ボクとアイツと俺
木暮香瑠:作

■ 疑惑の日焼け跡2

 志穂には、どちらかを選ぶしか道はない。シースルーの水着は面積さえ多いが、スケスケで乳首はおろか乳輪の形や陰毛の形、縦裂さえ透かしてみんなの目に晒すことになるだろう。V字のワンピースの水着の方が布地が厚くズレなければなんとか大切なところは隠せる。
「こ、こっち……」
 志穂はV字のワンピースの水着を指差した。
「じゃあ着替えちゃおう、はい」
 棚田の手から水着が手渡される。
「い、今? ここで?」
 渡された水着を手に志穂は目を見開き驚く。
「いいじゃん、裸の付き合いの仲じゃん。今更恥ずかしがってもしょうがないよ」
「で、でも外から……」
 外に視線を向けると歩道には多くの人が歩いている。対向車も多い。時折、視線をこちらに向ける人もいる。車の2列目以降のガラスはプライバシーガラスになっていて、中から外の風景はよく見えるが、外から中は見えにくくなっている。しかし志穂にはそんなこと気付く余裕などなかった。
「誰も気付かないよ、車の中で着替えてるなんて思ってないし。見ちゃいないよ」
「ほら、脱いだ脱いだ!」
 男たちが囃し立てる。
「おまえら、楽しそうなことやってるな。運転してる身にもなってみろよ」
 運転席から佐々木はニヤニヤとバックミラー越しに志穂の狼狽する姿を楽しんでいる。
「早く着替えて。じゃないと海に着いちゃうよ。そうしたら人も多いだろうなあ」
「外から見えちゃう……」
 この男たちに見られるだけなら、衆人の中で着替えさせられるくらいなら……、外から見られる不安は残るがまだマシかもしれない。志穂は身に纏った服に手を掛けた。

(見えてる? 見られてる? ……)
 窓の外からの視線が気になって服に掛けた手を中々動かせない志保。
「恥ずかしいの? 今更恥ずかしいもないでしょ。この前なんか、公園で派手に逝っちゃったのに……」
「いつまでたっても、その初々しいところが魅力だけどね、イクちゃんは……」
「海で着替えるともっと多くの人に見られるかもね。志穂ちゃん、露出系の気があるからそっちの方が萌える?」
 戸惑いながら着替えようとする志穂を佐々木たちはからかって楽しんだ。



 ビーチパラソルの下で佐々木たちは、ビールを片手に夏の海を楽しんでいる。
「うまいねえ、やっぱりビーチで飲むビールは……。イクちゃんも飲みなよ」
「け、結構です!」
 棚田の執拗な勧めにも志穂はビールを口にしない。棚田たちはすっかりアルコールが回り真っ赤な顔をしている。それにも負けず志穂も紅い顔をしている。しかし志穂の場合はアルコールではなく恥ずかしさにだ。
「つれないね。それじゃ、サンオイル塗ってあげる。ほら、寝て」
「結構です!!」
「日焼けしちゃ、マズイでしょ。水着の跡、残っちゃうよ。その水着、跡残るとマズイでしょ」
 棚田の言うことはもっともだった。こんなセクシーな水着跡を知ってる誰かに見られたら……、考えるだけで恥ずかしさで顔が赤くなる。
「日光浴より早くやりたい? イクちゃんは好きだからねえ……」
 周りにいる海水浴客にわざと聞こえるように大きな声で志穂を辱める。そして志穂の耳元に顔を近づけ内緒話のように囁く。
「それにイクちゃんに今は拒む権利はないって理解しなきゃ。判った?」
 耳元で囁かれる声に、志穂はコクンと首を縦に振った。

「はい、まずは俯せになって。背中から塗ってあげるよ」
 志穂は言われるままに俯せになる。ほとんど丸出しの背中とお尻。
(こんなに明るい中……、こんなに大勢の人がいるのに、ボク何してんだろ……)
 衆人の中、剥き出しの背中とお尻を晒している自分に疑問を感じながら、志穂は目を閉じ、そっとこれから始まる恥辱を待つ。
「ほんと、すべすべの肌してんな。イクちゃんは……」
 志穂の絹のような肌の背中に棚田の掌が触れる。そして日焼け止めクリームを塗り込んでいく。手は次第に降りていく。そして腰回りにクリームを塗った手は、その桃尻に達する。
「イクちゃんのお尻、ツンッと盛り上がってて最高! 触り心地も……。へへへ、しっかり塗ろうね」
 尻肉に宛がわれた棚田の手は、クリームを塗るというよりその柔肉を味わうように揉みしだく。
「うんっ、……」
 志穂の口から小さく声が漏れる。
「あれっ? 感じちゃった? ごめんごめん。でも、しっかり塗り込まないとね、へへへ……」
 卑猥な笑いを浮かべた棚田の手は、執拗に尻肉を揉みしだいた。

(なんなの、あの女……。これ見よがしに肌露出しちゃって。それも男に囲まれてイチャイチャして……。風紀乱してほしくないわね)
(淫乱なのよ。そのうち始めちゃうかもよ)
(何を?)
(セックスよ。露出狂の淫乱女なら、周りの目なんで気にしないでヤっちゃうんじゃない?)
(ああはなりたくないわね。ほんと最低!)
 女たちのひそひそと嘲る声が耳に染み込んでくる。
(イヤッ! ボク、どんな女に思われてる? はしたない女に思われてる? ち、違うのに……、ボク……)
 周りから志穂たちを盗み見る海水浴客の視線が、針のように肌に突き刺さってくる。お尻も揉まれても抵抗しない志穂を見て、志穂の思いなど知らない周囲の海水浴客の目は冷たい。
「ちゃんと隅々まで塗っておかないとね」
 クリームを塗る指がお尻の割れ目をなぞる。
「うんっ、ううん……」
 小さく喘ぎ声が漏れ、志穂の肢体がビクビクッと震えた。

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