風祭は闇の中で一人縛られていた。 腕から足から指先まで、とにかくがんじがらめに縛られているので立つこともできない。 口には猿轡、手は後ろ手にされ、手から伸びた縄は柱に括りつけられている。どうにも動きようのないみじめな姿だったが、それでも風祭の目はきっと強い意思と怒りをたたえ闇を睨んでいた。 と、光が差した。風祭を閉じこめている部屋の戸が開いたのだ。そこから何人もの男どもがどやどやと入ってくる。 何本もの蝋燭に火がつけられ、戸が再び閉じられた。薄ぼんやりとした光が部屋の中を照らし出す。 風祭はぎっ、と殺気をこめて男どもを睨んだ。 くくくっ、と周囲の男どもから野卑な笑い声が漏れる。 「一日飲まず食わずで閉じこめておいてもまだ睨む元気があるとは、根性のある餓鬼だぜ」 「そのくらいでねえと調教しがいがねえよ。この前攫ってきた餓鬼は三日マワしただけであっさり壊れて自分から腰振りはじめやがって、面白くも何ともなかったもんなあ」 「くけけ……この生意気な餓鬼が自分からケツ振って男の魔羅を咥えこむようになるのか。今から想像しただけでゾクゾクするぜ」 口々に勝手なことを言いつつ、風祭を取り囲む。一人の男が猿轡に手をかけ、外した。 「どうだ? 調教される前に何か言っときたいことでもあるか?」 風祭は無言のまま男に唾を吐きかけた。 凄絶な殺気をこめて男どもを睨みつつ、フンと鼻で笑ってみせる。 その態度に、男どもは笑った。 「ここまでイキのいい餓鬼はひさしぶりだな!」 「これからたっぷりと自分の立場ってやつを思い知ることになるのになあ。くけけっ……」 「よし、まずは薬だ」 「おうよ」 男どもの一人が何かの液体を含ませた布切れを手に風祭に近寄ってきた。 風祭は必死に暴れるが、体中を縛られていては大した抵抗もできない。布切れを鼻と口に押し当てられる。 風祭は何とか息を止めようとするが、暴れておいていつまでも呼吸しないでいられるものではない。耐えられず大きく口を開けて、布切れから漂ってくる匂いを思いきり吸いこんでしまった。 「ウッ……! ゲホッゲホッ!」 咳き込む風祭に、男どもは笑う。 「その布にはなあ、筋肉を緩める薬がたっぷりと染み込ませてあったんだよ」 「これでもうお前は縄を解いても動くこともできねえってわけだ」 「そんで、もう一発」 また風祭の口に別の布切れが押し当てられる。 「グゥッ……!」 「今度のはな、身体中が気持ちようくなっちまうお薬なんだよ」 「最初はお前も気持ち良くしてやんねえとなあ」 「まあ心配すんな、すぐにこんなもんなくても男の魔羅が恋しくてたまんねえ淫売餓鬼になれるって」 「てめェらッ……!」 風祭はぎっと男どもを睨む――が、次第に体が床に横たえられてきてしまった。 「ほほ……ふふひゃほうほほはっ……」 必死に喋るが口が回っていない。男どもが下品な声を上げた。 「くひゃははは! 薬が効いてきたみてえだなあ?」 「ケツもいい感じに緩んでるだろ。さっさと犯ってやるとするか」 風祭の体の縄が解かれ、縛りなおされる。体が動けば即座にこの男どもを叩きのめしていただろうが、薬のせいで指先すら動かすことができない。 風祭の手は前に突き出され、手首を縛られて縄の先を梁にかけられた。腰も縛られて、その縄の先は真上の梁にかけられる。 縄に腰と腕を上げさせられて、四つん這いから上半身を浮かせた形になった。男どもはその姿を見て笑みを交わす。 「じゃ、さっそく剥くか」 「いつも通りに?」 「当然だろ?」 「だよなあ。へっけっけ……」 男どもは風祭を取り囲むと、一斉に手を伸ばした。その手には、鈍く裁ちばさみが光っている。 じゃきっ。 風祭の着物にはさみが入った。 じゃき、じゃき、じゃきと音を立ててどんどんとはさみは風祭の着物を切り裂いていく。