ボクとアイツと俺
木暮香瑠:作

■ 疑惑の日焼け跡7

「ええーーー、一週間もハワイ?」
「仕方ねえだろ。親の言うこと聞いとかないと、マンションも小遣いも取り上げられちゃうぜ。俺が親にいい顔してるからお前らも美味い思い出来るんだから」
「そりゃそうだけど……」
 恥辱海水浴の帰り、車の中では佐々木が棚田たちにとっては残念な話を告げていた。佐々木が家族でハワイ旅行に行くというのだ。それに伴い、自分が楽しめない以上、棚田たちだけが楽しむのは面白くない。棚田たちにも志穂と関係を持つことを禁じた。
「志穂ちゃんも一週間、自由だ。彼氏とHするなり自由にしていいぜ。一ヶ月の約束を、一週間延長するなんてケチなことはしねえし……」
「!?」
 佐々木の言葉に驚くと共に思わず嬉しさが湧き上がってくる。
(圭一とデートできる。圭一と約束したデートが……)
 佐々木たちの凌辱を受けてる合間に圭一とのデートをすることに罪悪感を抱いていた。一週間ではあるが解放された中でデートできることが嬉しかった。

「そりゃねえよ。俺たちはどうすればいいの。志穂ちゃんに手出しできねえの?」
 棚田たちは口々に不平を述べる。しかし、佐々木の金に頼ってるところもあり、強くは逆らえない。
「一週間ぐらい我慢しろよ。そのあと一週間残ってるんだから……。俺だって抱けねえんだぜ。一週間も親孝行な良い子を演じなきゃならねえんだから」
 佐々木は自分もイヤイヤ親孝行な息子を演じなくちゃいけないことで皆を納得させようとしている。
「それに、一週間ぐらい間置いた方が、そのあと萌えるんじぇね?」
「それもそうかも……。それより志穂ちゃんが一週間我慢できるかな? へへへ」
「志穂ちゃん、結構スケベだからな。最近じゃ俺たちとのセックス、楽しんでる節があるからな」
「そ、そんなことない!」
 志穂は、ぷいっと顔を背けた。なんとか皆が納得したことで、志穂の心に小さな明るい灯がともった。



…………
……


 佐々木たちから解放され、そして圭一とのデートの日がやってきた。前日から浮き浮きとしていた。そしてもう一つ決意したことがあった。今度こそこの前の続き、圭一との愛を確かめ合う行為の続きをするんだと……。絶対感じさせてくれる。佐々木たちによって、自分が感じやすい体質だと思い知らされていた。圭一となら、佐々木たちとのセックスより絶対気持ちいいはず、愛し合う二人のセックスの方が何倍も……。

 二人がデートに選んだ遊園地は、観覧車だけが売りの公園だ。それも出来た当初の話で、今ではちょっと足を延ばせば、もっと楽しそうな遊園地はいくらでもある。ここには絶叫系アトラクションなどなく、コーヒーカップやメリーゴーランドがあるだけで、若者が訪れることなど稀だ。来園者は小学生や小さな子供がいる家族連れくらいだ。

「こんなとこでよかったのか? 本当に……」
「いいの、ここで。小学生の時、よく来たよね、ここに……」

 デニムのショートパンツに下着のラインが出ない厚手のTシャツ。ショーカットの髪の志穂の姿は、後ろから見るとまるで少年のようだ。二人の後姿を見ると、背の高い弟思いの兄が弟を連れて歩いているように見える。しかし、健康的な肌理の細かい肌の生脚が眩しかった。圭一には自慢の彼女だが、それを自慢できるような同世代の来援客などいない。

「やっぱりここでよかった。観覧車もメリーゴーランドも楽しかった。東高まで見えたね」
 志穂は楽しそうに圭一に話しかける。小学生の頃には気が付かなかった景色が観覧車からは見えた。なにより志穂には久しぶりに二人でいられることが嬉しくて仕方なかった。

 楽しく話をしている後ろから二人の前に、一人の小学生くらいの男の子が走ってくる。「お姉ちゃん、デート?」
 少年は志穂の前にきて振り向き、顔を見て一瞬戸惑いながらも訪ねる。
「そ、そうだよ」
 男の子は目の前で答える志穂のTシャツを押し上げる胸を見て目を丸くする。
「オッパイでかっ! わーい」
 そしてそう言うと、友達が待つところへ走っていった。
「こらあ!」
 顔を真っ赤にして走り去る男の子に怒る志穂。男の子は、わーいと言いながら友達が待つところへ走っていった。

 圭一の耳にも、男の子たちが嬉々と話す会話が聞こえてくる。
「女だった。すげえでっかいオッパイしてた」
「俺の勝ち。だから言っただろ、女だって……」
「それにすげえ可愛い顔してた」
「ちぇっ、絶対男だと思たんだけどな。髪だって短いし、服だって……、後姿は男だろ」
「バカだな。あのお尻の膨らみは女だって……。アイス奢れよ」
 男の子たちは志穂が男か女かで賭けをしていたみたいだ。
(ふふふ、ませたガキだな。こんなにかわいい男いるわけないだろ)
 男の子たちの会話に圭一はにんまりとした。

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