オレ……病気なのかな……。 ナップは海賊船の自分の部屋で、膝を抱え込んでうなだれた。 だって、絶対おかしい。オレ、変だ。先生を見るたび、先生に触れられるたび、体中がめちゃくちゃになっちゃうんだもん。 心臓はドキドキするし、顔も体も熱くなるし。熱が出たんじゃないかって思うくらい。それに先生に優しくされた時とかに、胸のとこがつきんって、なんか疼くんだ。痛いような、気持ちいいような、すごく変な感じ。 先生に心配とかされた時には、胸も頭も体中がなんかぎゅう……ってする。何度ごめんなさいって言っても言い足りないくらい、体全部が痛くなる。 しかも――。ナップの瞳から、一粒涙が零れ落ちた。 先生に口で傷跡に触れられた、あの時から。オレ、毎日先生の夢を見ちゃう。 それも、すごく――いやらしい夢。最初はたいていあの時と同じで、オレの傷を先生が舐めてくれてるんだけど、本当と違うのはオレがそれを嬉しがってるってこと。 そのあと、先生はオレにキスしたり、体を触ってくる。それだけじゃなくて、体中を、な、舐め回したり、なにか変なもの押しつけてきたり、裸になってぐいぐい体中を腕で締めつけてきたり―― 言葉にするといやらしいって思えないかもしれないけど、夢で見てる時はすごく、すごくねっとりしてて、オレは見るたびに心臓が馬鹿になって、なにも考えられなくなっちゃうんだ。 そんで、起きると、いつも下着がべっとりしてる。――今みたいに。ちんちんがなぜだかほかほかしてて、ねばねばした液体でぐっしょり濡れてる。 ナップはうつむいて、ぽろぽろと涙をこぼす。こういうのがあった朝はいつも、自分が世界で一番汚れた存在のような気がして、罪悪感と嫌悪感でたまらなくなるのだ。 先生がもし、このことを知ったら、きっとオレのこと軽蔑する。先生は優しいからそんな素振り見せないだろうけど、心の中で呆れ果てて、オレのこと、嫌っちゃうに決まってるんだ。 ナップは膝に顔を埋めて、ぼろぼろ泣いた。レックスが自分のことを嫌うと考えたら、泣けて泣けてしょうがなかった。 「先生……オレのこと、嫌っちゃ、やだよぉ……っ!」 泣きたいだけ泣くと(毎朝泣いているので目は腫れっぱなしなのだが)、下着を洗わなくちゃ、という風に頭が働く。べとべとした下着を穿いているのは気持ち悪いというのもあるが、それ以上に証拠を隠滅したいのだ。 部屋の中で下着を脱いでポケットに入れ、まずこっそりと部屋から顔を出して周囲をうかがう。 そして誰もいないのを確認すると、そろりそろりと足音を立てないように船から出て、あとは全力疾走で船から離れる。 船が見えなくなってから浜辺の岩陰に向かい、下着を取り出す。辺りの様子をささっとうかがってから、下着を海水に浸けて必死に洗った。 ごしごしごしごしごしごし。自分が汚れてる証拠も、自分の頭の中に残ってるいやらしい夢も、全部洗い流したい。ナップは一心不乱になって下着を洗った。 ―――と。 「―――ナップ?」 すぐ近くからレックスの声がして、ナップは文字通り飛び上がった。 さくさくと砂を踏む音がして、レックスが近づいてくるのがわかる。あまりに懸命に下着を洗っていたので、接近に気づかなかったのだ。 「どうしたんだい、ナップ。最近いつも朝起きると目が腫れてるから、なにかあったのかと思って探しに来たんだけど――」 ナップは完全に硬直していた。どうしよう、どうしよう。ごまかせない、この状況じゃごまかしようがない。 先生、きっとすごく嫌そうな顔してる。振り向いたらきっと、顔をしかめて汚いものを見るみたいな目でオレを見てるんだ! ナップが泣き出しそうに顔を歪めていると―― レックスがナップの後ろに立って、ぽんとナップの肩を叩いた。 そのあんまり優しい、親しげな叩き方にナップは涙目になったままばっとレックスの方を見上げてしまった。レックスは優しげな瞳でナップを見つめて、いつもの暖かい笑顔でにこっと笑う。 「もしかして、ナップ……朝起きたら、下着が濡れてた?」 ナップは思いきりびっくりして、なんでわかったの!? と問い質したくなったが、恥ずかしくて聞けず、ただ「うん……」とうなずいた。 レックスはにこにこしながら、ぽんぽんとナップの頭を叩く。 「びっくりしたね。でも大丈夫だよ、男の子が大人になっていく時、みんな通る過程なんだからね」 ナップは目を丸くしてレックスを見つめた。 