『娼品』梓
matsu:作

■ 2

「それでいいんです。あなたはもうわが社の『モノ』なのですから、ただの『モノ』が人間に反抗していいはずがないでしょう。計測前にそうされなかったのは、正確なデータがとりにくくなるという理由だからですよ」

 そう、私はただの「モノ」なのだ。私は自分の立場を否応なく思い知らされ、ただされるがままに社員の猥褻行為に身を委ねていた。

「あっ、んっ……はあっ、んっ……」
「なかなか大きいな。ちょっとデータみせてくれるか? ……ふむ、もう少しでEカップか」

先ほど計測したデータを見ながら、社員の男は私の胸を揉みしだき、乳首を指でこねくり回した。そうしてしばらく私の胸を弄んだあと、股間のほうに手を伸ばし、オマ○コを触ったり、クリトリスを摘みあげたりしてきた。

「あっ……! はあっ、くぅ……」
「感度もそれなりにいいな。まぁ、さっき計測したばかりだから、すぐに濡れるのも当然か。だがちょっとやりづらいから、もう少し脚を開いてくれないか?」

 私はその言葉に黙って従い、脚を肩幅に開いた。すると男は無遠慮に、私のオマ○コを二本の指で激しくほじくった。私はいきなりのことに驚いて、思わず声をあげてしまった。

「ああっ! はっ、あっ、あんっ!」
「おお、中はトロトロに熱くて、しかもきゅうきゅうと締め付けてきている。なかなかいい反応だな」

 男はひとしきりオマ○コを楽しむと、今度はそのまま私の肛門に指を挿れてきた。指で腸壁をすりすりと擦りながら、男は満足そうに言った。

「ああ……肛門の締め付けも悪くない。……まぁ、この様子からすると、あまり慣れてはいないようだが」
「あっ……くぅ、ふぁ……」
「データを見る限りは総じて平均的だが、素材としては悪くないみたいだな。ちゃんとした『娼品』になるかはこいつしだいだがな」

 そう言うと男は肛門から指を抜いて、私の体から離れた。そのままどこかへ歩き去っていく男の後ろ姿を見送りつつ、私は乱れた呼吸を整えていた。荒い呼吸をつづける私に、藤田さんはこう言った。

「これがわが社の『モノ』になるということです。自分の立場が分かりましたか?」
「はい……」
「それでは早く部屋へ行きましょう。ぐずぐずしていたら、また今のように弄ばれますよ」

私は黙って立ち上がり、藤田さんの後について地下に降りた。部屋――「開発室」は地下にあるらしく、私が使う「第十六開発室」のほかにも結構な数の部屋があるみたいだ。おそらくほかの部屋でも開発が行われているのだろうが、完全防音のために何も聞こえないようになっている。私は藤田さんに導かれるがまま部屋に入った。

「ここが今日から一ヶ月間あなたが過ごす部屋です」
「うわぁ……」

 私は部屋に入るなり思わず声を上げた。部屋の中にはベッドや三角木馬、拘束台、天井にはなぜか滑車も取り付けられている。透明な棚の中には大小様々なバイブやディルドー、何に使うのか分からないものまでしまってある。

「こちらがトイレとバスルームです」

 そう言われて目を向けると、そこには全面ガラス張りのトイレとお風呂があった。トイレは和式の水洗便所みたいだが金隠しがなく、さらには前後左右にカメラが仕掛けられている。それはお風呂も同じだった。聞くところによると、お風呂のガラスは湯気で曇らない特殊なガラスでできていて、しかもお風呂の使用中は換気扇が回るため、極力湯気で体が隠れないようになっているらしい。

「開発中はこうしてあらゆる場面のあなたを撮影しますが、これはあなたの監視と健康状態の把握のためのものでもあります。この映像が一般社会に出まわることはありませんので安心してください。ここで撮影された映像は、あなたが『娼品』となった場合にメイキング映像として保存され、顧客の方へのプロモーションビデオとして利用されるだけですし、もしあなたが『娼品』にならずに開発を断念した場合には即刻処分されますから」

 私は少しだけほっとして、改めて室内を見回した。すると机の上に電話を見つけた。

「あの……外部との連絡は禁止だと言っていたのに、なぜ電話があるんですか?」
「ああ……それは内線電話ですよ。もし何かあった際にそれを掛けて貰えれば、私のところに直でつながりますので」
「分かりました。……それと、キッチンとかがないみたいですが、食事はどうするんですか?」
「食事に関してはこちらが用意します。栄養とカロリーをよく考えてシェフが作りますので、味はもちろん太る心配もありませんよ。他に質問はありますか」
「いいえ、今のところはありません」
「でしたら今から早速開発を始めたいと思いますが、よろしいですか」
「……はい、よろしくお願いします」
「それでは今後の方針を説明しますので、とりあえずベッドに座ってください」

 私は言われるままベッドに腰かけた。藤田さんはと言うと棚から様々な道具を取り出している。そしてそれらを持って私の隣に座った。

「我々の開発は、基本的には何か一つに特化させるものではなく、あくまでオールマイティに色々なことを出来るようにするのが目的です。オマ○コでのセックスやフェラチオ・パイズリといったことはもちろん、アナルセックスやSMプレイにも順応してもらいます。さらにはSMの一環ではありますが、スカトロプレイや獣姦などもしてもらいますのでそのつもりで」
「え……? そ、その……スカトロとか獣姦って……?」
「知りませんでしたか? スカトロと言うのは糞尿、つまりうんこやおしっこを出したり、さらには体にかけたり食べたりするプレイのことです。獣姦は犬とか豚とかとセックスすることです。どちらも趣味としては当然アブノーマルですが、その手の好事家の方たちは好んで『娼品』にそういうことをさせたがるんです。ですから開発期間中にそういうことに慣れておかないと、いざそういうことをさせる段になって拒絶されたとクレームが来ては、わが社の信用が落ちますからね」
「は、はい……分かりました……」

 私はあまりに異常な内容に青ざめていた。しかし、それでもお構いなしに藤田さんは説明を続けていく。

「それに関連して、そうしたハードなプレイにも耐えられるように、オマ○コやアナルには十分に拡張を施しておかなければなりません。そこでここにあるバイブやディルドーなどを使って段階的に拡げていくんです」

 そう言いながら、藤田さんはいくつかのバイブやディルドーを私に見せた。さほど大きくないものから大体通常サイズと思われるもの、そして結構太いものまで様々だった。

「最終的には、私の握りこぶしがオマ○コにもアナルにも楽に挿れられるようになってもらいます。ですがただひたすらに拡げればいいというものでもありません。いくら拡張されていても締め付けや感度に問題があるようなら、やはりお客様は満足しません。もちろん私もその点には注意しながら開発していきますが、もしそれらの点に問題が発生した場合には、今は言えませんが特殊な手段を講じさせてもらいます」

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