アイノカタチ
白楽天:作

■ 2章「調教開始」9

頬をさすりつつようやく気持ちを落ち着かせたところで、ワンピースの胸のボタンに手を伸ばし、上から順に1つずつ外していく。
ボタンを外すにつれ、袂からしっとりとしたレモン色のブラが顔を覗かせ、そしてそれに包まれたなでらかな谷間が晒される。
腕を胴に寄せるようにして裾から抜き取り、両腕とも抜き取ったところでワンピースを押さえていた手を離すと、はらりと軽い音とともにワンピースが床に落ちた。
佳奈は足元のワンピースを拾い上げ、きれいに畳んで洗面台の横に置き、鏡に映る自分の身体を見る。
ほんのりと赤みがさし熱を持った白い身体と、大切な一部を外敵から隠すレモン色の下着。
年相応の瑞々しさに、普段はない、華やかさや艶やかさが浮かび、“女”らしさを出していた。
(章介さんとこれからHするんだ……)
(リツコさんみたいに大人っぽくない身体だけど……)
(ちゃんと愛してもらいたい…………私も……章介さんにできるだけ応えたい……)

佳奈は再び小さく深呼吸すると背中に手を回し、ブラのホックを外す。
肩からストラップを抜きとると、双乳がこぼれ落ちるように顔を出し、うっすらと桃色に色付いた小さな蕾が解放されて前を向いた。
ブラをワンピースの上に置き、残ったショーツに手を伸ばす。
(あ…………)
(湿ってる…………)
鏡に映る佳奈のそこはほんのりと水気を帯び、小さな染みができていた。
その他の部分よりやや濃い黄色をした場所はごく小さなものであるものの、佳奈が“女”であることを示すには十分であった。
意を決しショーツをゆっくりと下げながら、頭のなかにリツコの言葉が浮かぶ。

「女の身体は男の人を受け入れるようになってるの。逆に濡れてないとすごい痛いのよ。」
「佳奈ちゃんは敏感なほうみたいだけど、不感症じゃなきゃみんな濡れるんだから。いやらしいとか自分を責めちゃダメ。ね?」

(私の身体……章介さんを待ってるんだ…………)
不思議と昨日のような恥ずかしさはなかった。
むしろ、“女”として章介を迎える準備ができている身体が誇らしかった。
だんだん胸が膨らみ始め下腹部に翳りが見え始める第2次成長期のような、羞恥の裏に嬉しさだとか、こそばゆさのような何かがある。
(悩んでも始まらない……)
佳奈は意を決し、するっとショーツを一気に下げ、ブラと一緒に小さく纏めてワンピースの間に隠し、浴室に入った。

頭から全身に勢い良くシャワーを浴びる。
心の底にわずかに残る迷いも一緒に洗い流すように、己の決意をより強固なものにするために、ただただお湯を浴び続ける。
章介が気を利かせてくれたのだろう。湯加減は熱すぎず温すぎずと、まさに適温だった。
そしてシャワーヘッドを片手に持ち、身体を撫でながら全身を軽く流す。
シャンプーを適度にとり、髪を優しく梳きながら洗い、身体もスポンジを何度も往復させて、いつも以上に丁寧に洗った。デリケートなところは指で時間を掛けて、かといって刺激しすぎない程度に、殊更に気を使った。
最後に全身にシャワーを浴びて浴室を出て、章介の言っていた棚からバスタオルを取り出し、全身の水分を拭ってから再び下着と服を着る。
ドライヤーを掛けて軽く髪を乾かし手櫛で整えてから洗面所を出た。

「章介さん……」
そろそろとリビングのほうに足を運ぶと、章介は麦茶を飲みながらソファーでテレビを見ていた。
グラスを傾けるたびに氷がカラカランと小気味よい音を立てる。
「ああ、佳奈。お湯はどうだった?」
「ちょうどよかったです。……先使わせてもらっちゃって……ありがとうございました。」
章介は佳奈の声に気付くとすぐに振り返り、こちらにおいでと手招きした。
佳奈もそれに招かれるようにソファーに向かい章介の横に軽く腰掛ける。
「そっか。じゃあ次は俺が入ってくるから、麦茶とか飲んでテレビ見て楽にしてて。」
隣に腰掛けた佳奈を見てうれしそうに微笑む章介は、グラスに残っていた麦茶を勢いよく流し込むと、用意しておいたもう1つのグラスに麦茶を注ぎ、すっくと立ち上がって洗面所へと向かった。

テレビには章介が見ていたのであろうアクション映画が映っていて、クライマックスを迎えようかというところだった。
佳奈でも知っている有名な作品だ。
銃声や怒号が飛び交うシーンにも拘らず、今の佳奈にはまったく入ってこない。
ただ目まぐるしく展開されるストーリーを佳奈の目は鏡のように写すだけで、意識は全く違うところに向いている。
もっとも、心臓は件の映画さながらに早い律動を刻んでいることには間違いないのだが。

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