「本当に……?」 「もちろん。もしかして悪いことだと思ってた? 大丈夫、悪いことでも変なことでもないよ。誰にでもある、むしろいいことなんだから」 「うっ……えっ……」 優しく笑いながら頭を撫でてくれるレックスに――ナップの涙腺はあっさり決壊した。 「うわ゛――――っ!」 「……そういうわけで、男の子はみんな、年頃になると夢精するものなんだよ」 ナップが泣き止むまで優しく抱きしめてなだめてから、レックスはナップに夢精の仕組みを説明した。ナップはこんなことで泣いてしまったことをひどく恥ずかしく思いながらも、懸命にレックスの話を聞く。 「……先生も、したの?」 「もちろん」 おそるおそるナップが問うと、レックスはにっこり笑って答えてくれて、ナップはひどくほっとしてつられて笑った。実はレックスはこんな優しい笑顔の裏側でこっそり、『ナップが夢精……ナップが夢精……大人への階段を上っているんだねナップ……なんだかすごく淫靡っていうか、照れくさいトキメキが……うああ俺はなにを言ってーっ!』とか葛藤してたりするのだが、そんなものナップが気づくわけがない。 「今は、しないの? 大人になったらしなくなるの?」 「うーん、そうだね、年を取って精力――精子を作る力が衰えるっていうか、静まってきたらめったにしなくなるかな……」 『ああ、ナップと性について語り合う日が来るなんて! ナップにせ、性教育だなんて、なんだかすごくいけない気分……!』という内心の悶えと必死に戦いながら曖昧に微笑むレックスを、ナップはもじもじしながら見上げた。 「どうしたんだい?」 「あのさ……今すぐむせいしなくなる方法って、なにかないのかな?」 「え゛」 レックスの笑顔が一瞬硬直した。 『方法って……方法って……そりゃ適度に抜けば夢精はしなくなるけど……そ、それを君に教えろと!? 自慰の方法をナップに、事細かに教える……ぶふっ(←鼻血が出そうになりました)、だ、ダメだ、ダメだダメだ、教えたい気持ちはとってもあるけど理性がとてももたん……!』とか頭の中で超高速で思考が駆け巡っているレックスのおかしな様子にも気づかず、うつむいてもじもじしながら言うナップ。 「オレ……むせいって、なんだか嫌なんだ……すごくいけないこと、してるみたいな気になるから」 「べ……別に悪いことじゃないんだよ? ナップの体が大人になる準備ができてるって証で、男の子なら誰にでもある……」 「そーいうんじゃ、なくて……!」 ナップは苛立たしげにレックスを見つめ、またすぐうなだれた。『先生の夢を見ちゃうから、先生を汚してるみたいな気分になる』なんて、本人を前にして言えるわけがない。 当然のことながらレックスにはナップがどうしてそんな反応をするのかわからない。困った顔をして首を傾げるレックス――ナップはどうしようもなく情けない気分になって、泣きそうな顔でレックスを見上げる(上目遣いで)。 「先生……方法、なんにもないの? オレ、もう嫌だよ……むせいするの……」 「う………!」 ナップの涙目の上目遣いおねだり攻撃――そんなものにレックスが耐えられるはずがない。「なくは、ないけど……」と、つい口にしてしまった。 「ホント!?」 嬉しそうなナップに、レックスはややひきつった笑顔を向けつつ、『性教育。これは性教育なんだ。家庭教師の務めの一つなんだ』と内心何度も自分に言い聞かせ、ぎこちない説明を始めた。 「自慰って言ってね。精液を自主的に適度に放出する方法で。そういうのをコントロールするには有効な手法なんだよ」 「具体的にどうやるの?」 「そ、れは、ね……まず……その、下半身を、ろ、露出して……」 「? 先生、聞こえないよ。もっと大きな声で言ってってば」 『そんなこと言ったって、自慰の説明なんて恥ずかしくてできるか! ナップに、この純真無垢な男の子に、本気でいちいち説明したら俺は恥ずかしさのあまり悶死するぞ………!』とか内心思っているものの、そんなこと言えるわけがなくとりあえずレックスはいつもの困ったような笑顔を浮かべてごまかす。 ナップは不満そうな表情を浮かべてレックスを見ていたが、やがてあ、そうだと手を叩く。 「実際にやってみせてくれない? やり方とか実際にやった方が覚えられるしさ」 「え゛!?」 