百数えるか数えないかのうちに、風祭の着物はぼろきれと化して風祭の体にだらしなく垂れ下がる。 「さぁて、じゃあご開帳といくか」 男どもは笑いながら風祭の尻と股間に垂れ下がった布を取り去った。尻と股間だけを剥き出しにして、体中にズタズタになった着物を垂れ下がらせた、ひどくいやらしい格好になる。 「おうおう、やっぱこの格好は燃えるねえ」 「みっともねえなあ、ケツと魔羅丸出しにして。恥ずかしくねえのか?」 「………!」 体に力が入らないながらも、風祭は渾身の気迫を込めて男どもを睨む。だが男どもは怯みもせず、また体中に手を伸ばす。 「てめえみてえな生意気な餓鬼はな、最初が肝心なんだ」 「数日ヤりまくってイかせなけりゃあ、すぐにてめえから腰を振るようになる」 「おめえがどこまで耐えられるか、楽しみだぜ」 言いながら男どもの手は、手早く風祭の一物を紐で縛る。特に根元は念入りに。風祭をイかせないようにしようというのである。 「ン……ッ!」 「お、この餓鬼もう勃ってきやがったぜ!」 男の言葉通り、縛られる時に少し触れただけで風祭の一物は勃ち上がりかけていた。 むろん事前にかがされた薬のせいなのだが、男どもはよってたかってそれを嬲る。 「おいおい、しごいてもいないのにもうおっ勃てやがったのかよ?」 「ぎゃっはっはっは! 淫売の素質充分だなあ? いやもうとっくに淫売かあ?」 「よっぽど飢えてたんだろうぜ、この助平小僧が。心配しなくてもてめえの魔羅はもう用なしだ、一生誰にも突っ込めねえんだからな、ぐくく」 「………!」 恥辱に顔を赤く染め男どもを睨みながらも、顎にすら力が入らずだらしなく口を開けて涎を垂らす風祭。 それを見て男どもがまた笑う。 「でかく口開けやがって。そんなに口に咥えてえのか?」 「すぐに嫌ってほど咥えさせてやるよ。ケツと同時に突っ込んでやる」 言うや一人の男が風祭の尻にとりついて、潤滑油をつけた指を乱暴に後孔に突っ込んだ。 「ウウッ……!」 ただ内壁に油を塗りこめるだけの愛撫とも呼べない愛撫。風祭はたまらず苦しげにうめいた。 「ようし、ケツもいい具合に緩んでる。たっぷり可愛がってやるとするか」 「たっぷりいじめてやる、の間違いじゃねえのか?」 「がはは、違いねえや。突っ込んでやるから俺様の太魔羅をたっぷり味わえよ……おら!」 「ウウ―――ッ!」 ずぶり。 遠慮会釈なく巨大な一物を突っ込まれて風祭は息をつめた。 いかに筋肉が緩んでいるとはいえ、たいして馴らしてもいない後孔に突っ込まれたのだ。痛みは相当なものだろう。 「おう、なかなかいい締まりしてんじゃねえか。やっぱ犯り壊してねえ奴は犯りがいがあるぜ」 「口も使ってやるぜ……おら、歯あ立てるなよ!」 「グフウッ……!」 一息で男は一物を風祭の喉の奥まで入れてしまう。息が出来なくなって風祭は喘いだ。 「後がつかえてんだ。さっさと犯れ!」 「慌てんなって。そうら、動かすぞ」 言うや前後で同時に勢いよく抽送を開始する。 「グウッ! ウッ! ウウッ!」 上と下の口を同時に塞がれ、気遣いもへったくれもなく突っ込まれ、風祭は苦痛にうめく。 「おいおい、ちゃんとこいつも気持ちよくさせてやれよ。でないと調教にならねえだろお?」 「おっと、そうだな。へっへっへっ、坊主、俺が思いきり気持ちよくしてやるからな」 風祭の後孔を穿っていた男が、下卑た笑いを浮かべ、勢いよく腰を使いつつ風祭の一物を握った。手に潤滑油を垂らし、それを優しく塗りつけるようにして撫でる。 「ンウッ!」 薬で敏感になった風祭の一物は、その刺激に耐えられずたちまちのうちに勃ち上がった。そこにすかさず回りの男どもからの野次が飛ぶ。 「あーらら、あんなにおっ勃てちまって。