淫辱通学
木暮香瑠:作

■ 謂れなきお仕置き5

「行くぞ! 付いて来い!」
 袋を抱えた有紗が店を出ると、雄一は有紗を連れて歩き出した。美由紀は無言のまま二人に続いた。

 太陽はすでに西の山影に隠れ、西の稜線だけに茜色を滲ませていた。
(どこへ行くの? 早く……この街から離れて、お願い……)
 一刻も早くこの街から離れたかった。いつもは、優しく有紗を迎えてくれる街のはずなのに……。誰にも気付かれないように、誰にも見られないようにと願いながら有紗は俯いたまま雄一の陰に隠れるように歩いた。美由紀も有紗の恥かしい気持ちを察して、有紗の腰に手を廻し寄り添い歩いた。だんだんと暗くなっていく空が、有紗の気持ちまで落ち込ませていく。

 雄一に連れられてきたのは、有紗の願いとは裏腹に、この街の一角にある大きな公園だった。三人は、公園の奥へと進んでいく。
(ここで何をしようって言うの? いやっ、ここでは許して……。私の住む街……、ここではいやっ!)
 公園には、二つの顔があった。昼間は子供たちが黄色い声を上げ遊んでいる。しかし、昼間でも子供たちが立ち入らない場所がある。公園の奥の方では、木立に囲まれたその奥にホームレスのダンボールハウスが立ち並んでいる。夜の公園は、ホームレス達が支配していた。有紗が連れてこられたのは、その場所から程よく見渡せる街路灯の下だ。

 有紗は、公園の奥の街灯の下に立たされた。三メートルほどの鉄柱の上で、切れかけた蛍光灯が点滅している。30メートルほど先に立ち並ぶダンボールハウスとの間を遮るものは何もない。その街路灯の鉄柱を背に立たされ、手を後ろに廻すように命令された。そして、背中に鉄柱を背負うように両手に手錠が掛けられた。
「許して……。こんなところで……、な、何しようとしてるの?」
 これから行われるお仕置きに不安を感じながら、身体を揺すった。両手に掛けられた手錠が、ガチャガチャと音を起てる。

 雄一は有紗の不安を浮かべる表情を見やり、ニヤリと笑みを浮かべる。そして、スカートの中に手を差し入れ、パンツを膝まで一気に引き下ろした。
「キャーッ、いやっ!! やめて!!」
「うるせえ! 大声を出すんじゃねえ! 観客が集まってくるぞ」
「ううっ……」
 有紗は、雄一の言葉に悲鳴を押し殺した。
「それとも、みんなに見てもらいたいのか? 見られたほうが感じるんだろ? 俺はそれでもいいがな」
「ひっ、卑怯者……。ううっ……」
 自分の住む街の公園……、大声を出せば誰か助けに来てくれるかも知れない。有紗を知った人間が来るかも知れない。しかし、パンツを膝に絡ませた格好を見られたくはなかった。助けを呼ぶことさえ奪われて、有紗は悔しくて瞳に涙を浮かべた。

 鉄柱に磔にされた美少女が、切れかけて点滅を繰り返す街路灯に浮き上がっている。膝には、白い布切れと化したパンツが危うげに引っ掛かっている。雄一は、有紗の前に極太バイブの入った紙袋を置き、手帳から一ページを破り取り何か書いた。そして、書き終えたその紙を紙袋の上に置いた。

 不安そうに有紗が、目の前に置かれたバイブ入りの紙袋を見詰めている。有紗の気持ちを察した美由紀も雄一にお願いする。
「ここでは許してあげて……。せめて隣町……、雄一様の地下室で……」
「お前もお仕置きを受けたいのか? どうなんだ?」
 雄一は、美由紀を睨みつけた。
「わ、わたしがお仕置きを受けますから、有紗ちゃんを許してあげて……」
「そうはいかねえな。有紗だけがお仕置きを受けるか、二人共がお仕置きを受けるかだ!」
「そんな……」
 雄一は美由紀の手を引っ張り、少し離れたところまで連れて行った。そして、美由紀の手とベンチの脚を手錠で結んだ。
「そこに大人しく座っていな。大声を出すのはかまわねえが、人が集まってくると困るのは有紗だぜ」
 雄一はベンチにドカッと腰を下ろし、遥か向こうの鉄柱に繋がれた有紗に視線を向けた。

 一人残された有紗は、不安げにあたりを見渡した。遠くから、犬の鳴き声も聞こえてくる。空は暗さを増し、有紗の上に覆い被さってくるようだ。公園の一角に立ち並んだダンボールハウスの周りを、数人のホームレスがうろうろしている。ホームレスの一人が、有紗の方に視線を向けている。
(いやっ、来ないで……、こっちに来ないで……)
 有紗の願いを打ち砕くように、二人の浮浪者が有紗の繋がれている街灯の方に歩を進めだした。
(助けて……、ゆ、雄一様……)
有紗は雄一に不安げな視線を投げかけたが、雄一は動こうとはしない。有紗は、はっと我に帰り、雄一を頼ろうとしたことを悔やんだ。いつもは強制されて言う、『雄一様』という呼び方を不意に頭の中で叫んでしまった。一人取り残された不安な気持ちが、雄一に助けを求める弱気な気持ちとなっていた。
(負けちゃだめ……。あんな卑劣な男に……、様を付けて呼ぶなんて……)
 そう自分に言い聞かせる。言い聞かせなくてはいけない自分がいること自体、有紗の不安な気持ちを表していた。今日、朝から続くアナルバイブ責め、理事長室での陵辱、アダルトショップでの恥辱責めが、有紗に絶え間なく過大な緊張を与え続けていた。連日に及ぶ地下室での陵辱が……、今日一日続く恥辱と緊張が、有紗の健全な精神を崩壊させようとしていた。

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