レックスの笑顔は今度こそ完全に硬直した。ていうか、衝撃のあまり変な顔になってる。 ナップは不審に思ったものの、レックスが時々そういう顔になるのはわかっていたので、気にしないことにしてねだり倒した。 「なあ、先生。いいだろ? 教えるんならちゃんと教えてくれよ。オレちゃんと覚えて、二度とむせいしないようにしたいんだよ」 「あ、あのね、ナップ。自慰っていうのはね、なんていうか、夢精よりね……」 変な顔のままなんとか説明しようとするレックスに(←今、彼の頭の中では理性と煩悩が壮絶な闘いを繰り広げています)、ナップはきゅっとレックスの服の裾をつかんで、上目遣いで顔を見つめ、言った。 「先生………ダメ?」 「ぬぐぐぐぐぐぐっ!」 久々に出たナップの『………ダメ?』攻撃。レックスは必死に歯を食いしばってそれに耐えようとしたが、レックスの脳内の『俺は教師』菌は『ナップ可愛い』菌に急速に駆逐されていく。 『ダメだ、ダメだ、流されちゃダメだ、流されたら俺は確実に……犯罪者になる……!』 そんな理性の声はあまりにはかなく、ナップの潤んだ不安そうな眼差しはめちゃくちゃ可愛くて、頭の中はナップ一色に塗りつぶされていき―― 「わかっ………た………」 とか答えてしまったのだった。 「………じゃあ、まず、ズボンと下着を脱いでくれるかな?」 「え!?」 「そうしないと自慰はできないんだ」 張りついたような笑顔で言うレックス。 ナップはかなりうろたえて、逡巡した。先生の前でちんちんを丸出しにする――ちょっと前だったら簡単にできたかもしれないけど、今はなんだかすごく恥ずかしい。自分の恥ずかしいところを見られるような気がする。 だが、実地でやり方を教えてくれと頼んだのは自分だ。今更取り消すわけにもいかないだろうと、ナップはそろそろとズボンを脱ぎ、下着を少しずつ下ろし―― その手が途中で止まった。 「どうしたんだい、ナップ?」 レックスの声がやや虚ろなことに気づかず、ナップは真っ赤になって首を振った。今は――絶対に下着を脱ぐわけにはいかない。 「言ってくれなくちゃわからないよ。どうしたんだい?」 ナップはひたすら首を振った。こんなこと言えるわけない、口になんて出せない。とにかく絶対下着は脱げない。 「………嫌ならやめようか?」 「やっ!」 ナップはぶんぶんと首を振った。これ以上あんな夢を見続けるのは絶対にごめんだった。 「じゃあ、下着を脱がないと」 「やだっ!」 「やだ、って言われても……」 先生が困ってる。どうしよう。このままじゃ嫌われちゃうかもしれない。自分から言い出しておいて逃げ出そうとしてるんだもん。オレはそんなの嫌だ。だけどパンツを脱ぐのはどうしても恥ずかしくて――どうすればいいんだよ、どうすれば! 顔を泣きそうに真っ赤にして固まるナップに、レックスは張りついたような笑顔のまますっと手を伸ばした。 「自分で脱ぐのが嫌なら、俺が脱がしてあげるよ」 「え? や、やっ!」 ナップが抵抗する間もなく、レックスはナップの下着を素早く取り去ってしまった(←ちょっと理性飛んでます。見たい!≠ニいう欲望が頭の中を一瞬支配しました)。伊達に(受がほとんどとはいえ)男相手の経験を山ほど積んでない。 ナップは必死に股間を隠そうとするが、それよりレックスの視線の方が早かった。レックスは血走った目でナップの股間を見つめ、あ、という顔になった。 「………ナッ………プ」 「………! ! !」 ナップは顔をくしゃくしゃに歪めた。ナップの幼い性器は、小さく震えながらも、しっかり勃起して自己を主張していたのだ。 こんなのただ小便をしたいだけなのかもしれない。だが、ナップはなぜか恥ずかしくてたまらなかった。自分がすごく汚れた人間みたいな気がする。なんだかもうたまらなくて、ナップは(先生の前では心配かけるから泣いちゃダメだ、と耐えていたのに)ぽろっと涙をこぼしてしまった。 「………ナップ」 レックスはそっと、ナップの涙を拭った。にこっと、優しく笑って頭を撫でられ、ナップはきょとんとしてレックスを見やる。 「心配しなくても、こうなるのはおかしなことじゃないよ」 「………え?」 「興奮したりドキドキしたりすると誰でもこうなるんだ。自然なことだよ」 「…………ホントに…………?」 「もちろんだよ」 笑ってそううなずくレックスに(←精神力総動員。