ボクとアイツと俺
木暮香瑠:作

■ 週末の憂鬱4

 なんとも頼りなく危うげな格好なのだろう……、志穂は自分の服装を思い、そう思う。上に着ているキャミソールにしても胸元が大きく開いている。その下に身に着けているブラは、普段スポブラに押し込んでるのとは逆に、豊かな双乳を寄せて上げてその肉球の間に深い谷間を作り、男性達の視線に晒している。風が吹くたび、スカートの裾がひらひらと揺れ、風がTバックのパンティしか穿いていない志穂の剥き出しの柔肉を撫ぜる。普段はパンツルックの志穂、制服でスカートを穿く時でも、下に体操服のショートパンツ穿いている志穂には、風が尻肉を撫ぜるだけでも羞恥心を煽られる。
 まるで男を誘っているような格好だ。小学校の時、魅力的な女であることがからかいの対象になって以来、今まで慎んできた女の魅力を曝け出している。

「ほら、微笑んで!」
 上まで昇った志穂にカメラマンを務める楠木から声が掛けられる。顔は恥辱に真っ赤で、血液はドクドクと体中を巡っている。火照った身体は思考まで麻痺させる。
「ぐるっと一周してみようか」
 歩道橋の下から掛けられる声に、操り人形のように言われたとおりくるっと回る志穂。ただでさえ短いスカートが広がり脚を脚の付け根からツンッと盛り上がった尻肉を衆人に晒す。
(見えてる? ボクの脚……。見られてる? ボクのお尻……)
 普段、スカートなど穿かない志穂にとっては、どういう風に見えてるか、どう防げばいいか判らない。ただただ恥ずかしさが増すばかりだ。

「あのお姉ちゃん、お尻が出てる。パンツ、穿いてないの?」
「見ちゃダメ!!」
 陸橋の下から、子供の声に続いて母親の声が響いた。頭に血が上り、ボーっとしていた志穂の耳に親子の声が届く。何も考えられなく真っ白になっていた志穂に、羞恥が蘇る。
「イッ、イヤッ!!」
 その場に両手で顔を覆い蹲る志穂。前かがみにしゃがむことでミニスカートはさらに捲れ、尻肉を晒してしまっていることに気づかぬまま……。



 マンションに戻った佐々木たちは、撮影されたビデオを見ていた。高校生の一人暮らしには不釣り合いの50インチ画面には、歩道橋の上で蹲る志穂が映し出されている。顔を真っ赤にし俯き、瞳は涙でウルウルになっている。
「歩道橋のパンチラ、よかったねえーー」
「あれはパンチラって言わねえだろ。ケツ肉丸出しだったから」
「じゃあ、ケツチラ? へへへ……」
 男たちの冗談に志穂は、画面の中と同じように涙目で俯いている。ロングヘアのウィッグを被ったまま、涙目で俯く志穂の表情が男たちの被虐心を擽る。男たちは、志穂の表情を伺いながら冗談を続けた。

 画面は切り替わり、志穂のアップが映し出される。
「これ、面白かったね。フランクフルト咥えてる志穂ちゃんがかわいくて……」

『買ってきたぞ、フランクフルト』
 画面には映ってないがパシリの木下の声が流れてくる。
『ボクがフランクフルト食べるとこ写して……なにが面白いの?』
『ただ食べちゃいけないよ。俺らの言うとおりに食べようね、へへへ……』
 フランクフルトを受け取り、カメラに向かってちょっと怒ったよう訊ねる志穂に棚田が答える声が聞こえる。
『先っぽにキスして……』
 声に従いフランクフルトの先端に、不思議そうな顔の志穂の唇がチュッと着けられる。
『いいねえーー』
『今度は根元から先っぽに向けて舐めてみよう、ソフトクリームを舐めるみたいにさ』
 言われたとおりに指示に従う志穂。
「万遍に舐めてね。ほらっ、もっと舌出して、唾液塗るつもりで……」
 フランクフルトの表面に志穂の唾液が塗られテカテカと輝く。
『今度は先端を咥えて、歯を当てちゃダメだよ。唇で締め付けるように咥えて、首を振ってフランクフルト出し入れして……。先端を舌で突付いてみて……』
 次々と出される指示に、画面の中の志穂は疑いもなく従っていく。バカバカしいと思っても、拒否すれば彼らも思う壺だ。次にどんなに酷いことがまっているか……、その場で秘密の画像をばら撒かれるかも知れない。そう思うと従うしかなかった。

「ほらっ、志穂ちゃん見てみなよ。おいしそうに咥えてるよ」
 棚田は志穂に画面を見るように促すが、志穂は顔を上げることができない。画面の中でフランクフルトをパクリと咥える志穂と、その画像の前で俯く志穂。佐々木たちはそれを笑いを堪えて眺めている。

『この娘、フェラの練習かい? 一度、俺のフランクフルトも咥えてもらいたいね』
 遠巻きに撮影を眺めていた男性の言葉に、画面の中の志穂は顔を真っ赤にした。そうなんだ、今させられているのはフェラチオの模擬行為だと気付く。
『ほらっ、続けて……』
 命令されても志穂は、フランクフルトを咥えたまま固まってしまった。

「志穂ちゃんの驚いた顔、かわいいね。本当にフェラの練習だと気付かなかった?」
 棚田が志穂の俯いた顔を覗き込み訊ねる。
「お前、本当にマゾだな。女の困った顔好きなんて……」
 男たちのからかいの言葉に志穂は、瞳を潤ませ怒りと恥辱に肩を震わす。そして、志穂はきっと唇を噛んだ。
(ど、どうしてみんな……ボクを苛めたがるの? ボクを苛めて面白がるの?)
 悔しさと恥ずかしさに俯いた瞳から涙が一粒、床に落ちた。

「今日は練習の成果を見せてもらわないとね。俺のは特大フランクフルトだぜ、へへへ……」
「そうだね、そろそろ今日の本番、始めようか……。今日は俺からでいいんだろ?」
 卑猥な笑顔を作った棚田の確認する声が部屋に響いた。

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