ボクとアイツと俺
木暮香瑠:作

■ 罠に囚われた志穂4

 佐々木と志穂が並んで通りを歩いている。その後を三人の男達が笑いながら歩く。その中の一人はビデオカメラを構え、レンズは前を歩く佐々木と志穂を捕らえている。時に前に回り、「さあ、笑って」とか、「もっと寄り添って」と声を掛け、恋人達の思い出を記憶に残しているように周りには見える。男の横を歩いている少女は緊張し、まるで始めて恋人とデートをしている初心な女の子のように頬を真っ赤に染めている。しかし視線を少し下に移すと、繰古東高校の女子学生のシンボルである大きなリボンと、ボーイッシュなヘアスタイルに不釣合いなほどそれを押し上げる大きな胸が飛び込んでくる。

 重量感ある肉球は、いつもの締め付けから解き放たれ自由を謳歌するかのように、志穂が歩を進めるたび大きく揺れる。揺れる隆起は、シャツの布地に擦れ先端を刺激する。そして、シャツの布地をツンッと持ち上げている。スカートの下に何も着けていない下半身は、守るものが何も無いようで頼りない。道路がすべてガラスで出来ていて地中から覗かれている様な錯覚を覚える。風が吹くたび、空気が手に形を変え胸を、股間の茂みをオマ○コを撫ぜているように思えてくる。

 佐々木は、人通りの多い道ばかり選んで志穂を連れて歩いた。

 通りすがりの男性達の視線が気になってしょうがない。街を歩く人達の視線が熱く志穂の胸に、スカートに隠れた股間に突き刺さる。胸に向けられシャツを押し上げる尖った乳首を見られているんじゃないか。パンティも穿かずに、不良の仲間とこれから使うコンドームを買いに行くふしだらな少女……、街中の人がそう考えているんじゃないかと思うとドックンドックンと血が頭の上って行く。
(お願い……、知り合いと出会わないで……。ボクを知ってる人と……)
 気にすればするほど顔が熱くなってくる。佐々木は、恋人にするように腰に手を回し、話しかけてくる。しかし志穂には、話の内容など入ってこない。佐々木の手は、腰からお尻へと滑り落ち柔肉を揉むように摩る。
「や、止めて……」
 志穂が震える小さな声で抗議する。佐々木は志穂の言葉に、お尻に当てた手で尻肉をギュッと握り答えた。
「何恥ずかしがってんだ? 恋人同士なら普通だろ、一ヶ月の恋人さんよ」
 そう言った佐々木は、尻肉を揉む手にさらに力を込めた。

 恥辱に頬を染め、佐々木の横を歩いている志穂の前に、路地から繰古東高校の制服を着た三人の男子学生が出てきた。
(アッ!? ……)
 志穂は慌てて佐々木の後ろに隠れる。
(見られた? ……)
 三人の男子生徒の中に志穂の知ってる顔は無かった。男子生徒達もお喋りに夢中で、志穂達に視線を向けることは無かった。
「隠れてんじゃねえよ。ほら、このコンビニに売ってるぞ」
 二人が立ったすぐ横にコンビニがあった。
「は、はい……」
 志穂は小声で答え、コンビニに入って行った。

 志穂は周りの視線を気にしながら、人がいない時を見計らって棚に手を伸ばす。
(四人とセックス、みんなとしなくちゃいけないんだよね……)
 志穂は棚からピンクの小箱を手に取った。
「おい、4個入り? これだけで足りと思ってるのか? 時間は十分有るんだぜ」
 佐々木は店中に聞こえるような大きな声で言う。
「そうだぜ。俺は三回は出来るな」
「俺は四回!」
「嘘付け。お前は二回が限界だろ」
 後から棚田達がケラケラ笑いながら茶々を入れる。
「これを使い切ったら、今日はおしまいにしてやるよ」
 佐々木は、志穂がカゴに入れた箱を取り出し12個入りの箱と取り替えた。
(えっ!? これを使い切るまで? 無理……、絶対無理……)
 言葉にして断りたくても、衆人監視の中、志穂には恥ずかしくて顔を真っ赤に染めることしか出来ない。
(でも、これ以上宗佑に迷惑掛けられないし……、圭一にも秘密、知られたくない……)
 秘密を握られている以上、佐々木達の要求を呑むしか選択肢はない……。

 レジまで向かう足取りが重い。ほんの数メートルなのに、志穂には何分も掛かる長い道のりのような気がする。佐々木が大きな声を出したお陰で、店中の客が志穂に視線を送っている。
(あ……、暑い……)
 暑いのは気温の所為ばかりではなかった。コンビニ内はクーラーが効いていて、逆に心地よいはずだ。なのに志穂は暑さを感じて仕方なかった。
「はあ、はあ、はあ、……」
 志穂の息は、自分では気付かないが隣の人に聞こえるくらいに大きくなっていた。

 身体が熱い。沸騰した血がドックン、ドックンと身体中を巡っている。額に汗が浮かぶ。身体中が汗ばんでいた。
「へへへ、ビーチクが浮き出してるぜ」
 佐々木が志穂の耳元で囁く。恐る恐る視線を下に移すと、汗を吸ったシャツが隆起に貼りつき、乳頭の形をはっきりと映し出している。
「いやあっ!!」
 小さく悲鳴を上げ、手で隠そうとする志穂。しかし、片手にカゴを持ち、隠そうとした手を佐々木が取り、恋人繋ぎをした。
「さあ、金払って帰るぞ」
 佐々木に手を引かれ、志穂は胸を隠すことも出来ずレジに向かった。

「……、……、……!」
 店員が志穂に話しかけても、その言葉は志穂に届かない。じっと俯いたままだ。レジの男の人の視線が胸に向けられているのは明らかだった。
(胸、見られてる……。乳首、気付かれてる……)
 それに気付いた志穂は顔を上げることは出来ず、ただ顔を紅くし額に汗を浮かべ、はあ、はあ、はあ、と吐息を吐いているだけだった。
「コンドームお一つ、1200円になります!」
 顔を真っ赤にし俯いたままの志穂に店員は、イラッとして大きな声で金額を告げた。
「!? はっ、はい……」
 志穂は慌ててお金を払い、コンドームだけの入ったレジ袋を受け取った。

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