この時頭の中では『理性理性理性理性理性理性……』と必死に唱えてます)、ナップは少しほっとした。 でも、それはそれとしてこの格好はひどく恥ずかしい。ナップはうつむいて、早口に言った。 「これから、どうすればいいの?」 「………俺の方に寄りかかって。体中の力を抜いて………」 ナップは言われるままにレックスに寄りかかった。心臓がドキドキする。レックスにそれがバレるんじゃないかと思うと、体がどうしても熱くなってしまった。 「……これから俺がなにをしても暴れないでね?」 「? うん」 レックスは、数度深呼吸すると、ナップを後ろから抱きしめながら、するする、とナップの幼い性器に手を伸ばした。 「!?」 ナップは硬直した。先生の手が――オレの、ちんちんに、触れている。 その瞬間、体が燃えた。体の奥がたまらなく熱い。先生の手がオレのちんちんを触って、ゆっくり上下に動かしている。 「せ……せんせ………!」 暴れるなって言われたけど、動くことなんてできなかった。レックスが性器の皮をゆっくり剥いたり被せたりするたびに、体になにか、痺れるような、電気のようなものが走る。 「ナップ……力を抜いて……体の刺激を素直に感じて……」 耳元で囁くレックスの声も(←現在レックスは『理性! 理性! 理性! 理性! 』と呪文のように頭の中で唱えています)、ほとんど耳に入らない。体が変だ。頭も変だ。 先生が、オレのちんちんを触っている。オレの一番恥ずかしいところに触れている。それを認識するだけで、体も心もめちゃくちゃに昂ぶって、どろどろに溶けて、自分じゃないなにか別のものに変わってしまいそうな気になる……。 「あ、ああ、あ」 自分の声が自分じゃないみたいだ。おかしい、オレ、変だ。さっきまでの変具合よりもっと変だ。 頭の中は真っ白で、ただ先生のことしか考えられなくて、頭の中で先生先生って繰り返して、まるで―― 例の夢を見たときみたいに。 それを認識したとたん――ナップは暴れ出した。 「先生! 離して! 離して! 離してよぉっ!」 「ナップ!?」 レックスが驚いて性器から手を離した。それでも体はまだたまらなく熱い。そのことにまた涙がこぼれそうで、たまらなかった。 「……どうしたんだい、ナップ? 嫌だったのかい?」 ナップはいやいやをするように首を振った。必死に泣くのを堪えた声で、懸命に言う。 「や……っ、先生、オレのこと、嫌っちゃ、や……だ」 「嫌うって……なにを言ってるんだナップ。なにが起こっても、俺が君を嫌うわけないだろう? 君は、俺の、大切な生徒なんだから」 ナップが尋常でない状態なのを感じ取り、理性を最大限に働かせて(わざわざ生徒という言葉を使うあたり)言ったレックスの言葉にも、ナップはいやいやと首を振る。 「本当の、オレ、知ったら、先生、俺のこと、嫌いになっ、ちゃう……!」 「……本当のオレ、って?」 正気の時のナップなら絶対に言わなかっただろうが、今のナップは普通ではなかった。涙で瞳を潤ませながら、レックスを見上げて喚く。 「オレ、いやらしいんだもん! むせいする時、すごく、すごくいやらしいこと考えちゃうんだもん!」 ああ、言ってしまった! もうおしまいだ。見る夢が先生のことだとは言ってないけど、それもきっとすぐにバレる。そんで、先生は、オレのこと嫌っちゃうんだ。軽蔑して、汚らわしいって言って、もう二度と褒めたりぎゅってしたりしてくれないんだ! ナップはぽろぽろっと目から涙をこぼしつつ、思いきり目を閉じたが―― 「ナップ!」 レックスは、ぎゅっと、真正面からナップを思いきり抱きしめた。 「せ……せんせぇ……?」 呆然とするナップに、レックスは優しく言う(←純真無垢なナップがあんまり可愛くて暴走して抱きしめてしまったけど、それでも必死に理性を保とうとしてます)。 「ナップ。いやらしいのは、悪いことじゃないよ」 「う……そだ」 「本当だよ。いやらしいっていうのはね、誰か好きな人と愛しあうために、心が準備してるってことなんだよ?」 「………好きな、人と?」 きょとんとして涙目でレックスを見上げるナップに、レックスは(全身の力を振り絞って)笑いかける。 「そう。好きな人と愛しあえるってことは、とても気持ちがよくて、幸せなことなんだ。体温を感じて、体と気持ちが交じりあって。