結局、りおながどうしてあんな陰険そうな相手を刃友にしたのかは分からず終いだった。 もしかしたら、お互いにしか分からない良さがとかがあるのかもしれないけれど……。 「おかしい。なんかおかしい」 次の日から、桃香は早速桜花について調べ始めた。 りおなが選んだ相手なら間違いはないはず。そう信じたい気持ちも桃香の中にまだ残っていたのも事実だった。しかしそんな微笑ましい期待も桜花の評判を聞き始めるとすぐに、あっさりと打ち砕かれた。 桜花の情報はさほど苦もなく集められた。苦もないどころか楽だった。桜花はそのあくどいやり口で、ある意味学園の有名人だったのである。やな有名人だ。 しかし、一体どれだけの悪事を重ねればここまで言われてしまうのだろう。 噂好きの生徒たちは桜花の悪行についてひと通り述べた後、必ずこう続ける。 「宝田さんも、よく鬼吏谷さんの刃友を続けているわよね」 宝田さんは、鬼吏谷さんに何か弱みを握られているんじゃないの。 いやいや、きっと別れたくてもそんなことを口に出したら何をされるか分からなくて、怖くて言い出せないのよ。 違うわ、宝田さん、きっともう諦めの境地に達しているのよ。嵐は静かにやり過ごすのが一番マシ。ちょっとくらいの被害には目をつぶろう、我慢しようっていう悟りの境地に達したのよ、きっと。 そんな風にまで言われる始末だった。 (とんでもないやっちゃ……) 学年の違う自分が知ることができた分だけでもこれなのだから、実際はもっと凄まじいのだろう。まったく、悪行の見本市でも開くつもりか。 (でも自分の相方に手えまで上げるなんて……さすがにそれはなんかの間違いやろ) りおなは桜花に手を上げられたことも何度もあるらしい、そう聞いた時には桃香もさすがに「そんなバカな」と思った。しかし色々なところから同じような噂を聞くたびに、「もしかして本当に……」という不安も大きくなっていった。 だけど、もしそうなら、どうしてりおなは刃友を解消しないのだろう。 あれから何度かりおなと話す機会があったが、りおなは自分から桜花と別れようとは考えていないようだった。 「言いにくいんやったら、ウチが代わりに交渉するけん」 それとなく話を振ってみたりもしたが、りおなは寂しげに首を横に振るだけだった。叩かれたことがあるのかと聞いてみても、「そんな大げさなことじゃないから大丈夫よ」と言うだけだ。それで結局、最後は「約束を守れなくてごめんなさい」というりおなの言葉で話は終わってしまう。そんなことの繰り返しだった。 りおなと桜花の関係が、どうしてもよく分からない。 しかしりおなが刃友の解消を求めていない以上、どんなに桜花のひどい噂を聞いても、桃香としては強引なことはできなかった。 そうして釈然としないまま、悶々とするしかない日々を桃香は過ごした。 |
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