ってるようにそのへんの有象無象と大して変わんないくらいにしか思われてないんじゃないかって気持ちがあってですね、それに対する否定材料がなんにもなくて。自分のこれまでの二年間やってきたことがまるっきり無駄だったように思えちゃって、好きだって気持ちも全然意味なくて、それがすんげー悲しくて切なかったんですよ。
 世界を救った旅で、そうでなくとも自分にとってはそれこそ人生を変えたほどの旅だったのにね。一生もんの大切な仲間なのにね。誰よりそう思ってもらおうと頑張ってきた相手がこっちのこと全然どーでもよさげって感じだったらそりゃ悲しいだろーなーと。
 まーそーいう(ユィーナ以外見えてない)ゲットに惚れたというのを自覚してるのがまたアレなんですけど。ともあれそんなこんなで未練を引きずってたのが、そんなこんなで吹っ切れました、という話でした。
 この二人がくっつくというのは話の設定上ありえないんですけど、ちょっとでもヴェイルに報われさせてやりたくて、仲間としてフツーなレベル、ということでハグをさせたりしました。これはゲット的にはもー超最大級の譲歩というか、友情表現です。ゲットとしても仲間のことはユィーナのことがなくてもこんなに大切に思ってたんですねぇ(渋々ながらもつれなくしたの悪かったかなーと思ってなんでもお願い聞いてやろうとするぐらい。男に(ユィーナ以外という時点で塵芥だけどより遠慮がなくなるのは確か)。あのゲットが)。自覚もあんまりなさげですけど。
 蘇れる死ならあっさり死んでもいいやって攻撃するくせに、蘇れないロストとなるといきなり思い止まるってあまりにカッコつかないというか人としてどうよとか、蘇れない死なのかもしれないなんてこと考えもせず攻撃するなんて……とかいろいろ思うところはおありでしょうが、まぁゲットは基本的にすごくバカなので、あんまり細かいこととか人の気持ちとか考えられないんですよ。だから強いってのもありますけど、まぁこれからはユィーナ以外の存在の気持ちを気遣うということもちょっとずつ始めてってくれると思います。おおなんだヴェイルすごくゲットに影響残してるじゃないか。
 ともあれ、くっつきはしませんでしたけど、ヴェイル的にはすごく満たされた恋の結末だったと思います。ヴェイル別にゲットとくっつきたかったわけじゃないし。それに自分としては、ヴェイルを男とくっつけちゃうのは可哀想という気持ちがあって……(常識強いのでなかなか開き直れなさそうだと思うんですよ)。まぁ彼がゲットとくっつくとしたら現代版パラレルとかでユィーナが出てこない大学生カップルとかでじゃないかな。ルームシェアからだらだら同棲とかしてそうな。
 それでも絶対ヴェイルからの矢印の方がでかくて、ゲットは基本仏頂面で愛想ない対応しかしないと思うけど。いろいろ尽くすヴェイルにいっつもどーでもよさげな扱いしかしないんで、ヴェイルはいっつもため息で周りの人たち(大学のゲイ仲間とか)に慰められてゲットは叱られてんだけど、ゲットもちゃんとヴェイルのこと愛してるは愛してて緊急時になると全力でヴェイル守って日常生活でもたま〜に愛情表現してくれるから、ヴェイルはすんごい嬉しくなっちゃってゲットから離れられないんだよ……ってなにをパラレル話で熱く語っているのだ自分。
 それはともかく、100題での知花はあと一回、隠してない方でアリアハンに戻る方法を見つけて十年かそれ以上経って、というのを予定しています。まぁDQ3お約束の、幸せなその後みたいな? もちろん予定は未定ですけど。
 ゲットとユィーナの幸せなその後はもちろん、ディラとヴェイルがどうなったかもしっかり書くつもりなんで、楽しみにしていただけると嬉しいですよ。……少なくとも年単位で先の話なんだけどさ……うおおしっかりしろ自分ー!

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