それ以上に素敵なことって、この世の中にはそんなにないくらい」 「愛しあう……」 「そうだよ。いやらしくなくちゃ愛しあうことはできないんだ。だからいやらしいっていうのは、幸せのために必要なことなんだよ」 自分でもここまで言い切ってしまっていいんだろうかと内心不安に思いながらも、レックスは(必死に)微笑みながら言った。 ナップは、それでもまだ潤んだ瞳でレックスを見上げていたが、さっきよりはずっと落ち着いてきていた。小首を傾げて、レックスに問う。 「愛しあうって、なにをするんだよ?」 「―――――」 「せんせぇ……教えて?」 うるうるに潤んだ瞳でじっとこちらを見上げて切なそうにおねだりするナップ―――― それを見たとたん、レックスの顔からきれいに表情が消えた(←今ぷっち―――ん、と音を立てて理性の糸が全部切れました)。 レックスはぐいっとナップを浜辺に押し倒した。なにがどうしたのか目を白黒させているナップのおでこに、頬に、腕に、体中にキスを落としながら、レックスは指でナップの性器をつまんで激しく扱き上げる。 「や……っ、せんせぇ、やっ!」 わけがわからず反射的に上げる声にもレックスは行動を変えなかった。噛みつくようなキスを体中に落としつつ、ナップの性器を攻撃する。 怖い。怖い。怖い。怖い。こんな先生、見たことない。どうすればいいのかわからない。 体が熱い。先生に触れられたところが熱い。こんなの、こんなのまるでむせいの時の夢みたい―― そう思うと、ナップの体はぼうっと音が立ちそうなほど一気に燃え上がった。 「や、やあ、ひんっ、せんせ、ひゃん、せん、やあ」 レックスは(今だぶち切れ状態で)激しくナップを責めたてる。ナップはレックスが動くたびに、悲鳴のような声を嗄れるまで上げた。 「あ、ああ、や、いやっんっ、せんせ、せんせ、せんせ―――」 体中の熱さが頂点に達し、体中に電撃がびりびりりっと走り、頭の中が真っ白になって、一気にスパークする―――― 「あ、あ、ああああああああ――――ッ!」 「う゛わ゛――――――ん゛っ!」 「ナップ! ごめん! ごめんよ、ナップ! 俺が悪かった!」 レックスに抱きついて大泣きしているナップに、レックスは抱きしめながら必死に何度も頭を下げた。 実際、土下座したい気分だった。射精後すぐに大泣きし始めたナップに理性を取り戻し、レックスは自分のやったことを自覚。その場で死んでしまいたいほどの後悔に襲われた。 ナップ自身のことを本当に好きになって、ナップが健やかに成長できるよういとおしんでいこうと心に決めたはずだったのに、このざまはなんだ。自分の欲望にあっさり負けて、ナップを襲って、怯えさせるなんて……! 俺は教師失格だ、と自分自身泣きそうな気持ちで拳を握り締めた。 「う゛わ゛――――ん゛、う゛わ゛――――――ん゛っ!」 「ナップ、ごめんよ! 本当にごめん! 怖かっただろう、ごめんよ! 俺になにをしてもいいから、俺どんな償いでもするから!」 ――ナップとしては、大泣きしてはいたものの、それは別に怖かったからではなかった。 確かに怖かったし、先生が変になっちゃったんじゃないかと思いはしたが、それ以上に。 『―――あれが愛しあう≠チてことなんだ』 怖かったけど、でもそれ以上に気持ちよかった。先生に触れられてると思ったら、気が遠くなるくらい幸せだった。 ――それは、自分が―― 『オレ、先生のこと好きだったんだ』 元から大好きだったんだけど、そういうんじゃなくて。 先生は、オレにとって、たった一人の愛しあいたい人だったんだ。 その自覚は、じゅんと胸の奥を痺れさせて、濡れさせて、びっくりするぐらい幸福な感触をナップに与えた。 そのことがひどく嬉しくて、自分が今までの自分と決別する時が来たとわかって、少し寂しくて、でもすごく幸せで、なんだかたまんなくて、感情が爆発して――泣けて泣けてしょうがなかったのだ。 当然レックスはそんなこと知りはしないが、ナップもレックスの気持ちにちりとも気づかないまま、自分の感情だけで手一杯になって、ひたすら泣いた。 そして泣き疲れて、レックスの腕の中で、ひどく幸せな気分で眠った。 ナップが目覚めて、明るく声をかけるまで、レックスは死にそうな、地獄のような気分で死刑判決を待っていたのだが、まあそれはささいなこと、と言えるかもしれない。 |