淫乱な餓鬼だよなあ」 「げひひっ、本当はこいつ乱暴にされた方が好きなんじゃねえのか? こんなにケツ掘られながらおっ勃ててるってことはよお」 「………!」 風祭は睨みつけようとしたが、体勢のせいでできなかった。 何度も何度も、一物を腰の奥に、喉の奥に打ちつけられ、苦しくてたまらない。だが薬によって敏感になった体は、後孔の前立腺に与えられた刺激を、一物にぬるぬると与えられる刺激を、全て吸収して一物をいきりたたせてしまう。 しかし、イけない。 一物の根元を縛られている風祭はけっして達することはできないのだ。 「おら、イくぞ、出すぞ、おらおらあっ!」 「くっ、イくぞっ、全部飲めよっ!」 上と下の口に同時に精液を吐き出される。ゲホゲホと咳き込むが、口に一物を突っ込まれて上を向かされたままなので飲みこまざるをえない。 達した二人が離れると、すぐまた次の男が風祭の体にとりつく。上と下の口で、激しく腰を使い、一物を愛撫する。 男どもの手が伸びてきて、風祭の体を愛撫しはじめた。乳首、首、胸、太腿。どんどんと刺激を与えられる。 その刺激を全て受け取って風祭の一物はいきりたつが、決して達することはできない。 そしてそこに男どもが野卑な声を上げる。 「おうおう、ケツ掘られてこんなに魔羅でかくしやがって。この助平小僧が」 「クズ野郎って呼んだ奴に犯られる気分はどうだ? けけっ、答えられねえか。まあ上と下の両方で咥えこんでたんじゃあなあ」 「こんなに何本も魔羅を咥え込みやがって。実はもう何人も男引きこんでたんじゃねえか? この淫売が」 どんなに達したくても達せられないまま、一方的にえんえんと責められ辱められ、何度も精液を体に吹き上げられ……。 「ウッ……ウグッ……」 どんなに声を上げてもそれは外には届かない。風祭の目に――― 「うわあぁぁぁぁぁぁっ!」 龍斗は絶叫と共に跳ね起きた。 どかどかとうるさい心臓をなだめながら周囲を見まわす。 山の中だった。隣には風祭が素裸に着物を上掛けにしただけの姿で寝ている。 山の中で修業して、一戦交えた後御互い寄り添って眠ったのだ。 「………夢………」 龍斗ははーっと息をつく。 ぞっとするような夢だった。風祭が悪漢に輪姦されるなんて、たとえ夢でも許せない。 脳内で風祭を責めていた奴らに死よりも辛い苦しみを与えることを決定しつつ、龍斗は風祭を見た。 いっそあどけないと言ってもいいような寝顔でよく寝ている。普段気を張っているせいか年よりも幼く、可愛らしく見える。 この顔を守りたいと思うと同時に、泣かせてみたいとか考えてしまう自分はつくづく業が深いな、と龍斗は苦笑し――― その顔が凍りついた。 もしかして、さっきまで見ていた夢は、その延長上にあるものではないか? 夢は願望の現れだと聞いたことがある。実は自分も、ああして風祭を苛めたいと思っているのではないか? そんな、そんな。 完全に否定できない自分に気付き、龍斗は頭を抱えて絶叫した。 「うおぉぉぉ、俺って奴はあぁぁぁ!」 「……なんだよ、うるせェなァ……」 龍斗ははっとした。風祭が起きてしまったのだ。 風祭はうるさげに眉間に皺を作って、こちらを見上げている。 その顔を見たとたん、龍斗の中で風祭に対する愛しさと罪悪感が爆発してしまい、龍斗は風祭に抱きついた。 「ギャッ! 何しやがるッ!」 「ごめんなーっ澳継ーっ、俺ちゃんとお前のこと好きだからなーっ! 世界の誰より大好きだからなーっ! 夢の奴らはこれ以上ないってくらい苦しめた後に虐殺処分決定だからなーっ!」 「ワケわかんねェこといってんじゃねェッ! いいから放しやがれッ!」 その後、夢の内容を聞き出した風祭がてめェは何考えてやがんだと激怒し龍斗を半殺しにした上逆さ吊りの刑に処したが、龍斗はそれでも幸せだったらしい。 |