アイノカタチ
白楽天:作

■ 1章「始まり」8

「ああ、なんで私、章ちゃんに譲っちゃったのかしら? 明らかに失敗よね」
リツコは写真をほどほどに撮り終えると、撮った画像を確認しながらボソリと呟く。
「何を今更。悪いけど佳奈はあげないよ。それにリツコさんは男の調教が好きなんだろ?」
「まあね。あ、ほら、これなんか良く映ってる。」
「ん? どれどれ?」
章介は手を止め、立ち上がるとリツコの差し出したデジカメを受け取り写真を見る。
写真は佳奈が章介の腕にしがみつきながら、足を緩くM字に開き愛撫されてるシーンだった。
「お、いいねぇ」
章介も顔に出る喜びはもう隠せない。満面の笑みを浮かべ、他の写真も確認していく。
ところが、たまったものではないのは佳奈のほうだ。
体中が火照り、秘所が何かとてももどかしい。
先ほどまでの愛撫は快感から生き地獄に変わる。
もっと……
佳奈は純粋に、触って欲しい、そう思った。
もっと続けて欲しい。
すでに白く霞み惚けた脳では2人は何を見て笑っているのかもわからない。
もっと触って欲しい。
ふと2人の横にあるおおきな姿見が眼に入る。こっちをみている女の子は誰だろう?
もっと気持ちよくなりたい。
鏡に映る女の子もそう言っていた。

「もっと……もっと……触って……」
佳奈はゆっくりと思いのままを綴る。
章介とリツコはデジカメから佳奈へと眼を戻す。
「なんだい?」
章介はリツコにデジカメを返しながら、必要もないのに聞き返した。
やはり何度も言わせたほうがおもしろい。
「もっと……触ってください……気持ち…よくなりたい……途中は…イヤ……」
佳奈は顔を上気させ、上目遣いに章介を見る。やはり快楽に酔っても恥じらいはあるらしい。
「じゃあ、さっきの条件。覚えてるかい?」
「……条件……………彼女になれば、章介さんが、お金の、援助、してくれる……」
佳奈は暫くの沈黙の後思い出したように一語一句紡いでいく。
「そうだ。どうだい? 条件に従う?」
「……」
佳奈は急に怖くなった。
確かに悪い条件ではない。そして何よりも今は気持ちよくなりたい。
(……ダメ……こんなことしたらお母さんが悲しむ……)
(今はこうでも……そのうちこの気持ちもやむはず……)
「……はい……」
佳奈はコクリと頷いた。
まるでもう一人の自分が別のところから自分を見ているような錯覚に襲われる。
もうお仕舞い、もう一人の自分がそう言った気がした。
しかし、今の佳奈は章介が恋しくて、はやく触れて欲しくてたまらなかった。
「そうか。じゃあお望みどおり続きをしよう」
章介は佳奈の横に腰掛け、佳奈に口付ける。
佳奈は恥ずかしそうに身体を寄せた。
(私は、章介さんの彼女……)
学校で同級生たちが口にする“彼女”という響きに憧れを抱いていた佳奈は、これから先自分に起こることが、そんな生易しいことではないと知らずゆっくりと眼を閉じ章介を待った。

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