ボヘミアの深い森
横尾茂明:作

■ ボヘミアン11

トラックはウインカーを出してハイウエーに入いって行く。
辺りが騒音でざわめきたち、少女の暗く惨めな感傷は音でかき消されようとしている。

少女はパンティーを引き上げ、上半身をウィンドがら隠すように背を屈めてブラジャーを着けた。

男は下着姿の少女を舐め回す様に見…まだ満足していないのか、人差し指を少女の口にねじ込み舌を弄ぶ。

少女はその惨めな仕打ちから逃れるようにドア端に身を寄せ体を思い切り縮めた。

男は舌打ちをしながら泳いだ手を引き寄せ…唾液に濡れた指を舐めた。

少女は身を縮めながら膣入り口の痛みに耐えた…お腹の奥にも滲みるような痛みが広がっている。
破瓜の痛みがこれほどすさまじいものとは。

(あんな太い物が入ったんだもん…痛いはず…)

少女は膣が裂けたのでは…
という恐怖を打ち消そうとしていた、それは家に帰り…母に犯された事を見抜かれるのは絶対イヤだったから。

お婆さんも父も母もみんな憎かった…

(知ってたくせに…知ってて行商に行かせたんだ)
(………………)

トラックの振動が性器の痛みをさらに助長する…

下着が冷たくヌルっとした感覚に思わず下をみた。
パンティーの前が真っ赤に染まっている。

少女は鞄から生理ナプキンを取りだし…男に背を向け急いで下着に装着した。

そして床に散らばっているジーンズとシャツを拾い上げ、袖に手を通したとき…急に涙が溢れ出した。

ジーンズに脚を入れ膝上までたくし上げたとき…押し殺していた泣き声が漏れ出てしまった。

「痛いのか…」

男がボソっと呟いた。

少女はそれに応えずジーンズを思い切り引き上げ、涙を拭きながら横を向いてドアにもたれた。

ウインドに映った自分の顔が奇妙に歪んで見えた。

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