ボヘミアの深い森
横尾茂明:作

■ ミュンヘン6

満腹を癒すために大回りをして二人は駐車場に向かった。

少女が次に案内したのは、1972年夏のオリンピックが開催されたオリンピックセンターである。
このスタジアムは世界記録、ヨーロッパ記録、そして観戦客数の記録。
さらに素晴らしい建築と機能が合わさった輝かしいスタジアムです…と誇らしく説明する。

スタジアムを出ると陽はもう西に傾いていた。
「さーホテルに戻ろうか、ちょっと早いけどつかれたよね」

「えぇーもう帰っちゃうの…まだ見せたいところ一杯有るんだヨー」

「うん…でも、明日にしよう、まだ二日も有るんだから」

「そー…そーだね、明日は美術館や博物館を回ってと」
「明後日は郊外の名所をいっぱい案内するね!」

「しかし…君ってどうしてそんなにミュンヘンに詳しいの?」

「うん…トラック便を待ってる間なーんにもすることないもん」
「このミュンヘンは殆ど歩き回って覚えちゃったの」

「そー…寂しかったんだね…」
「もー慣れちゃったよー」

「今でも高校に…行きたいんだろう?」
「……………………」

少女は黙って車窓を流れる風景を見ていた。

ホテルに戻り部屋に入る。
時間は19時前であり…夕食の時間であったが昼の暴食がたたり、龍太は胸焼けに悩まされていた。

「君…お腹空いた?」

「お兄ちゃん…あんなに食べて、まだ食べるの!」とあきれ顔で聞き返す。

「そ…そーだよね」龍太はホッとする。

「じゃー少しお酒でも飲むかな…」
「君もつきあえよ」

「お兄ちゃん…私まだ未成年よ」
「なに言ってやがる、昨夜のドンペリ…丸ごと飲みやがって、何が未成年だ!」

二人は笑いあう。

ルームサービスを頼み軽食とワインを注文する。

「さてと…酒が届く間にシャワーでも浴びようか」

「うん! アッ…叔母さんに電話して迎えをお願いするから…先に入ってて」

龍太は少し期待が外れた感でバスルームに向かう。

(あの子…こちらの人間が見てもすごく綺麗に見えるんだろうな)
(街ですれ違う男ども…ビヤホールでテーブル二つ隔てた所に屯してた奴ら…あの子をずーと羨望の目で見てたもんナー)

龍太は髪を洗いながら少女の事を考えていた。
乳房…尻…性器…そのどれをとっても素晴らしいと思う。

あれほどの美少女を日本に連れて行けばすぐにでもタレントになれるだろとも思う。

その時…後ろから柔らかな肉を感じた…。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