ボクとアイツと俺
木暮香瑠:作

■ 疑惑の日焼け跡10

 同じ日、棚田たちは暇を持て余し街をブラブラしていた。
「佐々木はハワイでパツキンのビキニでも眺めてんだろうなあ」
「いいなあ。親が金持ちで、アイツは……」
 大下と楠木が佐々木を羨む。
「一週間も志穂ちゃんと出来ねえのか……。溜まってしょうがねえ!」
 棚田は我慢できないと愚痴を言う。
「黙ってやっちゃうか。佐々木にばれなきゃいい話だろ」
「志穂が黙ってると思うか? いくら黙ってるって約束させても、意識飛んじゃって何喋るかわかねえぞ、アイツ……」
 大下の提案を棚田は苦虫を潰したような顔で断る。
「そうだな。ばれたら溜まったもんじゃねえな。佐々木、切れると怖えからな」
 愚痴を言う二人を楠木はニヤニヤとしながら見てる。そしてスマホの画面を見せ言う。
「へへへ、暇だったからビデオ編集してサイト作っちゃった。ビデオで抜けば?」
「?」
 棚田は楠木が差し出したスマホを覗き込んだ。
「顔は誰だか判んないようにモザイク掛けてるけど……、パスワード付きの裏サイトはモザイク無しで志穂ちゃんが楽しめるようにしてあるぜ」
「ビデオでもいいよ、教えろ、そのアドレスとパスワード……」
 棚田たちは楠木からアドレスとパスワードを聞いた。

「もう結構アクセスあるじゃん。公開したばかりなんだろ?」
「こういう話は広がるの早いよね。コメントも結構ついてら……」
「顔は判らないけど、この巨乳でばれねえ?」
「ばれねえだろ。いつもは男みたいにしてるから、あの娘。こんな巨乳隠してるとは思わねえだろ。それにウィッグを被った姿しか表では公開してないし……」
 棚田たちがサイトの話で盛り上がってると、正面から後藤宗助が歩いて来るのを見つけた。
「宗佑、何してんだ? サッカー部、首になって暇だろう」
「ふん! お前らの知ったこっちゃねえだろ!!」
 宗佑は嫌な奴らに会ったと貌をしかめた。
「宗佑、お前に良いサイト教えてやるよ。お前も知る権利、あるだろうからな。お前の所為で取れたビデオだから……、へへへ」
 棚田はスマホから宗佑にメールを送った。



 宗佑は家に帰ると棚田から送られてきたメールに書かれているサイトを開いた。そこには髪の長い少女の画像が載せられている。眼元にモザイクが掛けられているが、スタイルの良さとすっきりとした顔の形、品のある口元からかなりの美少女だと判る。ウィッグを被った志穂の姿を知っている宗佑には、そこに映っている女の子が志穂だとすぐに判った。

 スクロールするといくつかの動画が貼られている。公園でアイドルのようなロングヘアの少女動画、恥ずかしそうに顔を赤らめた少女をカメラが追っている。ローアングルからすらりと伸びた脚、そこからミニスカートの中を覗くカメラ……。フランクフルトをまるでフェラをしているように舐め回し口に咥える少女。まるでエロアイドルのイメージビデオのような動画だ。次の動画では、その後公園の茂みで犯される少女、マンションの一室での輪姦動画、浜辺で犯されるロングヘアの少女……、と数本の動画が貼られていた。

 動画の下には、作られたばかりのサイトだというのにすでに何件かのコメントが寄せられていた。
『これって、西工の近くの公園に出る痴女?』
『西工ってどこだよ。ローカルな話すな!』
『モザイクで判らないけど、カワイイよね、この娘。スタイルもいいね』
『オッパイ最高!! スペック高杉』
『モザイク削除希望!』
『生中継希望』
『撮影現場に参加希望』
 …………
 ……
 …

「勝手なこと言いやがって……」
 宗佑は呟いた。それが知らない娘だったら、宗佑自身、同じようなことを言っていただろう。しかしそんなコメントは宗佑をイライラさせるだけだった。

 サイト下部にパスワードで入れる裏サイトの入り口がった。

 そこには、カラオケボックスで宗佑にバージンを奪われるショートカットの志穂の寝顔が、『処女喪失』のタイトルと共に映っていた。そして、すべての動画がモザイク無しで載せられていた。
「志穂……」
 宗佑は奥歯を噛み締め呟いた。
(俺が志穂の初めての男なんだ……)
 蘇る記憶と共に、佐々木たちの提案に乗った自分を、これで良かったんだろうかと問いかける……。自分が犯した罪は志穂にも知られたくない。佐々木たちの提案に乗る以外、道を考えられない自分が悔しかった。

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