青い目覚め
横尾茂明:作
■ 羞恥戯1
由美は駅に急いだ、母は今日も帰って来なかった。
もう3日目であった…昨日電話が有り…当分帰れないの…と母が言った。
由美は何故って聞いたら…母は悲しそうに「どうしても」と言って、タンスの中にお金が少し入ってるからそれで何か食べて頂戴と言い電話が切れた…。
由美は母に捨てられたような悲しみに…泣きながら一夜を明かした。
明け方にうとうとし…気が付いたら学校に行く時間を過ぎていた。
「ああー遅刻しちゃうよー」
由美は大急ぎでセーラー服に着替えアパートを飛び出した。
駅まで走りづめに走ってようやくいつもの電車に間に合った。
由美は大きく肩で息をした、目がクラクラした。
由美は電車の吊革にぶら下がりながら視線を感じその方を目で追った。
視線の先にあのおじさんがいた…。
こちらを向き微笑んでいた。
「あっ…おじさんだ」
由美は何故か顔が赤らむのを感じた
由美は由紀にオナニーを教えられた日から毎日の様にオナニーをした。
初めは由紀にして貰ったほどの快感は得られなかったが…あのおじさんに…して貰ってると思うようになってから…強烈な快感が得られるようになった。
いま…おじさんがこちらを見てる…由美は胸がキュンとなった…
そして…あそこがジワッと濡れたのを感じた。
(おじさんがこちらを見てる…)
(どうしよう…どうしよう…)
(あのこと聞いてみたいけど…恐いし…)
(もー駅に…駅に着いちゃうヨー)
由美はもじもじしながら…おじさんの所に行こうか行くまいか迷っていた。
電車は由美が降車する駅に滑り込んだ。
由美は人波に押されるように電車から降りた。
辺りをキョロキョロしたがもうおじさんの姿は見つからなかった。
(やっぱり…声は掛けられない…由紀ちゃんの言う通り止めた方がいいんだ)
由美はそう思い学校に足を向けた。
きょうは由紀ちゃん学校を休んだ、風邪を引いたのかな?
由美はいつものお喋り相手が居なく…寂しく授業を聴いた。
帰りの掃除が終わり、由美は椅子にボーと座って…母の事を考えた。
(3日も帰れないなんて…何か変!、お母さん…なにか由美に隠してる)
(もしこのままお母さん帰ってこなかったら由美どうしよう…)
由美は急に寂しく…孤独感に耐えられなくなり…目から自然と涙が溢れた。
教室から人が消えていく…由美が気が付くと一人ぽっちになっていた。
校舎の窓から夕日が射し、由美の端正な横顔を照らしていた。
由美は物憂げに椅子から立ち、机の上のノートを鞄にしまい…
教室内をグルッと見てからドアに向かった。
由美は歩きながら考えた。
(タンスの中には3万円が入っていた…)
(明日は大家さんに家賃を払う日だけど…それを払ったら2千円しか残らない)
(来週には修学旅行のお金を払い込まないといけない……)
(本当にお母さん……どうしちゃったの…)
(勤め先にはあまり電話しないでって言われてるから……)
「お嬢さん!」
由紀は後ろから肩をたたかれ反射的に振り返った。
「お…おじさん」
「今…帰りなの?」
「は…ハイ!」
「この間は本当にゴメンね!」
「おじさん…夢中になると…」
「お嬢さん…時間無いかなー?」
「………」
「この前…泣かしちゃったお詫びに何か奢らせてくれない?」
「そ…そんなこと…いいです…」
「でも…おじさんの気が済まないんだ」
「御願い! 1時間だけでいいんだ、そこのファミレスに付き合って」
由美はファミレスと聞いて、少し安心した。
「……少しだけなら……」
男は満面の笑みを浮かべて「ありがとう!」と言った。
男は首まで赤くしてうつむく由美を見て…(可愛い!)と思った。
由美は男が指さす方を見…歩調を合わせて歩いた。
ファミレスの中は閑散としていた。店員に案内され二人は一番奥の席についた。
店員の差し出すメニューを由美に見せ「好きな物注文して」と言った。
由美は躊躇無く「オムライス」と応えた。「じゃぁ私も」と男も即答し二人顔を見あわせて、どちらともなく微笑み合った。
「お嬢さん…オムライスが好きなんだ! 実を言うとおじさんもオムライスが一等スキ」
由美はクスクスと笑った。
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